■ 月別アーカイブ: 9月 2007

磁気ループで一家団欒(だんらん)を!

2007年9月28日 金曜日

 県の御指導により、補聴器適合運動を「沖縄補聴相談センター」(ボランティア活動)より引きついで、特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会の附属診療所「補聴相談のひろば」として再開し、四年が経過した。

 相談者の半数以上は、両親や祖父母の難聴を気遣う子供・孫が同伴して来て、待合室では自分の家族ばかりでなくはなく、他人の家族も気遣って、場が盛りあがっていることが多く、さすがは沖縄と喜んでいる。

 当診療所の待合室には磁気ループが設置され、検査の関係上テレビは消音か少音にしてあるが磁気ループを通して補聴器で聴えるようにしてある。(磁気ループとは、マイクの音を直接補聴器に入れる装置で、一般には集団補聴として講演会場などに設置し、補聴器を「T」に合わせて使用する。自宅では部屋にループを設置し、マイク又はテレビなどにつなげば良い。)当待合室では試聴用の補聴器にて難聴者のみでなく家族にも聴いて戴いているので、とても好評である。普段補聴器で聴いている時と異なり、磁気ループ方式にすると周囲の雑音が全くなく、テレビの音・声のみが直接補聴器に入ってくるので、本人ばかりでなく家族も非常にハッキリ聴えるのにビックリする。多くの家族では、難聴になった両親や祖父母のテレビの音の大きさに難渋し、あまりうるさいからと、健聴者のボリュームにすると、難聴の両親や祖父母は聴えないので家族の輪の中に入れず、一緒にはいても静かに淋しそうにしてしまう。それを気にしている家族では、この磁気ループをその場で購入して行く人も多い。家族思いの沖縄ならではのことと感心している。

 この磁気ループについて、磁気が発生するから心臓のペースメーカーなどに影響するのではと心配する人もあるが、磁気ループに流れる電流は五ミリアンペア程度で、最も強い電磁波の電車の周辺では、二千ミリアンペア以上の電流があり、それでも心臓のペースメーカーに影響しないので心配は不要である。

 西欧諸国では、この磁気ループが人の集まる所(集会場、講演会場、劇場、音楽会場など)、また役所や病院の窓口・診察室などに設置されているのが常識で、難聴になっても子供などの世話にならず、自立して行ける。

 県もこれを認識し出し、新しい施設に設置し始めているが、市町村では認識に温度差があって、全く無関心のところもあり、公民館レベルまで設置して難聴高齢者の社会参加・活性化に取組んでいる地域もある。

 また、この集団補聴には、この磁気ループ以外に、赤外線やFM方式があるが、専用の補聴装置が必要である。磁気ループへの「T」切り替えは補聴器の半分以上についているので、これが安価で早道なので推めているが、それぞれの装置で難聴者により聴え方が異なる可能性があり、最終的には難聴者一人ひとりが選択するのもではないかと考えている。


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  • 投稿日:2007年9月28日 金曜日

補聴相談で気付いたことー「敬老月間」の補聴器選びの参考にー

2007年9月18日 火曜日

 特定非営利活動(NPO)法人 沖縄県難聴福祉を考える会の附属診療所「補聴相談のひろば(耳鼻咽喉科)」が開設されて四年が経過した。

 まず感ずることは、医学判定の重要性である。年と共に聴えが悪くなったと言っても、その約半数は加療により改善・難聴予防の可能性があることである。昭和初期に三人に一人と多かった慢性中耳炎が残っている人は少ないが、栄養・衛生状態の改善により鼓膜は再生し、治ったようにみえても、耳管(中耳と鼻咽腔ー鼻とノドの間ーを結ぶ管)の障害より難聴、耳閉感、頭重感などが残っている人が多く、これらの症状の改善により難聴が改善し感謝されることが多い。

 近年、「老人性難聴」と高脂血症(血中のコレステロール、中性脂肪など脂肪性の物質が高くなる)、即ち耳の血管の動脈硬化との関連性、その前触れとしての「耳鳴り」と中性脂肪、また「メマイ」と総コレステロールの関連性も明らかとなりつつあり、高脂血症は最近の健康意識の高揚により一時ほど多くはないが、その 調整は難聴進行の予防に、特に内耳動脈梗塞による突発性難聴の予防となろう。

 次は、業者の自宅訪問の問題である。補聴器を購入すると、電池供給と自宅訪問が始まるようで、この時にクリーニング(掃除)するとして、調整が少し狂わされて相談者が訪れるケースが数十例に及んでいる。そして、これが新しい補聴器の購入に繋がるようである。確かに自宅に来てもらえれば便利で楽だし、家族も時間を工面して連れて行くこともなく面倒がなく良いと思っているのかもしれないが、特に補聴器購入時には、自宅訪問では、充分な検査・分析は当然出来ず、従ってそのデーターを元にした補聴器周波数特性(どの高さの音をどう補うか)の設定・調整は当然うまく行くはずがないので、やはり信用出来る耳鼻咽喉科に足を運んで、適合補聴器が得られるよう指導してもらうべきである。補聴器は大事に使えば十年以上使えるのであるから、便利、簡単で不適合補聴器を購入し、ニ~三年毎に買い換えているよりは、はるかに良いと思うが如何であろうか。

 もう一つ、聴覚障害による身体障害者に認定されると、五年毎に新しい補聴器を支給してもらえる(平成十八年四月の「身体障害者支援法」により五~七万円の補聴器が一割負担となっている)が、この時期は業者も当然知っているので、事前に連絡して、福祉支給の補聴器より良い補聴器をと言うのであろうか、新しい補聴器を自費で購入させられているケースが数例出て来て居り、補聴器は高ければ良い、安ければ駄目と言うものではなく、その人の聴え方に合っていなければ、どんな高価な補聴器も意味がないことなので、やはり信用の出来る耳鼻咽喉科に足を運んで適切な指導を受けるべきである。

 薬事法の改正(平成十七年四月・厚生労働省;補聴器は管理医療機器に規定、販売規制、広告規制、業者の補聴器適合の義務・責任)、特定商取引に関する法律等の改正(平成十六年十一月・経済産業省;訪問販売等におけるクーリングオフなど)の法律改正と「補聴器相談医」制度(平成十八年四月・日本耳鼻咽喉科学会)により適合補聴器が得られ易い時代になった。

 従って、難聴になっても従来のようにコミュニケーション障害より閉じこもり、寝たきり、認知症のように、人間として生きて行けなくなるのではなく、適切に対応し、適合補聴器を得て、人生を継続・発展させ、コミュニケーション良好で家族・社会と仲良く付き合い、正確な情報により、その時代に合った人生を見直し、亡くなる直前まで自立、人生をエンジョイし、人間としての人生を全うしてほしいものである。


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  • 投稿日:2007年9月18日 火曜日

自分の聴え方は自分のもの ー他の人には全くわからないー

2007年9月4日 火曜日

 聴えか方は一人ひとり異なる。加齢による変化は一般に高音部から悪くなってくるが、その内容は一人ひとり異なるし、中耳炎などの時には低音部、中音部が障害されてくる。そして、それは鼓膜などの損傷状況により聴え方は色々である。

 その上に、補聴器が必要となる程になる時には、内耳の音を受け取る細胞(聴覚細胞)の障害が起こっていることが殆どである。内耳には左右それぞれ約一万個の聴覚細胞あると云われ、それぞれどの高さの音を受け取るか決っていて、丁度ピアノの鍵盤のように並んでいる(人間の内耳はかたつむりのように二回転半しているが)。

 これらの細胞が障害されてくると、一つひとつの細胞が音の大きくなり方や、にごり方が変って聴えるし(これを「音のひずみ」と云う)。これをそれぞれの音の高さについて測定することは可能で、難聴者はそれぞれの高さの音の聴力低下と共に、それぞれの聴覚細胞の音の”ひずみ”が加わったものとして聴いているので、これはその人の聴感覚と云うものであって、どのように聴えているかは本人にしかわからないのである。

 そこで補聴器を適合させる時には、まず治療可能な病気の有無(耳垢で外耳道が閉鎖されても難聴となる)の医学的判定の後、測定可能な聴力レベルを検査し、どの高さの音がどのように聴えなくなっているか、その難聴状態を補聴理論に従い適合させて補って行くが、前述の”音のひずみ”の有無、その程度は語音明瞭度検査(言葉の理解度の検査)などにより自覚的・他覚的に検索し、その”ひずみ”の程度を検討して行くが、”ひずみ”方の程度がどの高さの音でどの程度かは測定出来ても、どのように聴え、どのように言葉を理解しているかは本人にしかわからず、従って測定可能な聴力レベルから補聴理論により適合させた補聴器の状態でどのように聴えるのか、何が聴え何が聴えないのか、どのような音がひびいたり、物足りないなど訴えてもらうことにより微調整を繰り返し、その人に一番聴える、言葉が分かり易い状態に調整して行くが、その人の聴え方であって、その人しかわからないので、どのように聴えるのか、どのように聴きたいのか、何か障害となっているものはないかなど表現し、注文をつけてもらわないことには行えない。

 敬老の日が近付き、聴えが衰えて来た親や祖父母に補聴器のプレゼントを考えている人も多いと思うが、補聴器はただつければよいと云うものではなく、一人ひとり異なる聴え方に適合させなければ意味がなく、前述の微調整の上、補聴器を使いこなす装用指導により初めて使えるようになれるので、このことを充分理解し、ご当人が本当に満足するよう心遣ってあげてほしい。よくみられることであるが、子や孫がただ買い与えたことだけで満足し、贈られたご当人が聴えずに難儀することのないようにしてほしいものである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年9月4日 火曜日
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