高齢難聴への対応の重要性―放置すれば寝たきりにも―

2010年11月1日 月曜日

 高齢者難聴を放置しておくと、コミュニケーション障害から、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物である人間は生きる自信・意欲を失い、閉じこもり、寝たきり、認知症などになる可能性が高くなるので、高齢社会となり、高齢難聴者が増加している現在、その対応が十分なのか非常に気になる。

 70歳以上で約半数が補聴器を必要とするほどになるので、高齢化率が20%を超したわが国では約1千万人、沖縄県でも約10万人と推定される。この膨大な数の高齢難聴者のうち、補聴器装用者は、補聴器不信も手伝って、年間補聴器販売台数などから推計し、10~20%、当県では5~10%(県内某市実態調査で実証)と、ほとんどの高齢難聴者は、“聴こえないままでいる”のが実情である。

 従って、前述のごとく、これら高齢難聴者の3割前後は、すでに“閉じこもり”から寝たきり、認知症など“人間として生きていない”のではないか。

 寝たきり、認知症は誰が介護する?その費用は?税金でまかなう?増税となる。

 このように、高齢難聴者は個人々々の問題であると同時に、大きな社会問題でもあると認識し、若年者を含め国民全体で対応を考える問題であることを自覚すべきである。

 近年、高齢難聴のほとんどは、内耳の音を感じる細胞を養っている血管の動脈硬化・血流障害と判明、従って食事のコントロール、運動の励行により、予防、進行停止、聴こえの内容の改善(聴こえの歪(ひず)みの改善により言葉が分かりやすくなる)となり、“百歳を超しても補聴器不要”が可能になりつつある。

 この実現のため、行政が住民検診に聴力検査を組み込むことを考え始めた市町村もある。

 さらに、高齢難聴には早期発見・早期対応が重要で、いよいよ聴こえが悪くなってからでは、補聴器をうまく使いこなせないし、使う意欲がなくなっていることが多い。前述のごとくコミュニケーション障害より、生きる自信・意欲が失われてしまうからである。

 聴こえが悪くなって、すぐ適合補聴器で対応すると、人生はそのまま継続、人によっては発展させられ、コミュニケーション良好で家族・社会と仲良く付き合い、人生をエンジョイ、“人間としての人生を全う”できる。

 誰にでも起こり得る高齢難聴、これを十分理解・認識・対応し、すべての高齢者が人生をエンジョイ、寝たきり・認知症などにならず、従って無駄な出費不要の社会にしたいと思う。

NPO法人沖縄県難聴福祉を考える会附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医 野田 寛 (琉球大学名誉教授)
2010年(平成22年)10月30日(土曜日) 琉球新報 論壇 掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2010年11月1日 月曜日

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