■ 月別アーカイブ: 5月 2007

老人性難聴 -その増加の対応が医療費・介護費・増税などに直結ー

2007年5月16日 水曜日

 年と共に聴えも衰え、七十才以上で約半数が補聴器を必要とする程になる。高齢社会が進行、高齢化率から、国民十人に一人は難聴と実に大変な状況になって来ている。

 しかし、この老人性難聴は、最近内耳の血管の動脈硬化によることが判明、予防も進行防止も出来るようになって来ている。

 一方、難聴には補聴器と云うが、その評判は悪く、必要な人の十~二十人に一人しか使用していない。広告が氾濫するわけである。

 年が進んで、聴えないままでいると、コミュニケーション障害より、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物である人間は、もう一人前として生きて行けないと自信を失い、閉じこもり、寝たきり、認知症と、人間としての行き方が出来なくなる。これが国民十人に一人の殆どの人に起る可能性があり、現実にはすでにその半分には起っていると思われる。老人医療費・介護費が増加し、今後も増加し続け、増税が視野に入らざるを得ない。

 当法人の活動もあり、昨年四月に薬事法が改正され(厚生労働省)、補聴器は「管理医療機器」に規定され、販売規制が始り、業者に「補聴器適合」の義務・責任が課せられ、広告規制も行われている。これに呼応、日本耳鼻咽喉科学会が「補聴器は医師の診断の元に購入すべき」との方針を決定、これに対応する「補聴器相談医」制度を発足させ(昨年四月)、いずれ欧米先進国並に、補聴器購入に医師の処方箋を要し、ドイツ、イギリス、フランスのように、医師が補聴器の適合判定を行う態勢造りが始っている(補聴器行政の一番進んでいるドイツでは、一年に一度の補聴器のチェックが法律で定められている)。これに加え、「特定商取引に関する法律等の改正」(平成十六年十一月、経済産業省)も行われ、高齢者が訪問販売等での悪質なトラブルから救済されるようになっている。

 このように、「適合補聴器」を得られる時代になっているのに、このことを難聴者もその関係者、一般市民、県民、国民の殆どは知らないので、これを周知させる必要がある。

 これと同時に、いよいよ聴えが悪くなってからでは、補聴器を使いこなせないし、使う意欲がないのは前述の如く、一人前として生きて行く自信を失ってしまうからで、悪くなり出したら、すぐ対応する、即ち、「難聴高齢者の早期発見・早期対応」を提唱し、老人性難聴の予防・対応などの講話(レーガン、クリントンなどの例をあげ)と同時に聴力検査を行い対応するよう啓蒙活動を行っている。

 このように、難聴になってもすぐ対応、コミュニケーション良好で、家族・社会と仲良く付き合い、正確な情報を得て人生を思い通りに設計、死の直前まで自立、人生をエンジョイ出来れば、本人が幸せであると同時に、精神的に元気になるので、老人医療費を軽減させ、介護費は殆ど不要となり、増税は不要、恐らく国債、県債なども減少、次代を背負う若者が明るい未来に夢を描ける社会となろう。


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  • 投稿日:2007年5月16日 水曜日

老人性難聴とは!

2007年5月7日 月曜日

 老人性難聴とは、年齢の進行と共に聴えが衰え、早いか遅いか個人差はあるものの、殆どの人に起って来る難聴で、近年これが音を感じる細胞を養っている内耳動脈の”動脈硬化”によることが明らかになって来ている。

 従って、高血圧症の方は内耳動脈硬化も起っていると認識すべきで、これに高脂血症(コレステロール、中性脂肪など脂肪系物質が血液中に増えている状態)が加わると、動脈硬化が進行、難聴も進行して行くばかりでなく、所謂ドロドロ血液になるので内耳の音を感じる細胞への血液の流れも障害され、酸素・栄養などを充分供給されなくなる細胞から「音の歪(ひず)み」(音の大きくなり方や濁り方が変って感じられる状況)を生じ、音は聴えるが、言葉がよくわからないようになるばかりでなく、脳梗塞・心筋梗塞のように内耳動脈の梗塞を生じ、一瞬にして聴えなくなる「突発性難聴」を引き起こすこともある。

 この音を感じる細胞の”音の歪み”による音の大きさの感じ方の度合いは、各音の高さ(周波数)について測定することが出来、補聴器適合時に重要な要素となる。そして、この音の歪みの全体像としては、言葉の理解度の検査があり、両耳共に最良で50%以下の時には、純音聴力検査域値が70デシベル以内でも、身体障害者四級に認定され、5年毎に新しい補聴器の支給を受けられる。

 特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会(難聴者の団体で17市町村に支部を有し、会員は約4千名)の附属診療所「補聴相談のひろば」(耳鼻咽喉科)が開設されて3年余、老人性難聴の相談者には高血圧症、高脂血症などの問診(最近は予約時に住民検診や人間ドックのデーターを持参させる)と共に、食事、運動の指導を行っているが、3年前後の聴えのレベルの経過をみると、約9割の相談者は不変で、従来のように徐々に悪化することがなくなり、相談者は当然であるが、当方も非常に嬉しく、喜んでいる。

 そして、聴えが悪化しないだけでなく、言葉の理解度が改善され、各周波数における音の歪み度も改善されているのを良く見掛ける。従って、相談者は「聴えが良くなった!」と実感するが、通常の純音聴力検査では不変である(一度死滅した細胞は回復しない)。

 このように、食事の改善や運動の励行により、内耳だけでなく、全身の血流も改善しているのであろう、ニコやかに満足気で、人生を楽しんでいるように感じられる人が多くなりつつあることは、実に喜ばしいことである。

 これと共に、語音明瞭度が30~40%であった人が1~2年後には70~80%になる人も多く、これは内耳血流障害の改善だけでなく、補聴器を良く使いこなし、聴き取りうまくなったためと思われるケースで、”補聴器をつけても若い時には戻らないが、一生懸命使いこなして行くと、若い時に近くなるので、ガンバってほしい!”と自信をもって指導できるようになったことは実に喜ばしい。


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  • 投稿日:2007年5月7日 月曜日
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