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【論壇】高齢難聴に特徴的な音の歪みー音は聴えるが言葉がわからないー

2018年1月18日 木曜日

 年と共に聴えが衰えてくる。早いか遅いか個人差があるが、殆どの人に起る。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆んどが補聴器を必要とするようになる。

 この大部分は、内耳を養っている血管の血流障害で、動脈硬化が進むと聴えが悪くなるだけではなく、言葉がわかりにくくなる。
補聴器は音を大きくはするが、この言葉の解りにくさ―音の歪み―は改善しない。

 この音の歪みは、内耳への血流障害により、聴えの細胞の機能障害が起り、音の大きくなり方、濁り方が変わるためである。正常な人が「1」大きくなったなと感じる音が、二~三倍、場合によっては五~十倍、それ以上にもなる。これは測定可能で、代表的な音について判定出来る。そして、その全体像として、言葉の理解力の検査を行うと、正常者は百%解るが、それが七十%、五十%、三十%と悪化し、音は聴えても、言葉が解りにくくなる。

 言葉の理解力が二十%以下になると、補聴器では殆んど言葉を理解出来なくなるが、「人工内耳」の埋め込み手術で、電話でも話しが出来る程になる。条件が整えば福祉対応で自己負担なく受けられるが、高価なものなので、福祉財政が貧弱な我が国では高齢化が更に進み、対象者が増加してくると、どう対応するのか気になる。

 一方、音の歪み度が三十~四十%と良くないのに、言葉の理解度は八十%前後と、データーが平行しない人を時々見かける。これらの人々は、八十歳以上になっても現役であったり、ボランティアなど社会活動を行っている人達で、聴えが悪くなったからと云って、人との交わり方が少なくならないように、積極的に社会に出て、人と良く交わることが重要と考えられる。

 前述の如く、高齢者難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化による血流障害と考えられ、従って四十歳台ぐらいから、職場検診や住民健診のデーターを参考に、「食事のコントロール」と「運動の励行」により、「百歳を越しても補聴器不要」は可能であるし、私共の診療所の八~九割の患者さんは、この約十年間、半年毎の検査、指導により、難聴が進行していない!(補聴先進国ドイツは「一年に一度の補聴器チェック」が法律になっているが、これはドイツ人の食生活から当然で、動脈硬化が進むと難聴が進むからである。)
まず難聴にならないように、なったら早期対応して、充実した人生を築いてほしい。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


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