■ 月別アーカイブ: 11月 2009

理想的な補聴器とは ー16年の補聴相談事業より考えるー!?

2009年11月17日 火曜日

 高齢社会に増加する難聴高齢者に対する「補聴相談」に従事し、16年が経過した。

 相変わらず“補聴器を売るため”と誤解され(難聴高齢者が補聴器で如何に苦労させられたかがわかる)、相談者は予想したほどではないが、それでも7~8千人に対応した。

 これら相談者全てに満足してもらえたと思わないが,近年“クチコミ”で徐々に相談者が増えつつあることは喜ばしいことである。

 この16年の「補聴器適合」経験から、“補聴器は難聴者自身が自分の聴え方・感じ方に合わせる”ようにするのが一番良いと考えるようになり、補聴器適合に真剣に取組む人の中にも同様の考えの人が出て来て、すでに自分で自分の聴え方に合わせる補聴器の開発を始めた人もいる。現在はその調節装置が弁当箱ほどで未だ実用にはならないが、現在の携帯電話ぐらいで、画面タッチで音の大小だけでなく、音質の変化、雑音調節、その場ー音楽会では、パーティーではーなど、そして左右の聴え方のバランスなど、また磁気ループなど集団補聴への切り換えなどがあると良い。

 このように考えるのは、一人ひとり聴え方が異なる(高い音が聴えないとかなど)上に、音の歪(ひず)み度が異なる(片方だけで約1万もある音を感じる細胞が障害されてくるとー血流障害などー、音の大きくなり方、濁り方が個々の細胞で異なりー音は聴えても言葉がわからないのはこのためー、それらを総合して聴いているので、一人ひとり異なるだけでなく、その日その日で変わる人も出てくる)ので、いくら”調節の専門家”だからと言っても、合っているかどうかは難聴者本人だけにしかわからないことだからである。

 従って、難聴者の訴えることに対応して調節し、個々の生活の場でそれで良いかを確認し、必要により何回も調整し直し、可成り満足してもらえるように出来るとは思うものの、私共の難聴者の会(沖縄県難聴福祉を考える会)の役員達に言わせると、“自分で調整出来る補聴器があれば、それが一番良い”と即座に言うので、やはり現在の調整システムに必ずしも満足していない、何か“はがゆさ”を感じていることが窺われる!

 高齢者難聴は、耳を養っている血管の動脈硬化と判明、その予防、進行停止、内容の改善(前述の音の歪み)が可能となって来ている。従って、まず悪くしないこと、万一の時には前述の対応で、人間としての人生を全うしてもらいたいものである。


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  • 投稿日:2009年11月17日 火曜日

大切なお年寄りの補聴器ー痴呆を防ぎ、生きがいを確保ー

2009年11月4日 水曜日

 年齢とともに、身体の所々が不自由になってくるように、耳も例外ではなく、70歳台になると約半数の人が、90歳台になるとほとんどの人が補聴器が必要なほど「聴く力」が衰えてくる。

 これを放置しておくと、コミュニケーション障害によって家族、社会から遊離し、生きがいを、生きる意欲を失い、「寝たきり」「痴呆」になりやすくなることが考えられる。

 私どもはこの3年半の活動のデータ分析と2、3の地域での実態調査から、当県では補聴器が必要な人の10~20人に1人しか使っておらず、ほとんどの高齢者が難聴のまま放置されていることが明らかになっている。

 昨年の当県の「長寿世界一宣言」の際に明らかになった当県の長寿社会の「寝たきり」「痴呆」の多さは、この問題と密接に結びついていると考えられる。

 一方、補聴器適合の必要性が、マスメディアの強力な支援・協力もあって、県民に徐々に浸透してきており、県内の補聴器販売店のほとんどがユーザーによく分かる、納得し得る補聴器適合に、徐々に取リ組み出してきていることは喜ばしいことである。

 すなわち、補聴器と同じ単位の音圧レベルによる聴力検査(SPLメーターによる聴力検査)のデータを基に、それに適合する補聴器を選び、同一図面上で その人の聴力検査のデータと選定補聴器の周波数特性(どの高さの音をどのくらいの強さにするかを示す)を対応させ、言葉の理解に必要な音のカバー状況、うるささの原因となる不要な音のカット状況を示して、目でも確かめさせてくれる。

 このようにして、適合させた補聴器を、実際にはどうかを貸し出して確かめさせてくれ、不都合なところは微調整をして、「これなら使える」と当人が納得した時に売買するようになってきている。また音質など、メーカーによって異なる面もあるので、他のメーカーのものも試せるように、各販売店が数メーカーの補聴器を扱うようになってきている。

 また、私どもの沖縄補聴相談センターのほかに、浦添市、宜野湾市の両市の福祉センターでも補聴器に関する無料相談が行われており、医療機関でも琉大病院をはじめ県内7病院の耳鼻咽喉科が補聴器適合外来を設置し、医学判定を含め、もちろん持参不適合補聴器の調整を行うとともに、各補聴器販売店から各メーカーの各種補聴器約百種類を貸し出してもらって、適合補聴器の選定を手助けしている。

 このように、県内の補聴器適合問題は徐々に認識され、改善されつつあり、この状況は北九州市、大分県、岡山県、北海道、島根県など他県、他地域からも注目されつつあることは喜ばしいことである。

 補聴器をめぐる諸問題が徐々にではあるが改善され、「聴こえ」が不自由な高齢者への対応ができるようになりつつあることを認識していただき、適切な対応により充実した活力ある高齢化社会になってほしいと思う。

  ※1996年(H8年)9月19日琉球新報「論壇」投稿 掲載 の文です


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  • 投稿日:2009年11月4日 水曜日
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