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「耳の日」によせて

2010年4月15日 木曜日

 三月三日は「耳の日」である。(これは、三月三日「耳の日」用にまとめた論壇原稿である)近代のコミュニケーション社会における“耳”の重要性を認識し、それを良好に保ち、老化させず、耳の健康増進を意識して戴く日である。

 設定当時に多かった中耳炎を中心に外耳、中耳の伝音器の疾患は衛生・栄養状態の改善などにより、殆ど消失し、幼児期によく起る耳管(鼻・ノドと中耳を繋ぐ管)の未発達により起る“滲出性中耳炎”なども5~6才で大人並になると殆どが正常化してしまう。

 内耳・聴神経の感音器の疾患で、まず生まれつきの聾、先天性風疹症候群聾などは、聴覚による言語大系を獲得する8才頃迄に、特に4才迄に、聴えていた人が聾になればあまり放置しないで、人工内耳埋込み手術にて、会話などに支障を来たさなくなるし、聴神経障害の場合には、内耳より中枢側の蝸牛核に電極を埋め込み聴覚獲得が可能となって来ている。

 高齢化社会に増えて来ている老人性難聴の大部分は、内耳を養っている血管の動脈硬化と判明、その予防、進行停止、“聴えの歪み”の改善が可能となっている。聴えの歪みとは、音を感じる聴えの細胞の障害で、高齢者では、動脈硬化・高脂血症(血液中のコレステロール、中性脂肪などの増加)などで、音の大きくなり方、濁り方が変り、音がまっすぐ入って来なくなるので、音は聴えても言葉が分かりにくくなるが、内耳血流が改善されると聴えの歪みがなくなり言葉が分かり易くなる。

 聴えに不自由し出したら補聴器で補うことになる。我が国では“補聴器不評”で必要な人の10人に1人ぐらいしか使われていないが、“薬事法の改正”“特定商取引に関する法律の改正”更に“補聴器相談医制度”などにより、その人の聴えに合う補聴器を獲得できるようになり、合わなくて使えていない補聴器もその人の聴え方に調整し、8~9割は使用可能になるように出来るので、これによりコミュニケーション良好で、家族・社会と仲良く付き合い、人生終焉直前迄自立、人生をエンジョイしてもらいたいものである。

 耳鳴りは測定できるものが多くなり、それにより障害部位が想定出来ることが多く、対応し易くなって来ている。

 メマイ・フラツキも障害部位診断が進歩し、その対応が充分できるようになっている。

 高齢者難聴の前触れの耳鳴りは中性脂肪の、メマイ・フラツキはコレステロールの増加と関係すると云うデーターもある。

 専門医に相談すると良い。

     野田 寛 : NPO法人「沖縄県難聴福祉を考える会附属診療所                                                補聴相談のひろば」相談医 琉球大学名誉教授


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2010年4月15日 木曜日
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