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【論壇】補聴器リサイクルに関心を!

2019年12月5日 木曜日

 高齢化社会が進行し、年齢と共に難聴になる人が増え、補聴器を必要とする人が多くなって来ている。

 しかし、年金生活などの高齢者の中には、補聴器の値段が高値で購入出来ないと、聴えないままでいて、コミュニケーション障害から「閉じ込もり」、「寝たきり」、「認知症」などになってしまう人も少なくない。

 難聴の度合いが、国が定めたレベル以上になると(即ち聴力検査で、両耳が共に七十㏈―デシベル―以上、または一側が九十㏈以上で他側が五十㏈以上、更に最良語音明瞭度(言葉の理解力―日本では五十音を使用して行う―)が両耳共に五十%以下になると、「聴覚障害による身体障害者」に認定され、五年毎に補聴器を一側のみだが支給してもらえる。

 そこで、私共、難聴者の会、特定非営利活動(NPO)法人「沖縄県難聴福祉を考える会」で平成十二年の発足当時より、使用しなくなった補聴器の提供をお願いして来ているが、補聴器が高値で購入されているためか、提供して下さった方はこの二十五年間で、数名しかいないのは、非常に残念である。

 むしろ、本土から旅行など来沖し、たまたま私共の活動を知って、私共の難聴者の会の市町村の無料相談や附属診療所「補聴相談のひろば」に偶然に来られた方が、帰宅後に不要の補聴器を送って下さる方が多く、非常に助かっている。と云っても、そう多いわけではない。(先般、神戸市のリサイクル活動家が、補聴器のリサイクルについて問い合わせがあったが、やはり不要補聴器は多いはずなのに、集まらないようである。)

 二~三年前迄は、福祉財政が良好な、いくつかの市町村で、補聴器の購入に補助金を支給してくれたが、当県では現在、このような市町村はなくなっている(過去に、東京都などは六十歳以上で医師が補聴器が必要と診断すれば、補聴器を支給する区が多くあったし、特に武蔵野市は両耳で十四万円迄支給していたが、当時の当県知事に話したところ、「沖縄県は貧乏県だから」で終わってしまった。)

 難聴になって、聴えないままでいると、前述のように、「閉じ込もり」、「寝たきり」、「認知症」など、要介護状態になるので、もう個々の家族で面倒を見れるところが少なくなっている現在、地域社会、国が面倒をみなければならなくなり、増税にならざるを得なくなり、国債も増えて次世代に迄影響が及ぶことになるので、熟考を要する。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


【論壇】補聴器使用にても言葉がわからない人には「人工内耳」埋込み手術を!

2019年11月1日 金曜日

 
 超高齢化社会を迎え、補聴器を使用していても会話が出来なくなってしまった人が増えて来ている。

 現在の補聴器は、音を大きくすることは出来るが、言葉の理解度までは改善出来ない。

 この言葉の理解力の悪化は、音を感じる細胞の機能障害によるもので、耳を養っている血管の動脈硬化により、血液が内耳の音を感じる細胞に充分流れて行けなくなることによることが近年はっきりして来ている。即ち、血液が充分流れて来なくなり、酸素・栄養を充分もらえなくなった音を感じる細胞が機能障害を起し、音の大きくなり方、濁り方が変って感じられるようになり(音の歪―ひずみ―)、音が聴えるが言葉がわかりにくくなる。

 言葉の理解力については、我国では五十音を聴いて、どのくらい理解出来るか、正常者は百%だが、動脈硬化が始り出す五十歳台後半から始り出し、徐々に悪化して行くのが一般的で、八十歳台後半ぐらいから三十%前後に、百歳近くなると、殆んどが十%ぐらいになり、補聴器で音は聴えるが、言葉が全く理解出来なくなる。

 このような時に、「人工内耳」埋め込み手術を行い、障害された音を感じる細胞を越えて、埋め込み電極が直接神経を刺激するようにすると、音を感じる細胞の障害によって起こっていた音の歪みや耳鳴などがなくなり、音がスッキリ聴えるようになり、電話で会話が出来るようになる。

 しかし、この「人工内耳」は機器のみで、約三百万円するので、そう簡単ではない。

 「聴覚障害による身体障害者」に認定され、両耳の聴力が九十㏈―デシベル―以上で、言葉の理解力が両耳共に二十%以下になると、公費で手術を受けられるが、当県では八十歳前後まで手術を受けられている由(十五年前に、ドイツで九十歳以上で「人工内耳」手術を行ったら医療保険が支払れなくなったことが学会で問題となり、討議の結果「医師がその患者さんの人生にとって「人工内耳」が重要と判断した以上、保険会社は支払うべき」と決定、昨年の学会雑誌では、両耳装着することになっていると記されている)、福祉財政の貧弱な我国ではどうなるのか、気になる。

 従って、脳・心臓の血管よりも更に細いと思われる耳を養っている血管の動脈硬化が進まないよう、少なくとも四十歳台後半からは「食事のコントロールと運動の励行が重要」で、意識して実行してほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


【論壇】難聴にならないように、悪化させないようにするには!?

2019年8月28日 水曜日

 年をとるに従い、聴えが悪くなる人が多くなる。高齢化社会が進行している現在、周囲に難聴の方が増えて来ていることを、実感している人が多いと思う。

 この大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化によることがはっきりして来て居り、飽食時代の現在、殆んどの方が遅かれ早かれ難聴になると思われる。

 そして、単に聴えなくなるだけでなく、言葉がわかりにくくなることは、六十台後半ぐらいから、感じている人が多いと思う。即ち、「音は聴えるが、言葉がわからない!」。

 内耳動脈の硬化は四十歳台後半ぐらいから起り出すので、人間ドッグなどで高い音に難聴を指摘されている人が多いと思う。

 従って、四十歳台ぐらいから、食事のコントロール・運動の励行を行い、動脈硬化を進行させないようにすると、私共が推奨するように、「百歳を越しても、補聴器を不要にしよう」が実現し得るのである。

 例え、難聴が始っても、食事のコントロールと運動の励行で、動脈硬化を進行させないようにすることが重要で、同じ補聴器を使用するのでも、聴えの良い方が補聴器をうまく使えるからである。
 
 高齢者難聴の特徴は、「音は聴えるが、言葉がわからない」ことで、これは内耳を養う血管の動脈硬化が進行して、音を受け取る細胞に充分血液が流れなくなり、酸素・栄養を充分もらえない細胞が機能障害を起し、音の歪み(ひずみ)を起し、音の大きくなり方、濁り方が変り、言葉の理解力が悪化する。

 この音の歪みは測定可能で、その音について数~十数倍になっていることがわかるし、その全体像として言葉の理解力を測定(日本では五十音を使って行う)、正常者は百%だが、それが段々悪化して、三~二十%以下になると、言葉が殆んどわからなくなり、補聴器は音を大きくするだけなので、補聴器を使用しても、会話は不可能と云うことも起って来る。

 補聴先進国のドイツでは、一年に一度の補聴器調整が法律になっているが、ドイツ人の食事はカロリー値が高いので、動脈硬化が進行、難聴が進行するので補聴器の調整をし直さなければならなくなる。従って私共は半年毎の聴覚の測定を行い、その悪化傾向は音の歪みの検査等でわかるので、厳重注意をしている。従って定期的検査を受けている患者さんの九十%以上は、この約十年難聴は進行していないので、これが如何に重要かがわかる。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


【論壇】高齢難聴者の特徴ー音は聴こえるが、言葉がわからないー

2019年7月2日 火曜日

 日本の認知症の八割は、高齢難聴の放置によると、九州の数施設で実証されて来ている。

 高齢化社会が進行、高齢難聴者が増加している。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆んどが難聴となる。個人差はあるものの、殆んどの人に起る。

 高齢化率が二十%を越した我が国では、高齢難聴者は全国で千五百~二千万人、当県で十五~二十万人と推計される。このうち、適合補聴器が得られているのは、全国で十~二十%、当県で五~十%、従って大部分の高齢難聴者は聴えないままでいるので、このうちの三~四割、全国で千五百~二千万人、当県で十五~二十万人がコミュニケーション障害より、社会・家族より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい、生きる意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症などに落込り、要介護状態となる。即ち、これら難聴者の三~四割、全国で四~五百万人、当県で四~五万人が要介護状態にあり、個々の家族で面倒をみる状態でなくなりつつある現在、地域社会か、国が面倒をみることになるので、増税にならざるを得ないし、国債も増えて、次の世代に迄、負担が及ぶことになる。

 この高齢難聴者の大部分は、耳の血管の動脈硬化による音を感じる細胞の障害なので、食事のコントロール、運動の励行により、予防が可能であり、百歳を越しても補聴器不用に出来るし、停止も可能で、同じ補聴器を使うのでも、基本的な聴えが良い方が、補聴器を上手く使えるので、これも重要である。

 “音は聴えるが、言葉がわからない”が高齢難聴者の特徴で、これも耳の血管の動脈硬化による血流障害で、音を感じる細胞に充分血液が流れて行かないため、機能障害を起し、音の大きくなり方、濁り方が変わる。これは測定可能で、正常の人が「1」大きくなったと感じるのが、二~三倍、場合によっては五~十倍となり、音がストレートに入ってこないため、話し言葉の理解力が悪化する。この全体像は言葉の理解力の検査にて、五十音を使って、何%理解出来るかを検査する。

 この音の歪みも、食事のコントロール、運動の励行により、内耳の血液の流れが改善されると改善し得る。
この啓蒙活動はすでに二十年以上前より、行われているが、殆んど衆知されず、効果が挙がっていないのは何故であろうか!?

 県民は当然、特に高齢難聴者、その家族はこれを熟知し、対応すべきである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


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  • 投稿日:2019年7月2日 火曜日

【論壇】音は聴こえるが言葉がわからない!

2019年5月28日 火曜日

 最近、難聴者の中で、“音は聴えるが、何を言われているのかわからない!!”と云う人が増えて来ている。

 これは、音を感じる細胞の機能障害により音の歪み(正常な人が“1”大きくなったと感じるのが、“2~3倍”、人によっては“5~10倍”に感じる現象―これは何倍になっているか測定可能―)が生じているからで、多くは内耳動脈の血流障害と考えられ、私共の患者さんの十数年の経過観察から、これが進むと動脈硬化が進み、言葉が益々わからなくなり、難聴が進行するのが、わかって来ている。

 言葉の理解力の状態は、この音の歪みだけでなく、言葉の検査(最良語音明瞭度検査)にて、「ア」とか「ウ」とか五十音を聴いて、どの位正確に答えられるか、正常者は当然百%だが、これが七十%、五十%、三十%と低下してくると、現在の補聴器は音を大きくはするが、言葉の理解力は殆んど改善し得ないので、特に三十~二十%以下になると、補聴器を使用しても会話が殆んど不能となる。

 このような状態になった時には、「人工内耳の埋め込み手術」にて改善可能で、聴え方が国が定めた基準に達すれば無料で、保険診療・高額療養費制度にて、所得にもよるが十数万円の自己負担で受けられるようになって来たのは朗報である。

 しかし、これ程迄にならないようにするには、内耳動脈の動脈硬化にならにように、進行しないようにする必要があり、私共の診療では、初診時に検査データーを持参してもらい、特に脂質系物質(コレステロール、中性脂肪など)などをチェック、指導をするようにしている。

 そのためか、私共の患者さんの八~九十%は、この十年以上難聴が進まず、言葉の理解力が悪化していく人はいない―補聴行政で最も進んでいるドイツでは、一年に一度の補聴器チェックが法律となっているが、恐らくドイツ人の食生活はカロリー価が高いので、動脈硬化が進み、難聴が進むからと考えられる。

 高齢者難聴は、恐らく四十才台ぐらいから始まるようで、人間ドックなどの聴力検査をみると、高音部の聴力低下が多く認められ、内耳の聴覚細胞の配列から考え、血流末端の高音領域の細胞から難聴が始まるのがわかる。

 従って、四十才台から、定期的な聴力検査を行い、指導を行えば、高齢者難聴の大部分は予防が出来るのではないかと考えている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


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  • 投稿日:2019年5月28日 火曜日

【論壇】高齢者難聴の放置がもたらすもの

2018年3月27日 火曜日

 日本の認知症の八割は、高齢難聴の放置によると、九州の数施設で実証されて来ている。

 高齢化社会が進行、高齢難聴者が増加している。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆んどが難聴となる。個人差はあるものの、殆んどの人に起る。

 高齢化率が二十%を越した我が国では、高齢難聴者は全国で千五百~二千万人、当県で十五~二十万人と推計される。このうち、適合補聴器が得られているのは、全国で十~二十%、当県で五~十%、従って大部分の高齢難聴者は聴えないままでいるので、このうちの三~四割、全国で千五百~二千万人、当県で十五~二十万人がコミュニケーション障害より、社会・家族より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい、生きる意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症などに落込り、要介護状態となる。即ち、これら難聴者の三~四割、全国で四~五百万人、当県で四~五万人が要介護状態にあり、個々の家族で面倒をみる状態でなくなりつつある現在、地域社会か、国が面倒をみることになるので、増税にならざるを得ないし、国債も増えて、次の世代に迄、負担が及ぶことになる。

 この高齢難聴者の大部分は、耳の血管の動脈硬化による音を感じる細胞の障害なので、食事のコントロール、運動の励行により、予防が可能であり、百歳を越しても補聴器不用に出来るし、停止も可能で、同じ補聴器を使うのでも、基本的な聴えが良い方が、補聴器を上手く使えるので、これも重要である。

 “音は聴えるが、言葉がわからない”が高齢難聴者の特徴で、これも耳の血管の動脈硬化による血流障害で、音を感じる細胞に充分血液が流れて行かないため、機能障害を起し、音の大きくなり方、濁り方が変わる。これは測定可能で、正常の人が「1」大きくなったと感じるのが、二~三倍、場合によっては五~十倍となり、音がストレートに入ってこないため、話し言葉の理解力が悪化する。この全体像は言葉の理解力の検査にて、五十音を使って、何%理解出来るかを検査する。

 この音の歪みも、食事のコントロール、運動の励行により、内耳の血液の流れが改善されると改善し得る。

 この啓蒙活動はすでに二十年以上前より、行われているが、殆んど衆知されず、効果が挙がっていないのは何故であろうか!?
県民は当然、特に高齢難聴者、その家族はこれを熟知し、対応すべきである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


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  • 投稿日:2018年3月27日 火曜日

【論壇】高齢難聴者不対応がもたらすもの

2018年2月6日 火曜日

 高齢社会が進行、高齢難聴者が急増している。七十歳以上で約半数、九十歳以上で殆んどが難聴になるので、全国で千五百万~二千万人、当県で十五万~二十万人と推測され、これら高齢難聴者のうち全国で十~二十%、当県で五~十%しか適合補聴器が得られていないので、コミュニケーション障害から、家族・社会より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい・生きる意欲を失い、その三~四割、即ち、全国で四~五百万人、当県で四~五万人が「閉じ込もり」「寝たきり」「認知症」になり人間として生きていないと推測される。

 これら高齢難聴者が適切な時期に、適切な対応を得られれば、コミュニケーション障害が起らず、家族・社会と仲良く付き合い、人生をエンジョイ、亡る直前まで自立、人間としての人生を全うして行けるのに、その対応方法が確立していない我が国では、前述の如く閉じ込もり・寝たきり・認知症にて要介護状態となり(日本の認知症の八十%以上は、高齢難聴の放置によると云える)、個々の家族で面倒が見れる状態ではなくなりつつある現在、地域社会が、国が面倒を見るようになると云うことは、増税になり国民全体の負担となるばかりでなく、恐らく国債も増え、次の世代に迄負担が及ぶことになろう。

 この高齢難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化によると判明して来ているので、四十歳台後半から「食事のコントロール」「運動の励行」により、百歳を越しても「補聴器不要」にできるし、難聴が始っても、そこで停止されることも重要で、同じ補聴器を使うのでも、基本的な聴えが良い方が補聴器をうまく使えるからである。

 「音が聴えても、言葉がわからない!」音の歪みも、これも耳の血管の動脈硬化による血液の流れの障害で、聴えの細胞に血液が充分流れて行かないため、聴覚細胞が機能障害を起して来るものであるから、血流をコントロールし、即ち、食事のコントロールと適切な運動励行にて停止・改善が可能であることも判明して来ている。

 この啓蒙活動、当初十年はボランティア活動として、十三年前よりは特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会」(難聴者の会)とその附属診療所「補聴相談のひろば」として推進されて来ているが、あまり成果が上がっていないのはなぜなのだろうか?

 社会全体は当然、特に高齢難聴者とその家族は熟慮すべきと思う。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


【論壇】高齢難聴に特徴的な音の歪みー音は聴えるが言葉がわからないー

2018年1月18日 木曜日

 年と共に聴えが衰えてくる。早いか遅いか個人差があるが、殆どの人に起る。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆んどが補聴器を必要とするようになる。

 この大部分は、内耳を養っている血管の血流障害で、動脈硬化が進むと聴えが悪くなるだけではなく、言葉がわかりにくくなる。
補聴器は音を大きくはするが、この言葉の解りにくさ―音の歪み―は改善しない。

 この音の歪みは、内耳への血流障害により、聴えの細胞の機能障害が起り、音の大きくなり方、濁り方が変わるためである。正常な人が「1」大きくなったなと感じる音が、二~三倍、場合によっては五~十倍、それ以上にもなる。これは測定可能で、代表的な音について判定出来る。そして、その全体像として、言葉の理解力の検査を行うと、正常者は百%解るが、それが七十%、五十%、三十%と悪化し、音は聴えても、言葉が解りにくくなる。

 言葉の理解力が二十%以下になると、補聴器では殆んど言葉を理解出来なくなるが、「人工内耳」の埋め込み手術で、電話でも話しが出来る程になる。条件が整えば福祉対応で自己負担なく受けられるが、高価なものなので、福祉財政が貧弱な我が国では高齢化が更に進み、対象者が増加してくると、どう対応するのか気になる。

 一方、音の歪み度が三十~四十%と良くないのに、言葉の理解度は八十%前後と、データーが平行しない人を時々見かける。これらの人々は、八十歳以上になっても現役であったり、ボランティアなど社会活動を行っている人達で、聴えが悪くなったからと云って、人との交わり方が少なくならないように、積極的に社会に出て、人と良く交わることが重要と考えられる。

 前述の如く、高齢者難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化による血流障害と考えられ、従って四十歳台ぐらいから、職場検診や住民健診のデーターを参考に、「食事のコントロール」と「運動の励行」により、「百歳を越しても補聴器不要」は可能であるし、私共の診療所の八~九割の患者さんは、この約十年間、半年毎の検査、指導により、難聴が進行していない!(補聴先進国ドイツは「一年に一度の補聴器チェック」が法律になっているが、これはドイツ人の食生活から当然で、動脈硬化が進むと難聴が進むからである。)
まず難聴にならないように、なったら早期対応して、充実した人生を築いてほしい。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


【論壇】補聴器をつけても、言葉がわからない!

2017年12月5日 火曜日

 高齢社会が進行し、高齢難聴者が増えている。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆どが補聴器を必要とするようになる。早いか遅いか個人差はあるが、殆どの人がなる。

 そして、補聴器をつけても、音は聴えるが言葉がわからない人が段々増えて来ている。

 これは、内耳の音を受けとる細胞の機能障害によるもので、音の「歪(ひず)み」、即ち聴覚細胞の障害(殆どが動脈硬化による血流障害と考えられる)により、音の大きくなり方、濁り方が変り、音が聴えても、言葉がわからなくなるためである。

 この音の歪みは、測定可能で、この高さの音は正常音の何倍になっているか、数字で示すことが出来るし、その全体像として、言葉の理解力の検査を行うと、正常では百%だが、それが七十%、五十%、三十%と、年齢と共に悪化して行く人が殆んどである。

 補聴器は、音を大きくするが、この言葉の理解度までは改善できない。

 近年、高齢化が進行し、音は聴えても、言葉がわからない高齢難聴が増えて来ている。

 言葉の理解力が二十%以下となると、補聴器をつけても、言葉が全くわからなくなるので、「人工内耳」と云うことになるが、現在の日本の規準では両耳聴力が九十デシベル以上で、言葉の理解力が二十%以下になると、福祉対応の自己負担なしで、手術を受けられる。

 この人工内耳は、機器が高価なので、福祉財政が貧弱な我が国では、高齢化が進み対象者が増加する可能性の高いと思われるので、どう対応するのか!?

 二〇〇一年のドイツの学会に出席した際、九十歳以上の患者に人工内耳手術を行ったら、保険が支払わなくなった(ドイツは医療保険が支払う)ことが問題となり、討議の末、「医師がその人の人生に必要と判断した以上は支払うべき」と学会で決定したことを覚えているが、最近は両耳に人工内耳手術を行っても、保険は支払うべきと決定されたことが学界誌に記載されている。

 このように救済措置はあるが、言葉の理解力が悪くならないようにすること、難聴にならないようにすることが第一である。そして、それは内耳動脈の硬化による血流障害が大部分なので、食事のコントロールと運動の励行により「百歳を越しても補聴器不用!」となるよう、四十歳台後半から、職場検診、住民検診などで、自身の健康状態を把握、摂生することが重要である。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


【論壇】聴覚障害による身体障害者の認定と支給補聴器の更新について

2017年11月29日 水曜日

 
 聴えのレベル、また言葉の理解度が、国の定めた基準以上に悪くなると、「聴覚障害による身体障害者」に認定され、五年毎に補聴器を支給してもらえる。

 この認定申請診断書を作成する際に、再認定の時期を記載するようになっており、五年後の補聴器支給更新を目途に記載している。

 この五年後の補聴器更新は、補聴器の耐用年限と云うより、聴覚の悪化を前提に決められていると思われるが、先般那覇市在住の「聴覚障害による身体障害者」に、“五年後”の再認定の時期を過ぎても、補聴器更新の手続きがなされていないとの通知を那覇市役所から受けた由、このような催促の通知を見たのは初めてだったので、身体障害者の福祉が後退しつつあるように感じられる昨今、非常にすばらしいことと感心させられている。

 聴覚障害による身体障害者の認定は、両耳の聴力がそれぞれ七十㏈(デシベル)以上で六級、八十㏈以上で四級、九十㏈以上で三級、百㏈以上で二級、また言葉の理解度(語音明瞭度(日本では五十音を使用して行う)が両耳共に五十%以下で四級に認定される。他に身体障害がある場合には、それぞれの等級の指数を合算して、等級を決定し、これが高度の時には障害年金が支給されることもある。

 高齢者難聴は一般に年齢進行と共に悪化して行く、しかし、近年、高齢者難聴の大部分は、耳の血管の動脈硬化と判明、従って「食事のコントロール」と「運動励行」により、難聴が進行しなくなっている。私共の診療所では、六ヶ月毎に聴覚分析を行い、これにより具体的な指導を行っているので、この約十年、八~九割の患者さんの難聴悪化は防止されている。私共が六ヶ月毎の聴覚チェックを行っているのは、補聴行政が最も進でいるドイツを参考にしている。ドイツでは一年に一度の補聴器のチェックが法律になっている。これを私共の近年の知見からみると、ドイツ人の食生活はカロリーの高いものを多く摂取しているため動脈硬化が進行、難聴も進行すると思われる。一度駄目になった聴覚細胞は回復しないので、私共の所では音の歪みなどを半年毎にチェック、厳重注意、指導して聴覚を悪化させないようにしている。
 
 まず難聴にならないように(動脈硬化予防にて「百歳越しても補聴器不要」は可)、なった時は適切な分析検査を受け、適切な対応にて、寝たきり、認知症などにならず、人間として充実した人生を生き抜いてほしい。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


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