■ 月別アーカイブ: 8月 2010

増加する高齢難聴者の社会参加に集団補聴装置「磁気ループ」などの整備を

2010年8月25日 水曜日

 補聴器を装着しても、三~五メートル以上離れると聴えない。聴えが悪くなる時には、聴力が悪くなるだけでなく、音の歪(ひず)みが生じ、音の大きくなり方などが変化し、音は聴えても言葉がわからなくなる。従って、講演会などでは、例え補聴器を装着していても、演者の又はスピーカーの五メートル以内にいないと、話がわからない。

 これらに対応する「集団補聴」(マイクの音を補聴装置に直接入れる)装置には、磁気ループ、赤外線、FMの三方式がある。

 先般、この三方式を同時使用して比較検討したが、赤外線方式は赤外線が遮断されたりすると聴えなくなるし、FMはその人に適合したFM補聴器を使用している人には良いが、その場ですぐ聴えるようにするのが難しい。

 その点、磁気ループは、その場で自分の補聴器を切り換えて(日本の補聴器の約半分にこの切換装置―Tコイル―あり)、又は貸し出し補聴器ですぐ雑音もなく、クリアに聴える。

 世界の主流は磁気ループ(国際的には「ヒアリング・ループ」)で、昨年九月スイスで磁気ループの国際会議が開かれ欧米先進十五ヶ国(日本は補聴器の普及も悪く、対象外)で、�補聴器や人工内耳など補聴装置には磁気ループ対応のTコイルを装備する、�耳鼻科専門医など関係者は、難聴者に磁気ループの利便性について説明する、�公共施設に磁気ループ設置を義務付ける(米国数州では法律化されている)、�駅、銀行、病院、役所等の窓口に磁気ループ設置などが決議された由、アメリカ大使館の職員より知らされた。

 この磁気ループについては、当県は私共十七年余の活動により先進県である、と云っても市民会館、劇場、講演会場また市町村議会場、役所の福祉課窓口など、約五十ヶ所、また約二百家庭(テレビ、電話など)に設置されているが、家庭をのぞいては殆んど使用されていないようだ。

 設置された当初はともかく、担当者が変わると、設置してあることも知らず、当然どう操作して良いかわからなくなっているのが殆んどである。

 また、貸し出し補聴器整備、補聴器の磁気ループ用への切り換え、またボリューム調整など当初は指導員の設置が必要と感じている。

 まず知識の普及、使用頻度を増し、バスなどへの設置など、高齢者が聴こえなくなっても、自立し、人生をエンジョイし、人間としての人生を全うできるようにしたいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医 野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2010年8月25日 水曜日

正しい補聴器の選び方―音質、自分の耳で確かめて―

2010年8月17日 火曜日

 補聴器の評判が悪く、高齢化社会に入り難聴高齢者が増加しているのに、ほとんど使われず、聞こえないままで人生を狂わせている人が多い。私共の活動も補聴器を売るためと誤解され、活用されていないのは非常に残念である。

 私共の会は難聴者の会で、NPO法人に認証され、県の指導により日本で唯一の「診療所を有するNPO法人」である。診療所は「保険診療」であるが、ほか11ヵ所の社会福祉協議会(石垣市含む)および老人福祉センターは、あらかじめ中央保健所を通じ県知事に届け出て、出張診療として従来通り無料相談で行えるようにしていただいている。

 また、県立中部病院、ちゅら海クリニック(北部医師会病院)、久米島病院、与論病院で診療を行っており、これは保険診療である。

 さらに、老人クラブ、自治会などに「耳の健康講話と聴力検査」(中央保健所を通じ県知事に届け出る)を、数年前から「高齢難聴者の早期発見・早期対応」(いよいよ聞こえが悪くなってからでは、生きる自信・意欲を失うためか、補聴器を使いこなせないし、使う意欲がなくなる)、昨年後半より「百歳を超しても補聴器不要としよう」(高齢者難聴は内耳動脈の硬化と判明、従って、予防・進行停止―補聴器も基本的な聞こえが良い方がうまく使える―、音のひずみの改善―動脈硬化による、血流障害による聞こえの細胞の障害が改善され、音のゆがみ、すなわち音の濁り方、大きくなり方が改善され、言葉がよく分かるようになる。すなわち「音は聞こえるが言葉がわからない」が改善される―)を題目に希望された県内外180ヵ所で行い、(県、県社会福祉協議会などの推薦により各種助成団体より補助金を受けていることもあり無料)、その結果で一人一人を指導する。

 診療所を中心に、前記医療機関、社会福祉協議会、老人福祉センターなどで行っている「補聴相談」は、2~4週単位で補聴器を貸し出し、必要か否か、家に帰ると音の環境が異なるので、そこでどう聞こえたかにより調整を繰り返し、またメーカーにより音質が異なるので、自分に合うかどうかを聞き比べを繰り返し、従って人によっては10回以上通所される方もあり、自分に合う補聴器の選び方を勉強してもらっている。

 補聴器が合っているか否かは本人にしか分からない。特に内耳血流の状況により、音のひずみなどその日その日で変わる人もあり、従って、私共の難聴会員全員が強く待ち望んでいるのは、自分で調節できる補聴器の出現である。

NPO法人沖縄県難聴福祉を考える会附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医、琉球大学名誉教授  野田 寛
2010年7月15日(木曜日)琉球新報、論壇 掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2010年8月17日 火曜日

不要補聴器のリサイクルを!

2010年8月2日 月曜日

 先般、私共“沖縄県難聴福祉を考える会”の記事を読んで、ニ、三の高齢者より「補聴器のリサイクル」が出来ないものかと、要望があった。補聴器が高価で、年金暮らしの高齢者には購入が困難な人も多いと思われる。

 私共の“補聴器適合運動”の初期の頃、“補聴器相談センター”の時代(平成六年四月)に県内両紙に取り上げて戴き、不要の補聴器の提供を全県にお願いして戴いたが、あまり集まらず(半年間で約十個、琉球新報報道・同年十月三日)、その活用も一部に留まっている。

 高齢社会が進行、難聴高齢者が増加(七十歳以上で約半数、従って全国で約一千万人、当県でも約十万人と推定される)しているのに、補聴器の評判が悪く、必要な人の五~十人に一人、当県では十~二十人に一人(当県某市の実態調査から)と殆んど使われて居らず、膨大な数の難聴高齢者の殆んどは聴こえないままでいるため、コミュニケーション障害より家族・社会より遊離・孤立し、閉じこもり・寝たきり・認知症など、人間として生きていけなくなってしまっている現実がある。

 両耳の聴力が七十デシベル以上の高度難聴(正常聴力は零―ゼロデシベル―)、又は音は聴こえても言葉がわからない、即ち、言葉の理解力が両耳共に五十%以下の場合には、身体障害者に認定され、補聴器の支給を受けられるが、五十デシベル前後から補聴器を必要とするようになるので、福祉に該当せず、自費で購入しなければならない人の中には、経済的に困難な人も出てくる。

 特に生活扶助を受けている方の場合、補聴器の援助金がでるのは、当県では一市のみなので、それに該当しないと聴こえないままでいることにならざるを得ない。私共の診療所では、貸出し補聴器で一部対応してはいるが、それにも限界がある。

 そこで、私共もリサイクルの補聴器があればと思い続けてはいるが、現実はきびしい。

 購入したが使えなくて、三~四個タンスの中にしまってある補聴器は、販売店に使えるようになるまで通う(薬事法で「不満に対応する」ことが規定されている)ことにより解消するが、新調したとかなどで不要になった補聴器もあるはずなので、提供して戴けると、元気になり、生きがいを持てるようになり、幸せになる難聴高齢者が増えて来ると思われるので、是非、再度検討して戴きたいとお願いする次第である。

NPO法人「沖縄県難聴福祉を考える会附属診療所 補聴相談のひろば」
相談医 野田 寛 (琉大名誉教授)


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  • 投稿日:2010年8月2日 月曜日
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