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【論壇】高齢難聴者の放置は認知症に導く

2016年12月19日 月曜日

 近年、高齢化社会が進行して、高齢者の認知症の増加が世間の話題となって来ている。この高齢者認知症と高齢者難聴の放置との関連は従来から云われて来ているが、これだけ多くなってくると、国民全体が認識せざるを得ないであろう。

 年と共に、聴こえが衰える人が多くなる。七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどの人が補聴器を必要とするようになる。早いか遅いか個人差はあるが、殆んどの人がなる。

 そして、その数は膨大である。高齢化率が二十%を越し、七十才以上が三千万人を越した我国では、高齢難聴者は千五百万人以上、当県でも十五万人以上と云うことになる。

 しかし、補聴器適合制度が確立されていない我国では、必要な人の五~十人に一人(当県では十~二十人に一人)しか補聴器を活用していない。年齢が進んで聴えないままでいると、コミュニケーション障害より、家族や社会より遊離・孤立し、精神的動物の人間は生きて行く自信・意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症など要介護状態になる。

 前述の推計値からすると、高齢難聴者の三~四割、即ち、四~六百万人、当県でも四~六万人と膨大な数で、個々の家庭で対応出来ない状況になりつつある現在、地域社会が対応することとなり、その費用は何処から?従って増税で対応することになろう!
私共の「補聴器適合運動」はすでに二十年を越すが、関心を持った九州のいくつかの「認知症施設」で聴力検査を行って、八十%以上が難聴と報告を受けている。

 私共難聴者の会、特定非営利活動(NPO)法人・沖縄県難聴福祉を考える会の附属診療所「補聴相談のひろば」の患者さんの三分の一は、家族が私共の「ホームページ」などを見て、難聴の始った親御さんを連れられて来られるが、無表情で、恐らくイヤイヤ連れて来られた難聴高齢者が補聴器で音・言葉が聴えてくると、その途端表情がガラリと明るく変わり、生きている人間の顔となり、人間性を取り戻す瞬間を何度も目にすると、この問題の重要性を強く認識することになろう。

 私共が提唱して来ているように、高齢者難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化、従って予防・進行停止・改善が可能で、「百歳を越しても補聴器不要に」出来る。これを充分理解し、高齢者難聴の早期発見・早期対応を、そして四~五十才台以上よりは難聴の予防を意識して、生活してほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2016年12月19日 月曜日
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