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【論壇】補聴器適合運動二十年-コミュニケーション障害による高齢難聴者の寝たきり、認知症を予防できているのか!?

2014年7月11日 金曜日

 平成五年三月三日「耳の日」よりマスメディアの協力を得て始めた「補聴器適合運動」、この三月で二十年となる。しかし県民に関心がないまま、高齢化が進み、高齢化率が二十%を越し高齢者が三千万人以上となり、その半数が難聴なので全国で一千四~五百万人、当県でも十四~五万人と増加、補聴器不信で、必要な人の十~二十人に一人、全国で五~十人に一人と使用されず、殆んどの高齢難聴者は聴えないまま、コミュニケーション障害より家族・社会より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい・生きる意欲を失い、「閉じ込もり」「寝たきり」「認知症」など要介護状態となる。個々の家庭の片隅で放置されたり、施設に収容されたりで見捨てられているのは非常に気の毒である。と同時に、介護費・医療費の増加が増税・国債増加と、国民生活を圧迫し始めているのは、非常に残念である。
 この運動を行っている間に、高齢難聴者の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化による血液の流れの障害と判明、従って予防が可能(私共最近のスローガンは、「百歳を越しても補聴器不要としよう!」)、難聴となっても進行停止が可能(私共の患者さんの八~九十%は、この七~八年難聴が進んでいない。同じ補聴器を使用するのでも、基本的な聴えが良い方が補聴器をうまく使えるし、買い替えが殆んど不要となる―補聴器は大事に使えば十~二十年以上使える)、そして「音の歪(ひずみ)」も改善され得ることもわかって来た。
 この「音の歪」とは、耳の聴えの細胞の障害により、即ち動脈硬化や高脂血症などにより聴えの細胞に充分血液が流れなくなり、酸素・栄養が充分行かないと起り、音の大きくなり方、濁り方が変わり、即ち正常の人が“一”大きくなったと感じるのが二~三倍、場合によっては五~十倍に感じられるようになる現象で、この度合いは測定され得るし、音が真直に入って来なくなるので、「音は聴えるが、言葉がわからなくなる」現象で、これも言葉の理解力の検査で測定が可能で、高齢難聴者の特徴の一つになっている。
 このように、まず難聴にならないように、聴えが悪くなるようであれば“早期発見・早期対応”が重要で、これにて人生がそのまま継続、人によっては発展もさせられ、殆んどの高齢者が亡る直前まで自立、人生をエンジョイ、人間としての人生を全うすることが可能で、介護費が殆んど不要となり、増税が不要となるよう運動を続けている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2014年7月11日 金曜日
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