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医学判定下の補聴器適合ー公費の支給制度もー

2009年9月14日 月曜日

 補聴器に関する「薬事法改正」((厚生労働省)(補聴器の管理医療機器規定、販売規制、販売業者の補聴器適合義務・責任、広告規制など)、また、「特定商取引関する法律等の改正」(経済産業省)(高齢者の訪問・電話勧誘・通信販売などによるトラブルよりの救済など)により補聴器を取り巻く環境が変わってきており、これを難聴者、その家族・関係者、全国民に周知させる必要がある。

 これに呼応して、日本耳鼻咽喉科学会が、「補聴器は医師の診断のもとに購入すべき」と2004(平成16)年5月に決議したことは、当地でも報道された。これを推進する「補聴器相談医」が学会認定で制度化されてきている。

 聞こえなくなったら補聴器販売店に買いに行くことになってしまっているわが沖縄県。専門医の充実が戦後の諸事情で遅れていた当県も、人口比で全国並となり、今回の「補聴器相談医」も耳鼻科医98人中25人が認定されている (氏名は学会のホームページ参照)。医師の診断により、難聴が改善される、またはされ得る例も多く、単に耳あかが詰まっていても難聴となり、これを除去し、補聴器が不要となった人も多い。

 高齢社会になり、70歳以上で約半数が補聴器が必要となる老人性難聴、高齢化率が全国平均19.5%のわが国では10人に2人が高齢者で、約10人に1人が難聴であるが、この老人性難聴は、耳の血管の動脈硬化ということがはっきりしてきているので、これに関連する食事などの改善により、難聴の予防、進行の予防も指導してもらえる。

 もう一つは、重大・重症疾患除外の診察が必要である。音は空気の振動で、それを鼓膜の振動としてとらえ、中耳の3耳小骨(ツチ骨・キヌタ骨・アブミ骨)で内耳に伝え音を感ずるが、これを音として認識するのは大脳の「聞こえの中枢」で、ここまでに内耳より5回神経を乗り継いでいることが分かっているが、内耳よりの一番目の神経(聴神経)に腫瘍ができることがあり、遺伝的に両耳にできる家系が当県にも存在する。私ども耳鼻科医は、難聴患者については、最悪のこの疾患を除外するために診断しているといっても過言ではない。

 身体障害者の認定、補装具(補聴器)の申請には医師の診断書が必要である。国が定めた基準以上の難聴、また音として感じても言葉として理解できることが異なることも多く、言葉の理解度が国が定めた基準以上に悪いと、身体障害者に認定され5年ごとに新しい補聴器を公費で支給してもらえる。

 過日、自費購入補聴器の「医療控除」のための診断書を求められたが、補聴器購入前の診療記録がなければ作成できないので断らざるを得なかった。

 これらをよく理解し、欧米先進国並に、医学判定下の補聴器適合を習慣付け、年を取り聞こえが衰えても適合補聴器を獲得し、亡くなる直前まで自分の思い通りの人生を生きてほしい。

      ※2006年(平成18年) 3月5日(日)沖縄タイムス論壇投稿掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2009年9月14日 月曜日
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