補聴器適合の重要性 ー医学判定下の補聴器購入を習慣付けようー

2007年2月15日 木曜日

 高齢化社会に入り、難聴高齢者が増加している。七十才以上で約半数が補聴器を必要とするようになるので、高齢化率が二十%に達した我が国では高齢者の約半数が、即ち人口の十%が難聴と非常に多いことがわかろう。

 難聴には補聴器と云うことになるが、我が国では一人ひとり異なる聴え方に補聴器を適合・調整する「補聴器適合制度」が確立して居らず、誰でも補聴器を売れたため、不適合補聴器が氾濫、殆ど使われなくなっている。

 年をとって、難聴となり、補聴器が使えず聴えないままでいると、コミュニケーション障害より、家族・社会より遊離・孤立、人間は精神的な動物なので、これが充分満足されなくなると、人生をあきらめ、生きて行く意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症へと繋がって行く。我が国のように未曾有の高齢化社会を迎え、非常に多い難聴高齢者(人口の十%)が適切な対応を受けられず、放置されてしまっているのは、難聴は他の障害と異なり、目に見えないので関心が持たれず、全く対応されていないためと思われ、正視してみれば、超高齢化社会の我が国にとっては、避けて通れない大きな社会問題なのである。

 遅ればせながら、昨年四月やっと薬事法が改正され、補聴器は「管理医療機器」に規定され、販売規制が始まり、業者に補聴器適合の義務・責任が生じ、広告規制も始っている。

 これに呼応して、やっと日本耳鼻咽喉科学会が、「補聴器は医師の診断の元に購入すべき」との方針を決定(欧米先進国では、医師の処方箋がないと補聴器は購入できないし、ドイツでは医師が補聴器が適合しているか否か最終チェックの上、購入・保険支払となる。そして、一年に一度の補聴器チェックが法律で規定されているードイツ政府はドイツ国民は全て聴えるようにすることを、人間の基本的人権の一つとして保証しているー)、これに対応する「補聴器相談医」(耳鼻咽喉科医一万人中約三千名)を学会認定で制度化することになり発足した。

 医学判定を受けると、改善できる難聴も診断され(耳垢除去にて補聴器が不要となることも)、聴力の悪化を阻止する可能性も出てくる。

 また、国の定めた基準以上に聴力レベルが低下、又は言葉の理解力が悪化すると、身体障害者に認定、公費による補聴器支給も受けられるし、更正医療、育成医療にて治療も受けられる(聴力改善手術、人工内耳、人工中耳、脳幹インプラント埋め込み手術など)。

 医学判定により、補聴器が必要と判定され購入した場合、「医療控除」の対象にもなる。

 このように、適合補聴器が得られる時代となり、難聴高齢者の多い高齢化社会に対応出来るようになっているが、このことを難聴者も、その関係者も、県民、国民の殆どは知らず、これが活用されず、難聴高齢者への適切な対応が進まず、閉じ込もり、寝たきり、認知症が増え続け、当人らにとって不幸であるだけでなく、そのための介護費、医療費が益々増加、次世代に持ち越されることは実に不幸なことである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年2月15日 木曜日

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