高齢社会における難聴克服の重要性 ー聴こうとする意欲があれば克服できるー

2007年11月15日 木曜日

 高齢社会が進行し、難聴高齢者が増えている。七十才を越すと約半数が、九十才以上では殆どが補聴器を必要とするほどになる。高齢化率が二十%を越えた現在、当県で十万人以上、全国で一千万人以上と推定され、如何に多いかがわかろう。

 この中で補聴器を使っている人は五~十人に一人、当県で十~二十人に一人と殆ど使われていない。難聴が解消されないと、コミュニケーション障害から、社会・家族より遊離・孤立し、閉じ込もり、寝たきり・認知症に繋がる可能性が増す。

 一方、補聴器の適合理論は数十年前より確立して居り、一人ひとり異なる聴えに補聴器を適合・調整させ得るが、適合補聴器を得られても、若い時に戻るわけではなく、周囲の人が当初は一~二メートル以内で正面から口唇を見せてハッキリ・ユックリ話す心遣いが重要であるが、本人が聴きとろうと云う強い意欲が最も肝要である。

 今までの社会通念では、難聴になったら「手話」・「筆談・要約筆記」と云われてきたが、これは生まれつきの聾(ろう)で、話し言葉を持たない人(全国で約十万人。当県は先天性風疹症候群聾ー風疹児ー約四百名が加わるので、頻度的にやや多い)に必要なものであって、正常の聴力、正常の話し言葉持っていた人には不要で、補聴器にて言葉を理解できるし、会話などに支障なくできる。

 正常聴力を持っていた人が、例え聾になっても、現在は「人工内耳」があり、埋め込み手術の時期が適切であれば、電話で話が出来るようになる。従って、以前に、いずれ聴えなくなったときのために手話を習っておこうと云うようなことは、不要となっている。

 このように、もともと聴えを持っていた人は聴えるように出来るようになっているが、この時に聴こうと云う意欲が重要である。補聴器にしても、人工内耳にしても、全く正常に聴えていた時とは異なり、機械を通して聴くのであるから、初めてメガネなどを使った時と同じで、当初は抵抗感もあるが、装用指導(補聴器・人工内耳を上手に使いこなすための訓練の指導)に従い、これらを使いこなして良く聴えるように、良いコミュニケーションを可能にしようとする意欲がないと、うまく行かないこともある。

 従って、手話など“聴かなくても良い”方法にたよっていると効果があがらず、使いこなせないこともあるので、注意を要する。

 このように、補聴においてもその他全てにおいて高齢になったら積極的に取組み、生き抜いて行くことが肝要で、補聴行政が最も進んで居り、年一度の補聴器チェックを法律で定めているドイツでは、磁気ループ(マイクの声を補聴器に直接入れる装置)などの社会整備も整い、講演会場・劇場など、また役所・病院・銀行などの窓口に設置されているので、誰の世話にもなる必要もなく、亡くなる直前まで自立して人生をエンジョイして行けるようになって居り、老人医療費・介護費の増加で増税が論じられる我が国では、これを見習わなければと痛感する昨今である。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年11月15日 木曜日

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