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難聴防止は早期発見が大切 -65才からは検診で聴力検査をー

2009年12月16日 水曜日

 年とともに聴こえが衰えてくる。早いか遅いか個人差はあるが、殆どの人に生じてくる。

 70才を超えると約半数の人が、90才以上で殆どの人が補聴器を必要とするほどになるので、いかに多いかがわかるだろう。

 聴こえが悪くなったら、補聴器ということになるが、いままで我が国には補聴器を適合させる制度がなかったため、不適合補聴器で「補聴器は駄目」とあきらめてしまっていた人が大部分である。そのため、聴こえないままでいたことにより、閉じこもり、ぼけ・寝たきりになってしまった人が多いようだ。

 しかし、今年の4月に薬事法が改正され、補聴器は「医療用具」から「管理医療機器」に規定され、販売業者は「補聴器の専門家」を有しないと認可されなくなり、販売した補聴器に責任を持つ義務が生じている。すなわち良く聴こえない補聴器の場合には、それを業者に訴えれば業者は聴こえるようにする義務が生じてくることを熟知し、良く聴こえるようになるまで、訴え続けるべきである。

 私ども、難聴当事者の組織である「沖縄県難聴福祉を考える会」は約12年前から、不適合補聴器で悩まされている難聴者に対応してきているが、いよいよ聴こえが悪くなってから補聴器を適合させ、装用指導(補聴器に慣れ、使いこなすための指導)を行っても、なかなか使いこなせない人に多く遭遇する。

 そのような人たちと接して思うのは、聴こえなくなってきたことにより、どうも人生はもう駄目だな、終わりだなと思いだしているのではないか。聴こえなくなって、周囲とのコミュニケーション障害を含め、自分で自立して生きていく自信を失い、”何かをしたい”という意欲までなくなってしまっているように思える。

 一方、聴こえが悪くなりだしたときに、すぐに補聴器で対応すると、特にまだ現役であったり、社会的な活動をしていると、それを続けるため、すぐ補聴器を使いこなしてしまう。これにより、人生は停滞することなく、そのまま継続できるし、人によっては発展もさせられ、閉じこもりや、ぼけ、寝たきりにならず、恐らく亡くなる直前まで自立し、生きがいを持って、充実して生きていけるようになろう。

 すなわち、早期発見、早期対応の重要性、必要性を感じ、昨年後半から対応を始めている。

 具体的には、老人クラブ、ミニデーサービス、自治会などに出張し、全員の聴力検査を行うようにしている。自分はまだ大丈夫といっていた人がかなり悪かったり、自分はそろそろと思っていた人がほぼ正常だたり、自覚と実際とが異なる人もかなり見られた。

 最終的には、住民検診に組み込み、65才以上からは毎年聴力検査を行うべきと、認識する地域に話し掛け始めている。

 このように、難聴になってもすぐ対応する社会になり、ぼけ、寝たきりなどを防止し、ほとんどの人が死の直前まで自立し、生きがいの持てる社会の実現は可能と思っている。

  ※2005年(平成17年)5月26日 琉球新報「論壇」投稿 掲載の文


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  • 投稿日:2009年12月16日 水曜日

聴覚障害者は自己主張を -大切な「聞こう」とする意欲

2009年12月1日 火曜日

 福祉の充実が叫ばれて、種々の施策・提案が実施・実現してきていることは喜ばしいことであるが、聴覚障害者に関連するものは相変わらず蚊帳の外である。ほとんどが提案する場も与えられず、一番遅れたままに放置されている現実をいかにしたらよいのであろうか。

 これは、聴覚障害者は人目につかないし、自分が聴覚障害者であることを隠す人が多く、特にお年寄りの場合 には、自分はもう年だからとあきらめてしまう人がほとんどだからであり、その不満、不自由さを世間に訴えないからである。

 しかし、70才代以上になると、約半数の人が補聴器が必要なほどに聞こえが悪くなってきており、それをそのまま放置しておくと、コミュニケーション障害だけでなく、生きがいを、生きる意欲を失い、「寝たきり」「痴呆」につながってくることは、先年の当県の「長寿世界一宣言」の際に露呈している。そして、その可能性は当県のように高齢化が進んでいる地域では最も頻度が高く、その障害者数は前述のごとく高齢者の約半数であるから、他の障害者に比し、はるかに多数であり、ほとんどの人にその可能性がある。

 ただ、自分がなっていない時は関心がなく、なりつつある時には補聴器は年寄りくさいから、格好悪いからと敬遠し、いよいよ聞こえが悪くなると年だからとあきらめてしまい、世間にアピールしないので、世間の人々も特に対応を考える必要もないと思っているわけである。

 そのために多くの人の人生が聞こえが悪くなっただけで、補聴器適合制度が確立し、磁気ループ設置などの社会施設が整っている欧米先進国と異なり、活力を、生きがいを、生きる意欲を失う方向になってしまっているのは、実にやりきれないことである。

 磁気ループとは、補聴器はせいぜい三メートルぐらいまでの音しか拾わないので、講演会などでは講演者の声は聞こえないが、会場に磁気ループを張りマイクシステムに接続し、そのループ内に入り補聴器を調整すると、マイクの音を直接補聴器の中に入れることができる装置である。欧米先進国では、公共の集会場、講演会場、劇場、音楽会場に設置されているのが常識となっている。

 聴覚障害者の方々は、聞こえが悪くなっても、絶対にあきらめないでほしい。現在の医学水準では、補聴器を適合させ、さらに必要によって「ききとり訓練」を行い、また人工内耳を活用すれば、現時点でも聾(ろう)者を含め98.9%以上の聴覚障害者が言葉によるコミュニケーションを獲得できる。(不幸にして聾で出生しても、現在ではその70%以上は人工内耳で言葉によるコミュニケーションにより、健聴者と同じに生活ができるようになってきている。)

 現在、「手話」や「要約筆記」が充実してきたことは重要なことではあるが、あまりこれに頼りすぎて、聞く意欲を失ってしまうと、前述の「ききとり訓練」や「人工内耳」が成功しなくなるので、聞こうとする意欲を失わず、聞こえるようになるために、どのようにしてほしいか、世間にアピールしていただきたいものである。

 ※1996年(平成8年)11月21日 琉球新報「論壇」投稿 掲載の文


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