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高齢者の聴覚管理の重要性

2011年8月9日 火曜日

 十八年前より開始した、私共の「補聴器適合運動」(補聴器適合制度が確立されていない我国で、高齢社会に増加する高齢難聴者が適合補聴器が得られず、聴えないままでいることにより、コミュニケーション障害から、生きる自信・意欲を失い、閉じこもり、寝たきり、認知症などになり、人生を狂わせてしまうので)、特に最近の「高齢難聴の予防・進行停止・言葉の理解力の改善」などを衆知させる啓蒙活動などは、コミュニケーション社会の当県では関心を持たれると思っていたが、全般に関心が薄いようである。
 一方、私共NPO法人の附属診療所「補聴相談のひろば」の方は、関心・理解を深めた相談者が徐々にではあるが、定期的チェックを中心に増え始めている。
 そして、私共の聴覚分析や補聴器適合の結果に基づき、どのように対応すべきかを理解し、真剣に取り組み出してきているようで、約九割の相談者がここ数年難聴が進まなくなっただけでなく、半数近くが音の歪みが改善し出し(代表的な音について、どのくらい歪んでいるか測定出来る)、言葉の理解力の改善が平行(五十音による語音明瞭度検査にて測定)、相談者のニコニコ顔と共に改善していることが当方にも実感させられる。
 補聴器は、基本的には音を大きくするだけで、音の歪みは直さないので、内耳の血流を改善させ、言葉の理解力を改善させるには、本人の適切な心掛けが重要である。
 二十年前に判明した、血中の中性脂肪高値で起り易い耳鳴りが、投薬なしで約三割の患者で消失、やはり「食事のコントロール」と「運動の励行」が如何に重要かが窺われる。
ある離島の病院では、コレステロールが高くなると起り易い「メマイ」、「ふらつき」が改善するので、むしろ難聴患者さんより多くなりつつある。聴覚分析による内耳血流障害の状態から、前庭・半規管の平衡感覚細胞の機能状態が類推されるので、それに対応し、改善するからであろう。従って、診察時には必ず血液検査と内服薬剤のデーターを持参してもらい、検討の参考にしている。
 この十八年間、難聴相談者に集中して対応し、年々進行して行く高齢難聴(老人性難聴)が、進行が止められ、聴えの内容が良くなることが判明し、以前は年々悪くなる難聴を、気落させないよう、どう説明しようかと難渋していたのがなくなり、希望がもてる診察に変り、ホッとしている昨今である。

   特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
   附属診療所 「補聴相談のひろば」 相談医  野田 寛(琉球大学名誉教授)

   2011年(平成23年)8月9日火曜日 琉球新報掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2011年8月9日 火曜日
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