【論壇】補聴器使用にても言葉がわからない人には「人工内耳」埋込み手術を!

2019年11月1日 金曜日

 
 超高齢化社会を迎え、補聴器を使用していても会話が出来なくなってしまった人が増えて来ている。

 現在の補聴器は、音を大きくすることは出来るが、言葉の理解度までは改善出来ない。

 この言葉の理解力の悪化は、音を感じる細胞の機能障害によるもので、耳を養っている血管の動脈硬化により、血液が内耳の音を感じる細胞に充分流れて行けなくなることによることが近年はっきりして来ている。即ち、血液が充分流れて来なくなり、酸素・栄養を充分もらえなくなった音を感じる細胞が機能障害を起し、音の大きくなり方、濁り方が変って感じられるようになり(音の歪―ひずみ―)、音が聴えるが言葉がわかりにくくなる。

 言葉の理解力については、我国では五十音を聴いて、どのくらい理解出来るか、正常者は百%だが、動脈硬化が始り出す五十歳台後半から始り出し、徐々に悪化して行くのが一般的で、八十歳台後半ぐらいから三十%前後に、百歳近くなると、殆んどが十%ぐらいになり、補聴器で音は聴えるが、言葉が全く理解出来なくなる。

 このような時に、「人工内耳」埋め込み手術を行い、障害された音を感じる細胞を越えて、埋め込み電極が直接神経を刺激するようにすると、音を感じる細胞の障害によって起こっていた音の歪みや耳鳴などがなくなり、音がスッキリ聴えるようになり、電話で会話が出来るようになる。

 しかし、この「人工内耳」は機器のみで、約三百万円するので、そう簡単ではない。

 「聴覚障害による身体障害者」に認定され、両耳の聴力が九十㏈―デシベル―以上で、言葉の理解力が両耳共に二十%以下になると、公費で手術を受けられるが、当県では八十歳前後まで手術を受けられている由(十五年前に、ドイツで九十歳以上で「人工内耳」手術を行ったら医療保険が支払れなくなったことが学会で問題となり、討議の結果「医師がその患者さんの人生にとって「人工内耳」が重要と判断した以上、保険会社は支払うべき」と決定、昨年の学会雑誌では、両耳装着することになっていると記されている)、福祉財政の貧弱な我国ではどうなるのか、気になる。

 従って、脳・心臓の血管よりも更に細いと思われる耳を養っている血管の動脈硬化が進まないよう、少なくとも四十歳台後半からは「食事のコントロールと運動の励行が重要」で、意識して実行してほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


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