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医師の下で検査しっかりと -自身に合った補聴器利用をー

2009年7月15日 水曜日

 年とともに聴力も衰えてくる。早いか遅いかには個人差があるが、誰にでも起こってくる。

 70才を越すと約半数が補聴器を必要とするほどになる。しかし、補聴器適合制度がなかったわが国では、乱売され、補聴器不信・不使用となり、高齢難聴者のほとんどが使用していない(必要な人10~20人に1人)。

 補聴器が使えず難聴のままでいると、コミュニケーション障害で家族や社会から遊離して、閉じこもりや寝たきり、認知症などで孤立するケースが多くなる。

 知的な生き物である人間はコミュニケーションが満足にいかないと、人間性を段々と失って行くことは、日常的によく見掛けていることと思う。

 これを心配し、家族・社会の輪の中に入れるように努める家族が多いのが当県の特長だ。

 実にほほ笑ましく、重要なことである。しかし、自分が難聴でないこともあって、気持ちだけで理解が及ばず、効果を挙げていない例が多いのは残念である。

 一人一人の聴こえ方が異なるので、それを正確に測定し、補聴器を適合・調整する必要がある。環境音や生活音の違いを十分意識して、適合度を確認したり、またメーカーによる製品の音質が異なることも視野に入れ、使う人の身になって決定すべきである。

 時折、東京や大阪などから子どもや孫が「敬老の日」や「誕生日」などで本人抜きで選んでプレゼントすることもある。

 外からは実にほほえましい風景に思えるが、実は問題を含んでいる。使用者の身になって、適合させる調整を踏んでいない。そのため補聴器は使われることなく、捨てられてしまう。

 一般に商品は値段の高いものは良く、安いものは悪いといわれる。が、補聴器に関しては、その人の聴こえ方に適合・調整されていなければ、どんな高価な補聴器も意味がなくなってしまう。

 買ってあげた子どもなどの自己満足で、不適合ケースを増やし、結局は補聴器不信者を増やしていることになっている。

 私ども難聴者の会の13年間の「補聴器適合運動」が影響したのか、昨年4月に「薬事法」が改正され、補聴器は管理医療機器に規定された。販売規制も始まり、販売業者に補聴器適合の義務・責任が生じてきている。

 これに呼応して、日本耳鼻咽喉科学会が、「補聴器は医師の診断の元に購入すべき」(当然のことで、欧米先進国では医師が処方する。特にドイツでは、医師が補聴器の適合具合を患者の満足度を含め確認し、サインをして初めて売買となる)と「補聴器相談医」を学会認定で制度化することになっている。

 これに加え、「特定商取引に関する法律等の改正」により、高齢者が訪問販売・電話勧誘販売などで悪質なトラブルに遭った時の救済措置も規定された。補聴器も当然この対象となっている(クーリングオフ制度整備など)。

 このような補聴器の事情と法改正・制度などをよく理解し、高齢難聴者にそれらを踏まえた心の込もった対応を行い、その人生を充実させ、思い通り歩ませてあげるようにしてほしいものである。

  ※2006年(平成18年)4月1日(土) 沖縄タイムス「論壇」へ投稿 掲載文


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  • 投稿日:2009年7月15日 水曜日

公費で補聴器支給を -遅れている聴覚障害者の福祉ー

2009年7月1日 水曜日

 わが沖縄県の補聴器適合運動が、マスメディアのご協力とご支持を得て、この3年間に新聞報道だけでも60回を超え、テレビ・ラジオなどの報道を入れると百回に近づき、わが県ばかりでなく他県でも注目を浴びるようになってきている。

 そして、他県の聴覚障害者や耳鼻咽喉(いんこう)科医のグループなどから、その実情の講演や補聴器相談を依頼されるようになり、他県の聴覚障害者の実情を知るようになって、あらためてわが沖縄県聴覚障害者の福祉がかなり遅れていることを自覚せざるを得なくなっている。

 それは、わが県の聴覚障害者による身体障害者認定数が、私どもの補聴器適合運動による掘り起こしにより、4,500人に近づきつつあるとは言え、人口比からすると、他県のやっと半分であり(平成21年の現在も殆ど変りないようである)、特殊事情のいわゆる「風しん児」約400人を除くと、さらに低いということになる。

 高齢化が他県より進んでいる「長寿世界一」のわが県では、人口比からして、九千~1万人の認定がされているべきであり、従って公費で補聴器が支給されていなければならないわけである。そして、これが「長寿世界一」のわが県の陰の部分、すなわち関係者の間で問題となってきている「難聴によるコミュニケーション障害」により生じやすいといわれている「寝たきり」「認知症」の多さにつながっているとすると、大変な問題だと思う。

 聴覚障害による身体障害児・者の認定は、現在の国の基準では、全くの正常者の聴こえはじめの聴力レベルを「0(零)デシベル」にしたときに、平均聴力レベル70デシベル以上であるが、実際には50デシベル前後より補聴器が必要になってくる人が多いわけで、財政的に余裕のある地方自治体では、医師が「補聴器による補完が必要」と診断すれば、支給されるところもあり、両側で14万円まで支給されるところもると聞く。

 そして、聴覚障害者の諸団体が実態に合わせて、身体障害児・者の認定を50デシベルにするよう要請しているのも、このためである。

 最近、「公的介護保険」の答申が老人保健福祉審議会から提出され、高齢化社会に突入しているわが県ばかりでなく、全国的にも「お年寄りの介護」問題がクローズアップされるようになってきている。

 そして、この問題はまた、介護する側にも多くの問題を投げかけることになろう。すなわち、青・壮年層の中には自分のやりたいことをあきらめて介護に当らなければならない人も出てくることが予想され、生産人口の減少などわが国の根幹を揺るがす問題になり得る状況にある。

 そこで、年齢の進行により、だれでも遅かれ早かれ生じ得るもので、このだれにでも避けられない難聴・コミュニケーション障害を、よく適合した補聴器で補完し、充実した、生きがいのある人生を、独立して生き続けて行っていただくことが、当人は当然のこと、それを支えていくべき周辺の人にとっても、重要なことではないかと考えている。
 
※1996年(平成8年) 5月10日(金) 沖縄タイムス 「論壇」投稿 掲載の文です


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