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「耳の日」に因んで ー耳疾患・難聴の対応が可成り可能にー

2009年2月17日 火曜日

 3月3日は「耳の日」である。語呂合わせであるが、制定した日本耳鼻咽喉科学会は、3月3日は、電話を発明したベルの誕生日で、ベルは言語学者であったが、難聴の妻と会話をしたい一心で製作した機器が電話の発明に繋がった由にて、携帯電話を含め、コミュニケーション手段として必要不可欠になった現在、やはり記念すべき日と云えよう。

 制定頭初の昭和20年代に多かった慢性中耳炎(当時の小児の3人に1人)は、衛生状態、栄養状態などの改善により、千名規模の学校で、鼓膜に穴があいている児童は1人いるかいないかに改善され、幼児期に多い滲出性中耳炎(鼓膜の中の部屋に滲出液が溜る)も、幼児期の耳管(鼻とノドの間より中耳に通じている管)が5~6才で大人並になると殆どが正常化するので、この説明を受け幼児期に問題を起さないよう指導を受けていると、当問題も解決出来るようになっている。

 難聴は、近年補聴器に関連する法律(薬事法・特定商取引に関する法律など)の改正や、”補聴器相談医”の制度化(日本耳鼻咽喉科学会)により、本人が聴くことに熱心ならば、1人ひとり異なる聴え方に適合する補聴器が獲得出来るようになって来ている。

 補聴器装用にても言葉が殆ど理解不能な高度難聴には、内耳・脳幹に「人工内耳」「脳幹インプラント」を埋め込むことにより、適時に埋め込めれば、電話で話が出来るほどになるし、生まれつきの聾・高度難聴の場合には8才迄に、理想的には4才迄に人工内耳などを埋め込むと、健常児と区別がつかないほど良く聴え、言葉が話せるようになっている。

 このように、特殊な疾患などを除き、殆ど耳に関する問題は解決可能となって来ているが、近年の高齢社会で「難聴高齢者」の増加が最大の問題である。即ち、高齢化率が20%を越えた我国では、70才以上で約半数が、90才以上では殆どが補聴器を必要とするほどになるので、全国で1千万人以上、当沖縄県でも10万人以上いる計算になり、その対応により、即ち適合補聴器が得られず聴えないままでいると(難聴高齢者の80~90%、当県では90~95%)、コミュニケーション障害より家族・社会より遊離・孤立し、閉じ込もり、寝たきり、認知症と人間として生きて行けなくなるが、適合補聴器が得られれば(前述の如く可能)、人生をそのまま継続・発展させられ、コミュニケーション良好なので家族・社会と仲良く付き合え、人生をエンジョイ、亡くなる直前まで自立、”人間としての人生を全うする”ことが出来る。

 いよいよ聴えが悪くなってからだと、コミュニケーション不良となり生きて行く自信を失い、生きて行く希望を失うからであろう、補聴器をうまく使いこなせないし、使う意欲を失ってしまうようなので、早期発見・早期対応が重要である。

 このように、耳・聴えに関してはほぼ対応が可能となりつつあることを知ってほしい。


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  • 投稿日:2009年2月17日 火曜日

補聴器のビデオが完成 -人間らしい充実した人生を送ろうー

2009年2月2日 月曜日

 沖縄補聴相談センターではNHK厚生文化事業団の援助を受け、だれにでも分かる「補聴器取扱い方法」のビデオを作製した。貸し出し可(必要な方はダビング可)ですので、テキストとともに大いにご活用いただきたい。補聴器の信用がなく、「補聴器はガアガアうるさいばかりで、言葉が分からないから、いらない」と、恐らく必要な方の五分の一か、十分の一しか活用されていないと思われる。そして聴かなくてもよい生活に、すなわち社会や家族と没交渉になってしまっている人を多く見掛ける。

 しかし、補聴器は理論的、科学的に合わせれば、八~九割以上の人が、言葉が良く理解でき、十分満足していただけるようになる。高齢化社会に入り、聴覚障害者は増加している。聴こえが悪くなりだしたとき、良く適合した補聴器を得て、人間らしい充実した人生を全うしていただくために、当ビデオを作製した。

 一般に品物を買うときには、その品物についての基本的知識があれば、思い通りの品物を得ることができる。補聴器も同じで、その基本的知識を聴覚障害者、それを支える家族やボランティアに持っていただき、良く適合した補聴器に巡り合っていただきたい。

 一般に、高い品物は良い品物ということになっているが、補聴器に関しては、一人ひとり聴こえ方が異なるので、その人の聴こえに合っていないと、どんな高い補聴器も何の役にも立たない。補聴器を良く知り、補聴器をその人その人に合わせなければならないことを認識していただきたい。

 第一巻「補聴器の取り扱い方法」は、いろいろな補聴器の紹介、解説、特にそれぞれの補聴器の特徴、長所、短所などについて、また補聴器に慣れ親しむための方法、さらに補聴器が良く聴こえないとき、ハウリングのとき、故障か否かのチェックの仕方などをまとめてある。

 第二巻「補聴器のフィッティング方法」はどのようにしたら、補聴器がその人に合うようにすることができるか、すなわちどうしたら良く適合した補聴器を得られるかを解説した。

 まず聴こえの測定はSPLメーターで行う。通常の病院などで使っている聴力検査は診断用で、補聴器はこの単位で作られていないからである。

 SPLメーターにより、補聴器と同じ単位、同じ条件(イヤホンを使って)で測定した聴こえに同じ図面上で補聴器の周波数特性を書き込み、言葉を理解するのに必要な音域を中心に、不要な音はカットし、不快音域に入らないように調整する。このように合っているか否か図面上で見ることができるので、目でも確かめることができる。

 そして、補聴器適合はこれで終わるわけではない。否、これはむしろ出発点で、一人ひとりの環境音、生活音が異なるし、内耳障害のあるときは聴こえのひずみ(一人ひとり異なる)があるため、何回か微調整が必要で、その後も半年か一年に一度は聴こえと補聴器をチェックすべきである。

 聴覚障害者は人口の約四%、当県では四~五万人と、決して少なくない。これらの人々の充実した人生を心から祈るものである。

※平成7年6月14日(水) 縄タイムス [論壇]投稿 掲載の文です。 

 ●「補聴器の取り扱い方法」(平成7年作成)のビデオ がまだ ございますので、
  ご希望の方には、お譲り致します。ホームページに記載のメールか、電話・ファックスへご連絡 戴けましたら、対応致しますのでお気軽にお問い合わせ下さい。


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  • 投稿日:2009年2月2日 月曜日
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