補聴器の正しい使用について(体験談)

2010年2月16日 火曜日

 私が難聴の指摘を受けたのは、今から35年前の職場の健康診断でした。難聴と言われても、支障がそれ程なかったせいもあり、自分には無縁の話のように思っていました。退職して家に閉じこもって居ることが多くなり、最初に難聴を自覚したのは孫の一言がきっかけでした。「じいちゃん、いつもテレビや電話の声が大きすぎるよ」と思いを素直に伝えてくれたことで、私は耳の異常を再認識しました。

 2007年5月、県立中部病院「野田 寛(ゆたか)」先生にめぐり会えて、職場での騒音障害(モーター、ポンプ、ボイラー騒音等)で感音性難聴になったこと。それに年齢的な変化が加わって来たこと。感音性難聴に適合した補聴器があることを知り、野田先生の指導のもとに補聴器を購入しました。

 さて、補聴器は周囲のすべての音を大きくします。電話の音や玄関のチャイム、インターホン等、聞きたい音が大きくなるのは望ましいことです。音声が大きくなれば聞こえを助けてくれます。逆にオートバイや自動車の騒音、風の音、食器を洗う音、新聞をめくる音など、聞きたくない音も大きくします。

 私ども難聴者は「話し声が小さくて聞こえないのではなく、音声が不明瞭で、全く何を言っているのか意味がわからない」のです。{難聴者は音の強さ(大きさ)と音の明瞭さの双方に不具合を感じています}
基本的には言葉は聞こえているのですが、その言葉が別の言葉に聞こえ、聞き違いが多いのです。家内との会話で、今年はタンカンが「品薄」だと話しているのに当人は「稲福」と「聞き違い」し、「稲福のタンカン?」と話しがかみ合わなく両人とも困り果てることもあります。

 補聴器は難聴者に合わせて、音を聞き易くするように調整しますが、子供の声から男性の声、女性の声まで話す相手が違ってもすべての声が聞き易い補聴器が欲しいのです。残念なことに対応できる補聴器はありません。声が低音から高音まで変化するのに対して、補聴器が対応出来ないために起こる現象です。

 補聴器は、聞こえには役立ちますが、難聴を治療するものではありません。補聴器を使用しても聴力の回復は見られません。

 皆さんがお孫さんとの電話での会話に問題があるならば、補聴器のTスイッチ(テレコイル)内臓の補聴器が電話での会話を聞き易くしてくれます。その他さまざまな補聴器援助機器を使えば、電話でのやり取りがさらに改善出来ます。 

 補聴器を購入される際には、補聴器相談医に認定された医師のもとで正確な検査結果にもとづき、あなたの難聴の程度や聞こえに対する要望、手先の器用さ、会話をされる状況、予算など、さまざまな要素を考慮して購入して下さい。

 補聴器を購入し初めて装用した時に、自分の補聴器からのあの人の声も、この人の声も拾ってくれた時の充実感は終生忘れることが出来ない喜びがあります。しかし足音や鳥のさえずり、新聞をめくる音などを何年も耳にしてなかった場合は、補聴器を通して入ってくる音声も、最初は金属的で個性のない不自然な音声となり、時に当惑することもありますが、続けて装用するうちに聴覚機能が新しい音声を受け入れ、より「正常」な音声として認識しますので気にならなくなります。

 最初から「通常」の音声を聞くことができると期待された方には、多少がっかりして、アッという間に補聴器をタンスや押入れにしまい込んでしまいます。聞こえにくいからといって装用をやめるのではなく装用感が高まるように頻繁に調整のため補聴器購入店に足を運ばれることが大事です。きちんと合った補聴器を使用すると、脳は音声概念を広げた新しい音声パターンを認識してくれます。

 補聴器初心者はその恩恵を受けるまでの適応期間として最低6週間から8週間を要します。

 補聴器の「正しい選択」「正確な装用」「正しい使用」と、継続的なケアが共になされているならば、補聴器はあなたの難聴に積極的にかかわる第一歩となります。補聴器を適切に利用している多くの方々は、閉じこもりや孤立から脱却し、自立と生活の質を大いに高めているのです。

 結びに私の体験談が少しでも皆さんのお役にたてば幸いに思います。
誠に有難うございました。
          うるま市  平川 永正  


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2010年2月16日 火曜日

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