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【論壇】高齢難聴者の放置は閉じ込もり、寝たきり、認知症に導く!

2014年8月8日 金曜日

 
 厚生労働省研究班によると、認知症は高齢者の十五%、四~五百万人と推計されると報道された。この推計値は私共難聴者の集りである「特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会」が中心に二十年前より行って来た「補聴器適合運動」で唱えて来た「高齢者難聴の放置が閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がる」と推計して来た数値とほぼ一致する。即ち、高齢化率が二十%を越した我国では三千万人を越す高齢者が存在、その半数が難聴(七十才以上で約半数が補聴器を必要な程になる)なので、全国で一千万人~千四、五百万人、当県で十万人~十四、五万人が難聴で、しかし補聴器使用者は全国で十~二十%、当県で五~十%と殆んど使われて居らず、殆んどが聴こえないままでいるので、コミュニケーション障害より、家族・社会から遊離・孤立し、精神的動物である人間は生きがい、生きる意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症になる可能性が高くなり、恐らく前記推計の高齢難聴者の3~4割は、即ち四~五百万人が、閉じ込もり、寝たきり、認知症など、すでに人間として生きていない状態にあると推計して来た。
 昨年、九州の某認知症施設で、収容認知症の八十%が難聴であったと、認知症と難聴と関係があるのではと問い合わせて来たことがあったが、恐らく“高齢難聴者の放置”が、前述の如く閉じ込もり、寝たきり、認知症に繋がる、即ち認知症の大部分は難聴の放置と関係があるのではないかと考えている。
 日本で補聴器が殆んど使用されていないのは、一人一人異なる聴え方に補聴器を適合させる制度が確立されていないし、補聴器の使い方の指導(装用指導)がされていないからである。メーカーによって音質も異なるので、どの補聴器が良いか一人一人異なる。また特に高齢者は小さい機器の補聴器の使い方をトレーニングしないと、一度だけでは使いこなせない。ドイツの補聴器販売店には数室“訓練室”があり、使いこなせる迄指導する。
これを実現するため活動をして来たが、殆んど進展しないのは何故か?残念である。
 近年、この高齢者難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化と判明、従って予防が可能、“百歳を越しても補聴器不要”が可能、難聴停止も重要(補聴器を使うのに聴えが良い方がうまく使える)、そして近年、内耳血流が改善すると、“音の歪み”が改善、言葉がわかり易くなることも可能となって来ている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)

琉球新報にて平成25年6月12日掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2014年8月8日 金曜日
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