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増大する難聴高齢者の不適切対応がもたらすもの

2008年5月1日 木曜日

 高齢者の難聴問題に注意を喚起し、難聴の予防・進行停止・音の歪み(ひずみ)(音の大きくなり方や濁り方が変り、音がストレートに聴えなくなるので、言葉がわかりにくくなる)の改善や音・言葉の聴き取り方のトレーニングなどによる言葉の理解度の改善、また補聴器を要する人のための補聴器適合(一人ひとり異なる聴え方に合わせるための調整)や補聴器の使い方の指導(装用指導)の重要性を提唱して十五年になる。

 しかし、高齢者も若者も、年をとれば聴えなくなるのは当たり前、そしてコミュニケーション障害より、家族・社会より遊離・孤立し、閉じ込もり、寝たきりとなり、人生を終わって行くのが当たり前で、これで良しとしている人が大部分であることは悲しいことである。

 確かに年齢が進み、聴えが衰えて来ると、コミュニケーション障害から、人と会わなくなり、人の目の前から消えて行くので、大部分の人が関心を持たなくなるのもわかる。

 しかし、高齢化率が二十%を越した我国では、七十才を越すと約半数が補聴器を必要とする程に聴えが衰えるので、全国で一千万人を、当沖縄県でも十万人を越す状況にある。

 この膨大な数になった難聴高齢者の八十~九十%、当県では九十~九十五%が適合補聴器を得られず(推定難聴人口と年間の補聴器販売台数よりの推計。当県某市の実態調査より実証)、聴えないままでいるので、前述の如くコミュニケーション障害より、閉じ込もり、寝たきり、認知症と、人間として生きて行けなくなるので、その結果が老人医療費の高騰、介護保険の年々の増加か介護内容の低下と、国民全体に大きく、重くのしかかっていることに気付いていない人が殆どであることは、実に悲しいことで、従って日本国全体の存亡に係る問題と認識し、対応しなければならない時期に来ていることを認識すべきである。

 冒頭に述べた如く、高齢者の難聴(老人性難聴)は予防も進行停止も可能で、音の歪みの改善なども可能となっている。そして補聴器を必要とするほどになった時には、近年私共が提唱している「難聴高齢者の早期発見・早期対応」、即ち六十五才以上で毎年聴力検査を、いずれ住民検診に組み込み(いよいよ聴えが悪くなってから補聴器を与えても、コミュニケーション障害より自分の人生に自信・希望を失ってしまうからであろう、うまく使いこなせないし、使う意欲がなくなっているため)すぐ対応すれば、レーガン・クリントンのように(この二人の大統領は大統領時代に補聴器を使用していた)、人生はそのまま継続、人によっては発展させられ、コミュニケーション良好で家族・社会と仲良く付き合って行け、正確な情報によりその時代に合った生き方を模索、亡くなる直前まで自立、人生を楽しみ、人間としての人生を全うできよう。これは一人ひとりにとって大きな差であると同時に、老人医療費軽減、介護保険不要となり得ることを認識すべき時に来ている。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2008年5月1日 木曜日
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