■ 月別アーカイブ: 11月 2011

耳鳴りは改善、消失が可能

2011年11月25日 金曜日

 六十才台後半から、半数近くが耳鳴りを訴えるようになるようである。その音は金属音や諸雑音など色々で、音楽が聴えると云う人もある。全国各地で耳鳴りの表現を調査した人が居り、地域々々でも、耳鳴りの表現も異なり、それこそ、千差万別であったという。
 この耳鳴りの八十~九十%は、標準純音聴力検査音に似ていると、その音の高低、大きさを測定することができ、耳の構造の断面図の内耳(「蝸牛」と呼ばれ、牛の角のように二回転半している管の中に、音を感じる細胞が外側三列、内側一列の四列で、中耳側(がわ)の音の振動の取り入れ口より、高い音を受け取る細胞から段々と低い音を受け取る細胞が蝸牛の先端まで、ピアノの鍵盤のように並んでいる)のどの部位の細胞による障害か図示できる。これにより、他の障害による耳鳴り、例えば「聴神経腫瘍」などと、他の聴覚分析を加え鑑別され得る。
 中・高年の耳鳴りの大部分は、高脂血症(血液中のコレステロール、中性脂肪など脂質系物質が増えてくる状態)、特に中性脂肪が高値になると起こり易いことが、二十年以上前から判明して居り、これを低下させることにより、発症三~五年以内の耳鳴りは九十%以上が消失、五~十年以上経過していると、消失はしないが、静かになり、気にならなくなったと云う人がやはり九十%以上である。
 そこで、現在私共のNPO法人の附属診療所では、この耳鳴りやメマイ・フラツキ(総コレステロールの高値で起こり易いことが十年以上前より判明している)を、高齢者難聴(老人性難聴)(耳を養っている血管の動脈硬化によるものが大部分)の前触れととらえ、食事のコントロール及び運動の励行にて、これを予防、難聴となった方にはそれ以上進行させないよう(同じ補聴器を使うのでも、基本的な聴えが良い方が補聴器をうまく使える)、血液検査の結果や内服薬の内容を持参してもらい検討し、指導している。
小生の西独時代の同僚が、約二十年前より「耳鳴り専門病院」を運営、常に二~三百名が入院しているという。そこでは、まず「耳鳴り」の障害部位診断を行い、前述の聴神経腫瘍など問題のあるものでなければ、心療内科と共に心理療法を行い、二~三週で殆んどが気にしなくなると云う。
 これを話すと、日本人は精神コントロールがとれ易いからか、納得する人が多いようだ。
 このように、耳鳴りの対応は可能である。

NPO法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2011年11月25日 金曜日

難聴高齢者にわかり易い声、わかりにくい声

2011年11月4日 金曜日

 高齢社会が進行、難聴高齢者が増えている。一言、二言で難聴か否かわかるはずなので、なるたけ真正面より、口唇が見えるようにして、ハッキリ、ユックリ話してあげると良い。
 一方、“わかり易い声”と小生のように“わかりにくい声”があり、難聴の方々より、特に電話などでは、誰かに代わってほしいとよく言われる。
振り返ってみると、小生は“士族の長男”として生れ、“男は一生に三言”と、しゃべってはいけないと戦前迄は教育されて来た。
従って、発声法など、意識したことはなかったが、戦後になって世の中が変っても、無意識のうちに“自分の発声が悪い”と認識していたのであろう、“人と話す”のを避け、人前で話すことなどが絶対に起らないよう行動していたが、教授職を拝命して難儀が始った。
 しかし、正しい発声はオペラ歌手などのように、生理的発声法の訓練を受けないと獲得できず、従って一般の人は親の声や周囲の人の声をまねただけなので、九十九%以上の人は大かれ少なかれ発声法が間違って居り、わかりにくい声になり易いし、声帯炎、声帯ポリープなどノドの疾患を起し易くなるが、発声法を矯正するだけで、声帯ポリープなどが切除しなくても消失してしまうことが多い。
 一方、難聴者にも、“音は聴えても、言葉がわからない”と云う現象が大かれ少なかれ起って居り、高齢者難聴に特徴的と云えるが、或る難聴者はこのためモノレールの“古島”のアナウンスが“イリジマ”と聴えるという。これは、内耳の血流障害による音を感じる細胞の障害による“音の歪み”によるもので、どの程度“歪んでいるか”は代表的な音について検査できるし、その全体像として“語音明瞭度検査”(五十音でどのくらい正解できるかの検査)にてその理解度が判定できる(この音の歪みは、内耳の血流を改善させると改善されることも判明している)。
 そこで、まず高齢者には「食事のコントロールと運動の励行」により難聴にならないように(出来れば四~五十才台より心掛けると良い)、そして、内耳の血流を良くすることにより言葉がわかり易く出来る。
わかり易い言葉を話すには、小児期より発声法を訓練する時間を教育の中に取り入れること、これにより高齢難聴者対応だけでなく、自己を主張しないと通じない近代国際社会を生き抜くために、話法の習得と共に非常に重要なことと実感する昨今である。

NPO法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2011年11月4日 金曜日
最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー