【論壇】我国の国債格付け低下と、難聴高齢者の放置

2013年6月3日 月曜日

 昔、「風が吹くと、桶屋が儲かる」との落語があったが、表題の「国債格付け低下と難聴高齢者の放置」がどう関連するのだろうか。
 年と共に殆んどの人が聴えが悪くなる。早いか遅いか個人差があるものの、殆んどの人に起る。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆んどが、補聴器を必要とするようになる。
 そして、その数は膨大で、高齢化率が二十%を越した現在、二千九百万人の高齢者が居り、その約半数が難聴なので、全国で一千万人以上、当県でも十万人以上いると推測される。
 これらの高齢難聴で適合補聴器で対応できている人は、補聴器の評判が非常に悪いため、全国で十~二十%、当県で五~十%と、殆んどの難聴高齢者は聴えないままでいる。
 年齢が進んで聴えないままでいると、コミュニケーション障害より、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物の人間は生きて行く自信・意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症になる可能性が高くなり、前述の全国で一千万人以上、当県の十万人以上の難聴高齢者の三~四割は寝たきり、認知症など要介護状態にあり、時々刻々と増加して行く。
 当県でも、これらの要介護者を家族で対応できるところは年々少なくなって来ている。
 すると、介護所を造り、介護人を雇用するなど、その費用は膨大となり、消費税など増税にならざるを得ないし、それを回避すれば国債が増えると云うことになり、世界最大の国債で成り立っている我国、「震災」「原子力発電の廃止」などで、貿易収支がすでに二ヶ月赤字化して来たことも加わって、当然国債の格付けが低下する。これに「難聴高齢者の放置」が全てとは云わないが、大いに関与していることを非常に深刻な状態と国民全体が深く認識すべき時に来ている。
 そして、この難聴高齢者問題は、私共特定非営利活動(NPO)法人「沖縄県難聴福祉を考える会」(難聴者の会)が約二十年前より提言して来ているように解決が可能である。
 まず、高齢者難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化なので、その知識を普及させ、六十歳以上は毎年聴力検査を行い、指導・管理して難聴にしないようにできる。
  難聴になったら、早期対応して適合補聴器を得られるシステムをつくる(補聴器はつければ良いというものではなく、その人の聴え方に合わせ、メーカーにより音質が異なるので、どの補聴器が良いかは本人しかわからないなど)ことにより、適切対応は可能である。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2013年6月3日 月曜日

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