年と共に聴えが衰える人が多くなる(七十才以上で約半数、九十才以上で殆んど)。
しかし、補聴器をつけるのは恥ずかしいし、年寄と思われたくないと忌避する。また、高価で、評判が良くないと購入しない。
このようにして、聴えが不自由なままでいると、コミュニケーションが悪くなるので、友達がいなくなる、家族も段々相手にしてくれなくなり、一人きりになり、閉じ込もり、寝たきり、認知症など、人間として生きて行けなくなり、要介護状態となる。
高齢化社会が進行し、このような人が急増し、御本人が気の毒であるだけでなく、その面倒を見る人が必要となり、家族・社会に大きな負担となって来ている。
現在、高齢難聴者は、高齢化率により推計して一千五百万人~二千万人と推定され、補聴器の使用状況は全国で十~二十%、当県で五~十%と、殆んどが聴えないままでいるので、とても深刻な状況にあるが、当事者の難聴者・その家族を中心に、社会も全く関心がないので、十年後には国民の五~六人に一人は要介護状態になり得ると推計し得る。
まず、高齢難聴にならないように!近年「高齢難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化」と判明して来ているので、食事のコントロールと適切な運動で回避されよう。
現在、私共NPO法人の掲げている「百歳を越しても、補聴器不要!」を実現にすること、即ち、五十才台くらいから、職場検診や住民健診などのデーターを注目し、動脈硬化が進まないようにすることが重要である。
もし、聴えがおかしいと思ったら、すぐ耳鼻科医の診断を受け、適切に対応すること(早期発見・早期対応)が重要である。これにて、人生はそのまま継続、人によっては発展させることも出来る。
補聴器はただ付ければ良いと云うものではない。メーカーにより音質が異なるので、どのメーカーのでも良い人はそう多くない。(日本に主に流通する十二社の補聴器を用意して対応するところもある)。
そして、一人ひとり聴え方が異なるので、これを正確に測定し、その聴えに補聴器を調整してもらうこと、そして貸し出しを受け、自宅、職場などでも確認し、聴え方に満足するまで何度でも通うことが必要である。
まず難聴にならない。なったら適切に対応し、充実した人生を全うしてほしいものである。
特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)