【論壇】高齢難聴者不対応がもたらすもの

2018年2月6日 火曜日

 高齢社会が進行、高齢難聴者が急増している。七十歳以上で約半数、九十歳以上で殆んどが難聴になるので、全国で千五百万~二千万人、当県で十五万~二十万人と推測され、これら高齢難聴者のうち全国で十~二十%、当県で五~十%しか適合補聴器が得られていないので、コミュニケーション障害から、家族・社会より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい・生きる意欲を失い、その三~四割、即ち、全国で四~五百万人、当県で四~五万人が「閉じ込もり」「寝たきり」「認知症」になり人間として生きていないと推測される。

 これら高齢難聴者が適切な時期に、適切な対応を得られれば、コミュニケーション障害が起らず、家族・社会と仲良く付き合い、人生をエンジョイ、亡る直前まで自立、人間としての人生を全うして行けるのに、その対応方法が確立していない我が国では、前述の如く閉じ込もり・寝たきり・認知症にて要介護状態となり(日本の認知症の八十%以上は、高齢難聴の放置によると云える)、個々の家族で面倒が見れる状態ではなくなりつつある現在、地域社会が、国が面倒を見るようになると云うことは、増税になり国民全体の負担となるばかりでなく、恐らく国債も増え、次の世代に迄負担が及ぶことになろう。

 この高齢難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化によると判明して来ているので、四十歳台後半から「食事のコントロール」「運動の励行」により、百歳を越しても「補聴器不要」にできるし、難聴が始っても、そこで停止されることも重要で、同じ補聴器を使うのでも、基本的な聴えが良い方が補聴器をうまく使えるからである。

 「音が聴えても、言葉がわからない!」音の歪みも、これも耳の血管の動脈硬化による血液の流れの障害で、聴えの細胞に血液が充分流れて行かないため、聴覚細胞が機能障害を起して来るものであるから、血流をコントロールし、即ち、食事のコントロールと適切な運動励行にて停止・改善が可能であることも判明して来ている。

 この啓蒙活動、当初十年はボランティア活動として、十三年前よりは特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会」(難聴者の会)とその附属診療所「補聴相談のひろば」として推進されて来ているが、あまり成果が上がっていないのはなぜなのだろうか?

 社会全体は当然、特に高齢難聴者とその家族は熟慮すべきと思う。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


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