【論壇】聴覚障害による身体障害者の認定と支給補聴器の更新について

2017年11月29日 水曜日

 
 聴えのレベル、また言葉の理解度が、国の定めた基準以上に悪くなると、「聴覚障害による身体障害者」に認定され、五年毎に補聴器を支給してもらえる。

 この認定申請診断書を作成する際に、再認定の時期を記載するようになっており、五年後の補聴器支給更新を目途に記載している。

 この五年後の補聴器更新は、補聴器の耐用年限と云うより、聴覚の悪化を前提に決められていると思われるが、先般那覇市在住の「聴覚障害による身体障害者」に、“五年後”の再認定の時期を過ぎても、補聴器更新の手続きがなされていないとの通知を那覇市役所から受けた由、このような催促の通知を見たのは初めてだったので、身体障害者の福祉が後退しつつあるように感じられる昨今、非常にすばらしいことと感心させられている。

 聴覚障害による身体障害者の認定は、両耳の聴力がそれぞれ七十㏈(デシベル)以上で六級、八十㏈以上で四級、九十㏈以上で三級、百㏈以上で二級、また言葉の理解度(語音明瞭度(日本では五十音を使用して行う)が両耳共に五十%以下で四級に認定される。他に身体障害がある場合には、それぞれの等級の指数を合算して、等級を決定し、これが高度の時には障害年金が支給されることもある。

 高齢者難聴は一般に年齢進行と共に悪化して行く、しかし、近年、高齢者難聴の大部分は、耳の血管の動脈硬化と判明、従って「食事のコントロール」と「運動励行」により、難聴が進行しなくなっている。私共の診療所では、六ヶ月毎に聴覚分析を行い、これにより具体的な指導を行っているので、この約十年、八~九割の患者さんの難聴悪化は防止されている。私共が六ヶ月毎の聴覚チェックを行っているのは、補聴行政が最も進でいるドイツを参考にしている。ドイツでは一年に一度の補聴器のチェックが法律になっている。これを私共の近年の知見からみると、ドイツ人の食生活はカロリーの高いものを多く摂取しているため動脈硬化が進行、難聴も進行すると思われる。一度駄目になった聴覚細胞は回復しないので、私共の所では音の歪みなどを半年毎にチェック、厳重注意、指導して聴覚を悪化させないようにしている。
 
 まず難聴にならないように(動脈硬化予防にて「百歳越しても補聴器不要」は可)、なった時は適切な分析検査を受け、適切な対応にて、寝たきり、認知症などにならず、人間として充実した人生を生き抜いてほしい。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


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