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高齢者の難聴問題 -放置せず補聴器対応をー

2009年3月24日 火曜日

 年とともに聴こえも衰えてくる。早いか遅いか個人差はあるものの、誰にでも起こる。

 難聴には補聴器というが、後述する法律の改正、新制度の発足をほとんどの人が知らず、そのため適合補聴器を獲得できず、難聴高齢者(70歳以上で約半数、従って高齢化率が20%のわが国では国民10人に1人)の90-95%が聴こえないままでいる。

 年が進み聴こえないままでいると、コミュニケーション障害から社会や家族から遊離・孤立してしまう。人間は精神的動物なので生きる自信・意欲を失い、その結果、閉じこもりや寝たきり、認知症へとつながり、人間として生きていけなくなる。

 そうならないためには、聴こえが悪くなりだしたら、すぐ対応することである。65歳以上になったら、毎年聴力検査を、いずれ住民健診に組み込むようにしたいものだ。すなわち「難聴高齢者の早期発見・早期対応」を提唱し、老人クラブ、自治会、デイサービスなどに出向き訴え続けること。さらに法律の改正による次のような支援も必要である。

 �薬事法の改正(厚生労働省2005年4月)補聴器は管理医療機器に規定され、販売規制、業者の補聴器適合の義務・責任(よく聴こえるようになるまで訴え続けること)と広告規制(薬事法ならびに医薬品等適正広告基準により)など。

 �特定商取引に関する法律等の改正(経済産業省04年11月)高齢者が訪問販売・電話勧誘販売・通信販売などで悪質なトラブルに巻き込まれたときに救済する。

 �補聴器相談医制度(日本耳鼻咽喉科学会で補聴器は医師の診断の下に購入すべきと補聴器相談医を学会認定で制度化する方針)などを含め講話を行い、全員の聴力検査を行い、早期に対応させるようにしている。

 ドイツ、フランス、イギリスなど先進国では、医師が処方するばかりではなく、補聴器が適合しているか否か、患者の満足度を含めチェックしサインして売買・保険支払いとなる。しかもドイツでは1年に1度の補聴器チェックが法律で定められている。ドイツ政府は国民すべて聴こえるようにすることを、人間の基本的人権として保証しているのである。

 これらにより、全く適合していない補聴器の販売は最近少なくなってきている。しかし適合補聴器を獲得している人は10人に1人ぐらいで、まだ改正法律が守られているとは言い難い状況である。

 また、最近那覇市の老人クラブなどで、自分たちの問題としてとらえ、それに積極的lに対応しだす所が出てきて、とても喜ばしいことである。しかし地域によっては恥ずかしいとか、難聴を自覚しだしても、自分で行動・対応できない人たちも多い。このような人たちをそのまま放置することは、本人の不幸になるだけではなく、医療・介護で家族や社会の負担につながることも考えてほしいものである。

※平成18年9月15日(金) 沖縄タイムス 「論壇」投稿掲載


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  • 投稿日:2009年3月24日 火曜日

聴覚障害者へ関心をもとう -思いやり・勇気づける社会をー

2009年3月18日 水曜日

 「手話」に関心が持たれるようになり、手話サークルが各地で活発な活動を展開し、役所や警察なども、聴覚障害者のために取り入れるところも増えてきた。

 また、劇画の世界にまで登場するようになった由。テレビ(まだ当県ではごくわずか)や、飛行機での非常用設備の案内」のビデオにも入ってきており、聴覚障害者のために社会が気遣うようになり、対応してきていることを、心から喜ぶものである。

 しかし、ここまできたのなら、さらにもう一歩進めて、聴覚障害者全体に気遣い、思いやり、対応する社会になってほしいと思う。

 というのは、手話対象者は聴覚障害のごく一部にすぎないからである。一般に聴覚障害者は、人口の約4%といわれる。従って当県では、4~5万人の聴覚障害者が存在すると推定される。

 この中で、手話対象者は先天性ろうを中心に、将来自分が全く聞こえなくなったときのことを考え、手話を覚えて準備している人を入れても、二千人弱、すなわち聴覚障害者の4、5%にすぎず、従って95,6%の聴覚障害者は補聴器対象者で、手話は理解できない。

 ところが、毎年の補聴器の販売実績をみると、当県でみても全国的にみても、補聴器が必要な方の5分の1か10分の1ぐらいしか使用されていない。

 しかも、その使用者が合わない補聴器を3個も4個も持って、難渋させられている現状を踏まえて、補聴器適合運動を約2年前からマスメディアの協力を得て展開してきていることは、ご存知の通りである。

 この件に関しては、当県の聴覚障害者にもだいぶ認識されてきているが、聴覚障害が高度の方や内耳障害による聞こえの歪み(にごり)がひどく、音は聞こえるが言葉が十分に理解できない人が、補聴器対象者の10~15%存在し、この人たちには「要約筆記」のボランティアの手助けが必要ということになる。

 そして、テレビや教育ビデオなどでは(飛行機の「非常用設備の案内」のビデオなども同じ)、先天性ろう者や高度難聴者(聴覚障害者の15~20%)に「字幕スーパー」が必要であることを十分認識していただくよう、関係各位にお願いしたい。

 このように、聴覚障害者の一人ひとり異なる障害の内容により、その対応が異なるわけで、聴覚障害者自身が分からないからと簡単にあきらめないで、勇気を持って自分には何が必要かをアピールしていただくことが重要である。それにわれわれ社会が、その事情を良く理解して、柔軟に対応していくようになるべきであると思う。

 そして、どのような対応でも、基本は「いたわりの気持ちで接する」ことで、はっきり、ゆっくり、分かりやすく話したり、表現してあげてほしいし、ともに社会を形成し、参加するよう勇気づけてあげてほしいものである。

 いよいよ高齢化社会に突入するに当り、聴覚障害者も社会も互いに気を配り、万民に住み良い人間社会を発展させていってもらいたいものである。
  ※平成7年 7月12日(水)沖縄タイムス「論壇」 投稿 掲載文です。


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