片方の高度難聴・聾の対応ークロス補聴器ー

2007年3月5日 月曜日

 片方の耳が全く聴えないと云う人が可成りいる。毎年、新たに十数名より相談があるので相当数存在すると思われる。

 生まれつきのこともあるが、多くは、「おたふく風邪(ムンプス)の時に、片方の耳が全く聴こえなくなることが多い。(他にビールス感染による難聴の時には聴力が残っているケースが多い)。一般に幼少児期に多いが、成人してからなる人もある。

 音を感ずる細胞や身体のバランスをコントロールする細胞のある「内耳」は骨(側頭骨)の中にあるが、リンパ液の入った袋で、この中に音を感ずる細胞約一万個(蝸牛)が、身体のバランスをとる細胞数千個(前庭・三半規管)が存在するが、この内耳にムンプスのビールスが入り、聴えの細胞を駄目にし、そのうちの約半分の人の身体のバランスをとる細胞を駄目にする(身体のバランスをとる細胞が駄目になると、一時的に身体のバランスがとれにくくなるが、他側の正常な内耳や中枢性の代償により、三週間ぐらいで、通常の生活に支障を来たさないようになる。しかし、身体のバランスを必要とするスポーツなどは不得意なので推めないよう指導している。)(ムンプス聾は何故か殆どが片方の耳である)。

 片方の耳が急に聴えなくなると、とても不自由で、聴えない方から話されるとわからないし、特に会議の時に困ると訴えられる。音の方向感覚(何処から音が来ているのか)もなく、不自由することもある。

 物心付かない時からの片方の聾(先天性又は幼児期のムンプス聾)の時は、片方が聴えないままで育ってくるので、不自由することもなく、音の方向もわかっている人も多いが、聴えない方の耳もとでささやかれたとか、電話を使った時に気付くことが多く、特に会議の時に困り、何か対応できないか相談されることが多い。(明日、東京の音楽学校に入ると受診され、片側の聾と判明したケースもあった。)

 この対応として、「クロス補聴器」がある。聴えない耳の方に来た音を、聴える方の耳に誘導して聴く方法で、日本では殆ど普及していないが、欧米先進国では可成り使われ、方向感覚を得させるための研究も行われ出している。

 日本では使用する人が殆どいないので、オーダーメイドとなり、従って高価である上、メガネ型(メガネの蔓ーつるーをはわせて正常の方に誘導する)が開発されて居らず、後頭部(首のうしろ)に誘導線をまわすタイプなので、評判が悪く殆ど使われていない。メガネ型を希望する人には、海外旅行の時などに購入してはどうかと、推めているのが現状である。

 よく、片方の耳が聴えないからと販売店を訪れ、補聴器で聴えるようになると云われ購入したが聴えなかったと云う話を耳にする。前述のような人には通常の補聴器は意味がない。耳鼻咽喉科にて聴えがあるのか、残っているとすれば補聴器が有効か、言葉の理解度の検査を含め検討し、可能性がある時は試聴・貸し出しで本人が確認した上で、購入すべきである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年3月5日 月曜日

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