補聴相談で気付いたことー「敬老月間」の補聴器選びの参考にー

2007年9月18日 火曜日

 特定非営利活動(NPO)法人 沖縄県難聴福祉を考える会の附属診療所「補聴相談のひろば(耳鼻咽喉科)」が開設されて四年が経過した。

 まず感ずることは、医学判定の重要性である。年と共に聴えが悪くなったと言っても、その約半数は加療により改善・難聴予防の可能性があることである。昭和初期に三人に一人と多かった慢性中耳炎が残っている人は少ないが、栄養・衛生状態の改善により鼓膜は再生し、治ったようにみえても、耳管(中耳と鼻咽腔ー鼻とノドの間ーを結ぶ管)の障害より難聴、耳閉感、頭重感などが残っている人が多く、これらの症状の改善により難聴が改善し感謝されることが多い。

 近年、「老人性難聴」と高脂血症(血中のコレステロール、中性脂肪など脂肪性の物質が高くなる)、即ち耳の血管の動脈硬化との関連性、その前触れとしての「耳鳴り」と中性脂肪、また「メマイ」と総コレステロールの関連性も明らかとなりつつあり、高脂血症は最近の健康意識の高揚により一時ほど多くはないが、その 調整は難聴進行の予防に、特に内耳動脈梗塞による突発性難聴の予防となろう。

 次は、業者の自宅訪問の問題である。補聴器を購入すると、電池供給と自宅訪問が始まるようで、この時にクリーニング(掃除)するとして、調整が少し狂わされて相談者が訪れるケースが数十例に及んでいる。そして、これが新しい補聴器の購入に繋がるようである。確かに自宅に来てもらえれば便利で楽だし、家族も時間を工面して連れて行くこともなく面倒がなく良いと思っているのかもしれないが、特に補聴器購入時には、自宅訪問では、充分な検査・分析は当然出来ず、従ってそのデーターを元にした補聴器周波数特性(どの高さの音をどう補うか)の設定・調整は当然うまく行くはずがないので、やはり信用出来る耳鼻咽喉科に足を運んで、適合補聴器が得られるよう指導してもらうべきである。補聴器は大事に使えば十年以上使えるのであるから、便利、簡単で不適合補聴器を購入し、ニ~三年毎に買い換えているよりは、はるかに良いと思うが如何であろうか。

 もう一つ、聴覚障害による身体障害者に認定されると、五年毎に新しい補聴器を支給してもらえる(平成十八年四月の「身体障害者支援法」により五~七万円の補聴器が一割負担となっている)が、この時期は業者も当然知っているので、事前に連絡して、福祉支給の補聴器より良い補聴器をと言うのであろうか、新しい補聴器を自費で購入させられているケースが数例出て来て居り、補聴器は高ければ良い、安ければ駄目と言うものではなく、その人の聴え方に合っていなければ、どんな高価な補聴器も意味がないことなので、やはり信用の出来る耳鼻咽喉科に足を運んで適切な指導を受けるべきである。

 薬事法の改正(平成十七年四月・厚生労働省;補聴器は管理医療機器に規定、販売規制、広告規制、業者の補聴器適合の義務・責任)、特定商取引に関する法律等の改正(平成十六年十一月・経済産業省;訪問販売等におけるクーリングオフなど)の法律改正と「補聴器相談医」制度(平成十八年四月・日本耳鼻咽喉科学会)により適合補聴器が得られ易い時代になった。

 従って、難聴になっても従来のようにコミュニケーション障害より閉じこもり、寝たきり、認知症のように、人間として生きて行けなくなるのではなく、適切に対応し、適合補聴器を得て、人生を継続・発展させ、コミュニケーション良好で家族・社会と仲良く付き合い、正確な情報により、その時代に合った人生を見直し、亡くなる直前まで自立、人生をエンジョイし、人間としての人生を全うしてほしいものである。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年9月18日 火曜日

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