適合補聴器が得られる時代の到来ー難聴を感じたら、まず医学判定をー

2007年3月5日 月曜日

 高齢化社会が進行、高齢難聴者が増え続けている。七十才以上で約半数が補聴器を必要とするようになるので、高齢化率が二十%を越えた我が国では、十人に二人が高齢者で、その半分、即ち十人に一人が難聴と云うことになり、如何に多いかがわかろう。

 一人ひとり異なる聴え方に補聴器を適合・調整する制度がなかった我が国では、補聴器が規制されないまま乱売された結果、補聴器不信・不使用となり、聴えないままでいる人が高齢難聴者の九十~九十五%以上となり、コミュニケーション障害より、家族・社会より孤立し、閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がっているが、このことに気付いている人が我が国には殆どいない。

 平成17年4月に薬事法が改正され、補聴器は管理医療機器に規定され、販売規制が始り、販売業者に補聴器の適合義務・責任が生じて来て、適合補聴器が得られる時代になっているが、このことを知っている人は殆どいない。これを周知させる啓蒙活動が重要である。

 この法改正に呼応、日本耳鼻咽喉科学会が「補聴器は医師の診断の元に購入すべき」と「補聴器相談医」を学会認定で制度化し、補聴器適合診断(ドイツでは医師が処方するだけでなく、適合具合を確認しないと売買できない)と共に、難聴を改善し得る疾患の発見・治療が可能となり、身体障害者の認定、医療控除のための診断書作成など、医学判定下の補聴器適合の重要性も認識されて来ている。

 このように、適合補聴器が得られる時代になっているが、難聴が進んでから補聴器を適合しても、なかなか使いこなせないのが現状である。聴えが悪くなって来たことで、人生は終りに近付いたと思い込んで、補聴器を活用して元の生活に戻ろう、また何かをしようと云う気にならない人が殆どなのである。

 一方、聴えが衰え出した時、特に仕事や社会活動をしていると、それを継続するため、補聴器をあっと云う間に使いこなしてしまう。

 そうなれば、その人の人生は継続、いや発展させる人もあり、恐らく亡くなる直前まで、自分の思い通りの人生を生き抜き、認知症、寝たきりなどとは無縁の人生となろう。

 このようにするには、「高齢難聴者の早期発見・早期対応」が重要で、六十五才以上の毎年の聴力検査によりこれを達成すべきで、これを住民検診に組み込むべきと提唱している。

 約十年前医師会を中心に、沖縄の「長寿世界一宣言」のイベントが企画されたことを記憶している人が多いと思うが、「沖縄は確かに長寿だが、寝たきり、認知症が多く、人間として生きていない」とクレームがつき宣言出来なかったのは残念なことであった。

 人間は精神的な生き物なので、難聴となり、これが補完されず難聴のままでいると、コミュニケーション障害から、精神面が満足されず人間として生きて行く自信を失い、人間性が保たれなくなってしまう可能性が高いことを知り、適切な対応をすべき時に来ている。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年3月5日 月曜日

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