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老人性難聴にならないように! 悪化させないように!

2007年3月20日 火曜日

 年と共に聴えも衰えてくる。早いか遅いか個人差はあるが誰にでも起ってくる。この老人性難聴は、内耳の音を感ずる細胞(左右各々約一万個ある)を養っている血管の動脈硬化によることがわかって来ている。即ち他臓器の老化と同じで、最近良く云われる“生活習慣病”と深く関連している。その前ぶれとしての“耳鳴り”は中性脂肪と、耳のもう一つの機能の平行機能、即ち身体のバランスを調節する機能の障害としての“めまい・ふらつき”は総コレステロールとの関連を証明するデータ―もある。確かに高脂血症(コレステロール、中性脂肪など、脂肪系物質が血液中に増加している状態)を伴う“耳鳴り”や”めまい・ふらつき”が、高脂血症をコントロールすることにより消失・改善する例は多い。

 老人性難聴では、音を感ずる細胞が、動脈硬化と高脂血症により血液が内耳の各細胞まで充分に流れて行かない(血流障害)ため、死滅するー 一度死滅すると聴覚細胞は再生・回復することはないー か、または障害され、音の大きくなり方が変ったり、音のにごりが生じてくる“音の歪(ひず)み”により音は聴えるが言葉がよくわからないことが起る。この音の大きくなり方の程度は各人の耳について、それぞれの音の高さについて、測定が出来る。勿論「語音明瞭度検査」により、言葉の理解力も測定でき、両耳ともに五十%以下の時には、難聴の度合いが両耳共に七十dB(デシベル)以上(正常者の聴え始めを0dBとしている)である時と同様、聴覚障害による身体障害者に認定され、五年毎に補聴器の支給を受けられる。

 この音を感ずる細胞の障害による“音の歪み”は高脂血症による内耳血流障害により死滅する前段階として生じているようで、高脂血症が改善されてくると、その歪み度は改善され言葉の理解力も改善されてくることが明らかになって来て居り、難聴者自信も“良く聴えるようになった”と云うが、通常の聴力検査では、難聴のレベルは不変である。

 このように、老人性難聴が動脈硬化、高脂血症などと深く関連しているようなので、ここ数年難聴を訴える高齢者には、食事や運動の指導を行って来ているが、この三年前後の聴力検査のデータ―をみると、九十%以上の人々の聴力が殆ど不変である。

 小生の現役時の琉大病院時には高齢者の難聴が徐々に進行し、あまり傷付けないように説明するのに苦労したものであるが、これがなくなり、ホッとしている。聴力が悪化している人は食事などの注意を怠っている人が多く、真剣に取り組むよう指導している。

 そして、聴力が不変でも“語音明瞭度”が改善している人が多く(音の歪みの改善)、食事の改善や運動の励行により、内耳だけでなく、全身の血流も改善しているのであろう、ニコやかに満足気で、人生を楽しんでいるように感じられる人が多くなりつつあることは、喜ばしいことである。


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  • 投稿日:2007年3月20日 火曜日

片方の高度難聴・聾の対応ークロス補聴器ー

2007年3月5日 月曜日

 片方の耳が全く聴えないと云う人が可成りいる。毎年、新たに十数名より相談があるので相当数存在すると思われる。

 生まれつきのこともあるが、多くは、「おたふく風邪(ムンプス)の時に、片方の耳が全く聴こえなくなることが多い。(他にビールス感染による難聴の時には聴力が残っているケースが多い)。一般に幼少児期に多いが、成人してからなる人もある。

 音を感ずる細胞や身体のバランスをコントロールする細胞のある「内耳」は骨(側頭骨)の中にあるが、リンパ液の入った袋で、この中に音を感ずる細胞約一万個(蝸牛)が、身体のバランスをとる細胞数千個(前庭・三半規管)が存在するが、この内耳にムンプスのビールスが入り、聴えの細胞を駄目にし、そのうちの約半分の人の身体のバランスをとる細胞を駄目にする(身体のバランスをとる細胞が駄目になると、一時的に身体のバランスがとれにくくなるが、他側の正常な内耳や中枢性の代償により、三週間ぐらいで、通常の生活に支障を来たさないようになる。しかし、身体のバランスを必要とするスポーツなどは不得意なので推めないよう指導している。)(ムンプス聾は何故か殆どが片方の耳である)。

 片方の耳が急に聴えなくなると、とても不自由で、聴えない方から話されるとわからないし、特に会議の時に困ると訴えられる。音の方向感覚(何処から音が来ているのか)もなく、不自由することもある。

 物心付かない時からの片方の聾(先天性又は幼児期のムンプス聾)の時は、片方が聴えないままで育ってくるので、不自由することもなく、音の方向もわかっている人も多いが、聴えない方の耳もとでささやかれたとか、電話を使った時に気付くことが多く、特に会議の時に困り、何か対応できないか相談されることが多い。(明日、東京の音楽学校に入ると受診され、片側の聾と判明したケースもあった。)

 この対応として、「クロス補聴器」がある。聴えない耳の方に来た音を、聴える方の耳に誘導して聴く方法で、日本では殆ど普及していないが、欧米先進国では可成り使われ、方向感覚を得させるための研究も行われ出している。

 日本では使用する人が殆どいないので、オーダーメイドとなり、従って高価である上、メガネ型(メガネの蔓ーつるーをはわせて正常の方に誘導する)が開発されて居らず、後頭部(首のうしろ)に誘導線をまわすタイプなので、評判が悪く殆ど使われていない。メガネ型を希望する人には、海外旅行の時などに購入してはどうかと、推めているのが現状である。

 よく、片方の耳が聴えないからと販売店を訪れ、補聴器で聴えるようになると云われ購入したが聴えなかったと云う話を耳にする。前述のような人には通常の補聴器は意味がない。耳鼻咽喉科にて聴えがあるのか、残っているとすれば補聴器が有効か、言葉の理解度の検査を含め検討し、可能性がある時は試聴・貸し出しで本人が確認した上で、購入すべきである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年3月5日 月曜日

適合補聴器が得られる時代の到来ー難聴を感じたら、まず医学判定をー

2007年3月5日 月曜日

 高齢化社会が進行、高齢難聴者が増え続けている。七十才以上で約半数が補聴器を必要とするようになるので、高齢化率が二十%を越えた我が国では、十人に二人が高齢者で、その半分、即ち十人に一人が難聴と云うことになり、如何に多いかがわかろう。

 一人ひとり異なる聴え方に補聴器を適合・調整する制度がなかった我が国では、補聴器が規制されないまま乱売された結果、補聴器不信・不使用となり、聴えないままでいる人が高齢難聴者の九十~九十五%以上となり、コミュニケーション障害より、家族・社会より孤立し、閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がっているが、このことに気付いている人が我が国には殆どいない。

 平成17年4月に薬事法が改正され、補聴器は管理医療機器に規定され、販売規制が始り、販売業者に補聴器の適合義務・責任が生じて来て、適合補聴器が得られる時代になっているが、このことを知っている人は殆どいない。これを周知させる啓蒙活動が重要である。

 この法改正に呼応、日本耳鼻咽喉科学会が「補聴器は医師の診断の元に購入すべき」と「補聴器相談医」を学会認定で制度化し、補聴器適合診断(ドイツでは医師が処方するだけでなく、適合具合を確認しないと売買できない)と共に、難聴を改善し得る疾患の発見・治療が可能となり、身体障害者の認定、医療控除のための診断書作成など、医学判定下の補聴器適合の重要性も認識されて来ている。

 このように、適合補聴器が得られる時代になっているが、難聴が進んでから補聴器を適合しても、なかなか使いこなせないのが現状である。聴えが悪くなって来たことで、人生は終りに近付いたと思い込んで、補聴器を活用して元の生活に戻ろう、また何かをしようと云う気にならない人が殆どなのである。

 一方、聴えが衰え出した時、特に仕事や社会活動をしていると、それを継続するため、補聴器をあっと云う間に使いこなしてしまう。

 そうなれば、その人の人生は継続、いや発展させる人もあり、恐らく亡くなる直前まで、自分の思い通りの人生を生き抜き、認知症、寝たきりなどとは無縁の人生となろう。

 このようにするには、「高齢難聴者の早期発見・早期対応」が重要で、六十五才以上の毎年の聴力検査によりこれを達成すべきで、これを住民検診に組み込むべきと提唱している。

 約十年前医師会を中心に、沖縄の「長寿世界一宣言」のイベントが企画されたことを記憶している人が多いと思うが、「沖縄は確かに長寿だが、寝たきり、認知症が多く、人間として生きていない」とクレームがつき宣言出来なかったのは残念なことであった。

 人間は精神的な生き物なので、難聴となり、これが補完されず難聴のままでいると、コミュニケーション障害から、精神面が満足されず人間として生きて行く自信を失い、人間性が保たれなくなってしまう可能性が高いことを知り、適切な対応をすべき時に来ている。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年3月5日 月曜日
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