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【論壇】集団補聴装置・磁気ループの社会整備の重要性

2017年4月7日 金曜日

 マイクの声を直接“補聴器”の中に入れる〝磁気ループ〟と云う集団補聴装置がある。

 我国では難聴者の集まりなどで使われるが、殆んど知られていない。しかし、欧米先進国では、集会場、講演会場、劇場、音楽会場などに設置されているのが常識で、難聴になってもお芝居などを楽しんだり、また、役所、銀行、病院などの窓口に設置されているので、一人で物事を処理出来るようになっていて、難聴者が自立できるようになっている。

 高齢社会が進行、高齢難聴者が急増の現在、この社会整備は非常に重要である。

 集団補聴装置には、磁気ループ以外に、赤外線方式やFM方式もあるが、それぞれ個々に高価な特殊な補聴装置が必要で、磁気ループでは、一般に使われている補聴器を磁気ループ用に切り替えれば良い(日本の補聴器の半分以上に切り替え装置がついている)ので、安価で早道である。

 国際磁気ループ会議が先進十五カ国を中心に、毎年開かれているが、補聴器の普及が悪い我国にお呼びがかからず、日本の学会も関心がないようで出席を要望しているが、未だに代表を送れない状況にある。

 この国際会議が二〇〇九年の会議で、①補聴器や人工内耳には、磁気ループ対応の“Tコイル”を装置すること、②公共施設に磁気ループ対応装置を設置することを義務化する(いくつかの先進国では、法律で決めている)、③耳鼻咽喉科医師並びにその関連者は、“磁気ループの利便性”を説明すること、④駅など交通機関の案内に磁気ループを活用すること、などを決定している。

 “磁気”というと、心臓のペースメーカーに影響するのではと心配する人が多いが、極く微量な磁気なので、影響は全くなく、安全なものである。

 この磁気ループは、テレビや電話などに設置することにより、家族と一緒にテレビを楽しんだり、核家族が多くなった現在、電話での連絡が可能となる(費用は一万円前後)。

 私共の診療所の待合室には、当法人の役員が、経験者として補聴器装用指導を行ったり、磁気ループなどの説明・指導・貸し出しをして、実際に活用出来るかを確認してもらったり、必要により設置協力を行っている。

 最近、この磁気ループをバスに設置することが可能となって来たので、観光バスに設置し、沖縄観光の推進の一助にしてはと、関係者と検討中である。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年4月7日 金曜日
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