著しい聴覚障害者の増加 ーその内容・程度により対応が異なるー

2008年6月2日 月曜日

 高齢社会が進行、70才以上で約半数が補聴器を必要とする程になる(老人性難聴)ので、高齢化率が20%を越えた我国では、全国で1千万人 以上、当県でも10万人以上と膨大な数になって来ている。

 これに対し若年時よりの難聴、特に生まれつきの高度難聴・聾(聾で生まれた時には適切な言語訓練を受けるか、また近年実用になって来た人工内耳や脳幹インプラントを埋め込み聴えを獲得できるが、言語を獲得できなければ、手話、要約筆記などの対象者となる。

 この手話などを必要とする高度難聴・聾は全国で約10万人(厚生労働省統計)、当県では先天性風疹症候群聾約4百名を含めて千数百人で、その対応は各市町村の手話サークル活動などが活発で対応人数も多 く、講演会などでは必ず手話・要約筆記で対応され、また診療などには手話・要約筆記者が付き添い、支障がないよう対応されていることは、実にすばらしいことである。

 これに対し、後天性難聴、特に前述の膨大な数の老人性難聴への対応は殆どされていないし、関心も持たれていないと言える。

 これに対応する補聴器は;、補聴器を適合(一人ひとり異なる聴え方を正確に測定して、それに合うよう補聴器を調整する)するシステムがなかったため(平成17年4月に「薬事法」が改正され、補聴器は管理医療機器に規定され、業者に補聴器適合の義務・責任が生じているし、平成18年 4月より「補聴器相談医制度(日本耳鼻咽喉科学会)」も発足し、本人が人まかせにしないで、真剣に適合補聴器を得ようとすれば得られる時代になっている)、補聴器を必要な人の80~90%、当県では90~95%は適合補聴器が得られず、聴えないままでいるので、コミュニケーション障害より、人と話せなくなり、人に会わなくなり、閉じ込もりになり、寝たきり・認知症などに、恐らく前述の膨大な数の30~50%は寝たきり・認知症など、”人として生きていない”状況にあると思われる。

 老人性難聴は、近年耳を養っている血管の動脈硬化と判明、従って予防・進行停止が可能で、血流改善で音の歪(ひず)み(音の大きくなり方、濁り方が変り、音が聴えるが何を言われているのかわからなくなる)も改善し得る。そして、近年私共が提唱している「難聴高齢者の早期発見・早期対応」(いよいよ聴えが悪くなってからでは、補聴器を使いこなせないし、使う意欲がなくなっているため)、65才以上で毎年聴力検査を、いずれ住民検診に組み込み、早期に対応すると、レーガン・クリントンのように人生はそのまま継続、人によっては発展もさせられ、コミュニケーション良好で家族・社会と仲良く付き合い、人生を楽しみ、”人間としての人生を全うする”ことができるので、高齢になって難聴となっても、寝たきり・認知症に追いやらないで、殆どの人が「人間としての人生を全うできる」社会にすべきである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2008年6月2日 月曜日

コメントは受け付けていません。

最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー