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【論壇】耳鳴りは難聴の前触れ!?

2017年1月16日 月曜日

 五~六十歳頃より、耳鳴を訴える人が多くなる。しかし、耳鳴は本人にしか聴こえないので、研究がなかなか進まない。(他人に聴こえる“他覚的耳鳴”は、原因が解ることが多いので、適切な加療が可能である)。

 小生が現役時代、小生自身の体験から、耳鳴が内耳の血流障害が改善すると軽減・消失するので、耳鳴患者約三百名にその可能性を説明して血液検査を行い、中性脂肪が高いと耳鳴が起こり易いこと、そしてそれを薬で下げると、三~四割が消失、五~六割は軽くなって気にならなくなった。

 現在、小生が相談医を務める「特定非営利活動(NPО)法人“沖縄県難聴福祉を考える会”附属診療所“補聴相談のひろば”」の患者さんには、この“高齢者難聴(耳鳴あれば全員測定)”と動脈硬化による“内耳血流障害”との関連を説明、“食事のコントロール”と“運動の励行”を勧めているが、その結果八割以上の患者さんの難聴が進まなくなり、半数近くの耳鳴が消失している(補聴器先進国ドイツでは一年に一度の補聴器チェックが法律になっている。高カロリー食の多いドイツ人では、動脈硬化が進み、難聴が進むので、補聴器調整が必要となる)。そこで、当診療所では、半年に一度の聴覚のチェックを行い「音の歪み度」の検討などから、悪化傾向にあれば、厳重注意をすることにしている(一度駄目になった細胞は回復しないので)。

 耳鳴は、聴力検査の検査音にてその高さと大きさを測定できると、内耳のどの部位の細胞の障害によるか図示できる。即ち、どの辺の血流障害で起っているか、そして約半数の患者さんの耳鳴は、その障害部位がその日により異なることもわかってきている。

 しかし、「耳鳴」に関して、日本人の感じ方、対応の仕方が、他人種と異なるのかとも考えられる。小生のドイツ時代の同僚が、「耳鳴専門病院」を開設、常に2~300人が入院していると云う(沖縄や日本の学会で数回講演)。そこで行っていることは、まず診断、特に治療すべき疾患がない時は、心療内科の医師と共に「心理療法」を行い、2~3週間で殆どが満足して(?)退院する由、ヨーロッパでは大学病院でも行うところが出てきている!

 このことを「耳鳴を何とかしてほしい」と云う日本の患者さんに話すと、特に反応なく、心療内科医を紹介してほしいもなく、日本人にとって耳鳴とは生活を左右するものではなく、個人差と同様、人種差を感じている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年1月16日 月曜日
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