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【論壇】高齢難聴者の放置は認知症を招く

2017年3月8日 水曜日

 高齢化社会が進行、高齢者難聴が増えている。七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどが補聴器を必要とするようになる。早いか遅いか個人差があるが、殆んどの人に起る。

 ところが、我国には一人ひとり異なる聴え方に、補聴器を合わせる制度が確立されていないため、自分に適した補聴器が得られず、聴えないままでいる高齢者難聴が多い。

 高齢化率が二十%を越し、七十才以上が三千万人をはるかに越している我国では、全国で二千万人に近い高齢難聴者が存在し、その三~四割は聴えないままでいるので、コミュニケーション障害より、社会・家族より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい・生きる意欲を失い、「閉じ込もり」「寝たきり」「認知症」など、人間として生きて行けなくなり、要介護状態になる人が増えて来ている事を実感されている方が多いと思われる。

 九州のいくつかの認知症の施設での調査を総合すると、日本の認知症の約八割は高齢者難聴の放置によるもので、アルツハイマーなど本来の認知症は二十%前後と思われる。

 近年、高齢者難聴の大部分は内耳を養っている血管の動脈硬化によることがハッキリして来た。従って、健康管理を行い、動脈硬化にならないように、進行させないように指導しているので、私共の診療所の難聴患者の八十%は、難聴が進行はなくなったし、その前触れであり、動脈硬化による内耳の血流障害の度合いを反映する耳鳴り、メマイ・フラツキがなくなる患者さんが増えてきている。
 
 このような指導は、当法人の活動として行っている講演会や補聴相談会以外にも、希望する老人クラブや自治会などで、無料の講話と全員の聴力検査を行い、一人ひとり指導をするようにして居り、すでに三百ヶ所以上で行い、その効果を上げつつある。

 前述の如く、高齢者難聴の発症・悪化は、耳を養っている血管の動脈硬化によるものが大部分なので、食事のコントロールと運動の励行が重要で、また定期的な聴力検査(聴えのレベルと内容―音は聴えても言葉がわからない。これは内耳動脈の血流障害で起り、その程度は測定可能で、言葉の検査でその理解度が判定できる)を行い、悪化させないように、一部改善も可能である。

 長寿社会、百才は当たり前、百二十才迄は可能性があるので、それを人間として活発に生き抜いて行ける社会にしなければと考える昨今である。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年3月8日 水曜日
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