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【論壇】集団補聴・磁気ループの社会整備にて、高齢難聴者の社会参加を!

2013年12月9日 月曜日

 「磁気ループ」とは、マイクの声を直接補聴器の中に入れる方法で、欧米先進国では、集会場、講演会場、劇場、音楽会場などに、また、役所、病院、銀行などの窓口に設置されているのが常識で、難聴になり、補聴器を使用するようになっても、人生を楽しみ、付き添いなしで、用事を済ませられるように、即ち自立して生活できるようになっている。
 高齢化率が二十%を越し、報道されたように高齢者が三千万人を越した我国では、その約半数が難聴なので、全国で千四~五百万人、当県では十四~五万人と膨大な数で、補聴器不評のため、その八十~九十%、当県では九十~九十五%が補聴器不使用で、聴えないままで居り、コミュニケーション障害より、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物である人間は生きがい、生きる意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症など、要介護状態になる可能性が高くなる(前述の高齢難聴者の三~四割は寝たきり、認知症などに落ち込り、時々刻々増えて行くので、御本人が気の毒であるだけでなく、介護費・医療費が増加し、増税にならざるを得ない状況にある)。
 二年前に開催された「国際磁気ループ会議」(先進十五国の中に、日本は入っていない―補聴器が普及していないため)で決定されたこと、①補聴装置(人工内耳を含め)に磁気ループ対応のTコイルつける―日本の補聴器には約半分に装着)、②磁気ループの利便性を周知させる、③公共施設への設置の義務化(米国数州は法律で制定)、④駅、空港、交通機関に設置を推進、などが決議されている。
 近年、磁気ループなどを応用し易い装置が比較的安価で販売され出したので、特にテレビ、電話を中心に応用で来るよう貸し出し、確認して、購入してもらうようにしている。
 補聴器も、ただつければ良いと云うものではない。一人ひとり聴え方も異なるし、メーカーにより音質も異なるので、どれが良いかは、本人にしかわからない。貸し出しにて、確認しながら決定する必要がある。
 近年、高齢難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化による血液の流れの障害と判明、予防が可能であると共に、高齢者特有の「音は聴えるが言葉がわからない」と云う音の歪(ひず)みも“内耳血流障害”によるもので、その測定が可能で、改善も可能なので、年齢が進んで難聴になっても、適合補聴器を獲得、磁気ループなど周辺機器を活用、楽しく、人生を全うしてもらいたいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2013年12月9日 月曜日
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