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高齢難聴は予防も出来るし、適合補聴器対応で充実した人生を歩める

2011年1月11日 火曜日

 補聴器の評判が非常に悪い。“補聴器はガーガーうるさいばかりで、頭が痛くなり、言葉がわからないからイラナイ!”と、先般県内ニ紙に投稿させて戴いたように、殆んど使われていない。

 これは、我国に補聴器を一人ひとり異なる聴え方(音質を含め)に適合・調整できていないからで、日本の耳鼻科医がこの適正なシステム形成に指導性を発揮して来なかったためと反省、十七年前より当問題に取り組んでいるが、県民、国民に充分理解されず、“補聴器を売るため”と誤解されているようで、今迄の経緯から、その気持はよくわかるが、効果を上げ得ていないのは誠に残念である。

 高齢社会で高齢難聴者が年々増加して行く中(七十歳以上で約半数に生じる。従って、全国で約一千万人、当県では約十万人)、補聴器を活用できないまま殆んどがコミュニケーション障害から“閉じ込もり”、“寝たきり”、“認知症”などに追いやられていることに、非常に責任を感じると共に、この膨大な数の人々(前記高齢難聴者の約3割)の介護を考えると、介護人の増員、介護費の増加など増税にならざるを得ない。今や高齢難聴は個人々々の問題であると同時に、若者を含め国民全体の問題であることを認識し、速やかな対応をすべき段階に来ている。

 近年、高齢難聴は耳を養う血管の動脈硬化・血流障害によることが判明、今や日本人全体がメタボリック症候群と云うべき状況で、この延長線上にあることを認識し、高齢難聴の現実の対応と共に、今後この増加を止めるべく対応すべきで、このためニ、三の市町村が、高齢者の聴力検査を住民検診に組み込むなど検討し始めていることは喜ばしい。

 既に難聴になっている方には早期対応が重要で、いよいよ聴えが悪くなってからでは人生に自信・意欲を失ってくるため、補聴器を使いこなせず、その意欲がないことが多い。

 補聴器は一人ひとり異なる聴え方を正確に測定・分析し、補聴器周波数特性(現在その補聴器がどの高さの音を、どうカバーしているか測定できる)と対応させ、従って目で見ることができるので、納得して戴きながら適合・調整ができる。メーカーにより音質が異なるので、貸し出しを繰り返しながら、自分の聴えの感覚に合い、自分の生活環境音に調整された補聴器の選択をすることができる。

 自分の人生、これらを充分理解・対応し、“人間としての人生を全う”してもらいたい。

NPO法人沖縄県難聴福祉を考える会附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医 野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2011年1月11日 火曜日
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