老人性難聴とは!

2007年5月7日 月曜日

 老人性難聴とは、年齢の進行と共に聴えが衰え、早いか遅いか個人差はあるものの、殆どの人に起って来る難聴で、近年これが音を感じる細胞を養っている内耳動脈の”動脈硬化”によることが明らかになって来ている。

 従って、高血圧症の方は内耳動脈硬化も起っていると認識すべきで、これに高脂血症(コレステロール、中性脂肪など脂肪系物質が血液中に増えている状態)が加わると、動脈硬化が進行、難聴も進行して行くばかりでなく、所謂ドロドロ血液になるので内耳の音を感じる細胞への血液の流れも障害され、酸素・栄養などを充分供給されなくなる細胞から「音の歪(ひず)み」(音の大きくなり方や濁り方が変って感じられる状況)を生じ、音は聴えるが、言葉がよくわからないようになるばかりでなく、脳梗塞・心筋梗塞のように内耳動脈の梗塞を生じ、一瞬にして聴えなくなる「突発性難聴」を引き起こすこともある。

 この音を感じる細胞の”音の歪み”による音の大きさの感じ方の度合いは、各音の高さ(周波数)について測定することが出来、補聴器適合時に重要な要素となる。そして、この音の歪みの全体像としては、言葉の理解度の検査があり、両耳共に最良で50%以下の時には、純音聴力検査域値が70デシベル以内でも、身体障害者四級に認定され、5年毎に新しい補聴器の支給を受けられる。

 特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会(難聴者の団体で17市町村に支部を有し、会員は約4千名)の附属診療所「補聴相談のひろば」(耳鼻咽喉科)が開設されて3年余、老人性難聴の相談者には高血圧症、高脂血症などの問診(最近は予約時に住民検診や人間ドックのデーターを持参させる)と共に、食事、運動の指導を行っているが、3年前後の聴えのレベルの経過をみると、約9割の相談者は不変で、従来のように徐々に悪化することがなくなり、相談者は当然であるが、当方も非常に嬉しく、喜んでいる。

 そして、聴えが悪化しないだけでなく、言葉の理解度が改善され、各周波数における音の歪み度も改善されているのを良く見掛ける。従って、相談者は「聴えが良くなった!」と実感するが、通常の純音聴力検査では不変である(一度死滅した細胞は回復しない)。

 このように、食事の改善や運動の励行により、内耳だけでなく、全身の血流も改善しているのであろう、ニコやかに満足気で、人生を楽しんでいるように感じられる人が多くなりつつあることは、実に喜ばしいことである。

 これと共に、語音明瞭度が30~40%であった人が1~2年後には70~80%になる人も多く、これは内耳血流障害の改善だけでなく、補聴器を良く使いこなし、聴き取りうまくなったためと思われるケースで、”補聴器をつけても若い時には戻らないが、一生懸命使いこなして行くと、若い時に近くなるので、ガンバってほしい!”と自信をもって指導できるようになったことは実に喜ばしい。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年5月7日 月曜日

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