【論壇】音は聴えるが、言葉がわからない!

2015年3月26日 木曜日

 「音の歪(ひずみ)」をご存知であろうか?人の話し声を聴いた時、その話し声の音の大きくなり方や濁り方が変わって感じられ、音は聴こえても言葉がわからなくなる現象で、高齢者難聴の一つの特徴となっている。

 そして、これが内耳動脈などの動脈硬化などによる血液の流れ(血流)の障害により、聴覚細胞の機能障害が起こり、血流が改善すると、この音の歪も改善し得ることも、四~五年前より確認されている。

 この音の歪の度合いは、代表的な音について測定が出来るし、その全体像として五十音を使用した言葉の検査(最良語音明瞭度検査)で判定される。

 この言葉の検査で、正常者は当然一00%だが、両耳共に五0%以下になると、聴覚障害による身体障害者四級に認定され、五年毎に補装具(補聴器)を支給してもらえる。

 補聴器は、音を大きくするが、この音の歪は改善出来ない。数千の個々の聴覚細胞のそれぞれ異なる歪み方の調整は不可能なので改善できないが、しかし補聴器の調整により、改善が全く不可能ではなく、また私共の難聴者の団体「沖縄県難聴福祉を考える会」のメンバーの創意工夫により、その周辺機器をうまく組み合わせることにより、一人ひとりの異なるが、言葉がかなり良くわかるようにできることがあることもわかってきている。

 以上のごとく、高齢化社会に入り、動脈硬化による内耳血流障害による難聴が多くなってきているので真正面よりハッキリ、ユックリ話してあげる必要がある。

 一方、聴きやすい話し手と、聴きにくい話し手とがあるのも事実で、小生などが患者さんと電話で話していると、「何をいわれているのか、良くわからないから、誰かに代わってください!」と云われることが多い。

 これは、話し手の発声法に問題があるからで、殆どの人は自分の周囲の人、特に親の話し方をまねて育ってくるので、発声学的に云えば、殆んどの人が間違った発声になっていることになる。オペラ歌手のように生理的に正しい発声法で話せば、高齢難聴者にも良くわかるようで、小生の発声と比較され、自分自身が如何に間違った発声をしているか、強く認識させられたことがある。

 人と人とのコミュニケーション、特に近年は自己主張をすべき時代にもなっているので、幼児期に基本的な、生理学的な発声のトレーニングを行う必要性を強く感じている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2015年3月26日 木曜日

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