自分の聴え方は自分のもの ー他の人には全くわからないー

2007年9月4日 火曜日

 聴えか方は一人ひとり異なる。加齢による変化は一般に高音部から悪くなってくるが、その内容は一人ひとり異なるし、中耳炎などの時には低音部、中音部が障害されてくる。そして、それは鼓膜などの損傷状況により聴え方は色々である。

 その上に、補聴器が必要となる程になる時には、内耳の音を受け取る細胞(聴覚細胞)の障害が起こっていることが殆どである。内耳には左右それぞれ約一万個の聴覚細胞あると云われ、それぞれどの高さの音を受け取るか決っていて、丁度ピアノの鍵盤のように並んでいる(人間の内耳はかたつむりのように二回転半しているが)。

 これらの細胞が障害されてくると、一つひとつの細胞が音の大きくなり方や、にごり方が変って聴えるし(これを「音のひずみ」と云う)。これをそれぞれの音の高さについて測定することは可能で、難聴者はそれぞれの高さの音の聴力低下と共に、それぞれの聴覚細胞の音の”ひずみ”が加わったものとして聴いているので、これはその人の聴感覚と云うものであって、どのように聴えているかは本人にしかわからないのである。

 そこで補聴器を適合させる時には、まず治療可能な病気の有無(耳垢で外耳道が閉鎖されても難聴となる)の医学的判定の後、測定可能な聴力レベルを検査し、どの高さの音がどのように聴えなくなっているか、その難聴状態を補聴理論に従い適合させて補って行くが、前述の”音のひずみ”の有無、その程度は語音明瞭度検査(言葉の理解度の検査)などにより自覚的・他覚的に検索し、その”ひずみ”の程度を検討して行くが、”ひずみ”方の程度がどの高さの音でどの程度かは測定出来ても、どのように聴え、どのように言葉を理解しているかは本人にしかわからず、従って測定可能な聴力レベルから補聴理論により適合させた補聴器の状態でどのように聴えるのか、何が聴え何が聴えないのか、どのような音がひびいたり、物足りないなど訴えてもらうことにより微調整を繰り返し、その人に一番聴える、言葉が分かり易い状態に調整して行くが、その人の聴え方であって、その人しかわからないので、どのように聴えるのか、どのように聴きたいのか、何か障害となっているものはないかなど表現し、注文をつけてもらわないことには行えない。

 敬老の日が近付き、聴えが衰えて来た親や祖父母に補聴器のプレゼントを考えている人も多いと思うが、補聴器はただつければよいと云うものではなく、一人ひとり異なる聴え方に適合させなければ意味がなく、前述の微調整の上、補聴器を使いこなす装用指導により初めて使えるようになれるので、このことを充分理解し、ご当人が本当に満足するよう心遣ってあげてほしい。よくみられることであるが、子や孫がただ買い与えたことだけで満足し、贈られたご当人が聴えずに難儀することのないようにしてほしいものである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年9月4日 火曜日

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