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高齢難聴には早期の対応を

2010年10月25日 月曜日

 高齢化社会となり、70歳以上で約半数に生ずる高齢難聴の対応は、十分なのだろうか?

 高齢化率が20%を越したわが国では、高齢難聴者は全国で約1千万人、当県でも約10万人と推計される。

 この膨大な数の高齢難聴者で、年間の補聴器販売台数などから推計して、補聴器装用者は10~20%、当県では5~10%(当県某市実態調査で実証)と、補聴器不信も手伝って、ほとんど使われておらず、ほとんどの高齢難聴者は“聴こえないままでいる”と推測される。

 年齢が進んで聴こえないままでいると、コミュニケーション障害により、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物である人間は生きて行く自信・意欲を失い“閉じこもり”、“寝たきり”、“認知症”、などに陥っていく可能性が高くなる。

 従って、この膨大な数の高齢難聴者の2~3割は、閉じこもり、寝たきり、認知症など“人間として生きていない”のではないか。

 寝たきり、認知症などに陥ると、誰が介護するのか?その費用は?ということになり、税金でまかなうとすると、増税にならざるを得なくなる。

 このように、高齢難聴は個人々々の問題だけでなく、大きな社会問題になってきていることを認識し、国全体で対応すべき問題であることを国民全体が自覚すべきなのである。

 近年、高齢難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化と判明、従ってその“予防”、“進行停止”、“聴こえの内容の改善”(聴こえのひずみが改善され、言葉がわかりやすくなる)などが可能となり、いくつかの市町村がこれを住民に理解させ、聴力検査を住民検診に組み込むことを考え出していることは喜ばしい。

 さらに高齢難聴には“早期発見”、“早期対応”が重要である。いよいよ聴こえが悪くなってからでは、補聴器をうまく使いこなせないし、使う意欲がなくなってしまうケースが多い。前述の如く、コミュニケーション障害から生きる自信・意欲を失ってしまうためである。

 高齢になると誰にでも起こり得る難聴、これを十分理解・認識し、すべての高齢者が人生をエンジョイし、寝たきり・認知症などのない無駄な出費不要の社会にしたいものである。

NPO法人「沖縄県難聴福祉を考える会附属診療所 補聴相談のひろば」
相談医、野田 寛(琉球大学名誉教授)
平成22年10月23日 沖縄タイムス 寄稿 掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2010年10月25日 月曜日
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