聴覚障害者へ正しい理解を ー障害内容理解した手助け望むー

2008年11月4日 火曜日

 聴覚障害者=「手話」と、マスコミ(テレビ)も手話を取り入れた番組を多く流すようになり、手話ボランティアも増え、聴覚障害者への関心が高まってきたことは大変結構なことで、非常にありがたいことである。

 しかし、手話で聴覚障害者のほとんどが不自由なく、満足していると考えられているとすると、大変な間違いである。

 手話対象者は、先天性の耳の聞こえない人を中心に全国で十二~三万人。当県では1965年の先天性風疹(ふうしん)症候群の耳の聞こえない人(風疹児)約400人を入れても1500~1600人である。

 一方、先天性ではなく、普通に聞こえていて言葉を習得した後に、何らかの原因で途中から聞こえが悪くなった人たち(中途失聴者)は、人口の約4%前後。従って全国で4~5百万人。当県では4~5万人と推定される。

 この中途失聴者のうち、手話を理解できる方はごくわずかで、恐らく1%にも達しないであろう。従って、テレビの手話番組 も、聴覚障害者の大部分にはほとんど役立っていない。

 聴覚障害者の大部分、すなわち中途失聴者には、よく適合した補聴器が必要で、これによりテレビや電話や講演会(磁気ループ使用)などでよく聞けるように調整・指導していく必要があり、特に聞こえが悪くなり始めた時に、よく適合した補聴器を通して聞くことに早く慣れ、それにより人生を展開、発展させていくと良い。早くから補聴器を付けると聞こえが悪くなるというのは、合わない補聴器を使うからで、それだからと聞かないでいると、聞かなくてよい生活・人生になってしまう。

 人によっては、難聴が増強して補聴器では十分理解できなくなることもあるが、このような人は恐らく聴覚障害者の10%前後で、この人たちには「要約筆記ボランティア」の手助けが有用で、手話は本人がすでに習得していたり、本人が習おうとしないと役立たない。

 いよいよ補聴器で言葉が分からなくなった時には、「人工内耳」でかなりの人が音を取り戻せるようになるが、このような人たちには「読話(読唇)」が必要である。先天性の耳の聞こえない人にも人工内耳を適用できるが、すべてにではなく、また希望しない人もあるので、手話はやはり重要である。先天性の耳の聞こえない幼児で人工内耳により音を聞く方を選択すると、「口話」が必要で、沖縄ろう学校の、特に就学前教育では、口話を主体として、手話を使わないようお願いしている。

 このように、聴覚障害者といっても、その人その人の聴覚障害の内容によって、その対応、望まれるものが異なるわけで、その人その人に合った方法で対応してあげないとすると全く意味がなく、現状では聴覚障害者のごく一部のみへの対応でしかなく、大部分が放置されているように思う。

 聴覚障害者を一人ひとりよく理解し、その人のためになるような手助けができるバランスのとれた福祉行政、マスコミサービス、ボランティア活動であってほしいと思う。

※平成6年11月27日(日) 琉球新報「論壇」投稿 掲載


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2008年11月4日 火曜日

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