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【論壇】高齢難聴者放置がもたらすもの

2014年12月5日 金曜日

 私共の難聴者の会「特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会」が提唱して来た“補聴器適合運動”の中で、高齢者難聴の放置が閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がり、現状から四~六百万人と推計して来たが、この推計数と先日報道された厚生労働省研究班の認知症の推計数とがほぼ一致しているのは当然とも言える。
 

 高齢化率が二十%を越し、三千万人以上の高齢者の約半数が難聴で(七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどが補聴器を必要な程に聴えが衰える)、全国で一千四~五百人、当県で十四~五万人の高齢難聴者の中で補聴器使用者は十~二十%、当県で五~十%、即ち大部分の高齢難聴者は聴えないままで、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物の人間は生きる意欲、生きがいを失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がって行く。
昨年、九州の某認知症施設より、収容認知症の“八十%以上が難聴”で、認知症との関係があるのではと問い合せがあったが、“難聴の放置が原因”と考えられた。
 

 補聴器の使用が少ないのは、我国に適合補聴器供給制度が確立されていないためで、一人ひとり聴え方が異なり、メーカーにより音質が異なるので、購入前にこれを確かめる必要があり、また補聴器の使い方を特に高齢者はよくトレーニング(装用指導)しておかないと使えない。(ドイツの補聴器屋さんには訓練室が数室あり、使えるようになる迄、聴覚が不十分な人には読唇の指導まで行う。)
 

 近年、この高齢者難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化によることがハッキリして来た。従って予防が可能(私共難聴者の会のキャッチフレーズは「百歳を越しても補聴器不要にしょう!」)、ある程度悪くなってもそこで止められる(補聴器使用では、聴えが良い方が補聴器をうまく使える)、更に最近“音は聴えても、言葉がわからない(高齢者難聴の特徴の一つ)”も、内耳の血流障害が改善されると、音を受け取る細胞の機能が改善、音の歪み(音の大きくなり方が変り、正常者が「一」大きくなったと感じるのが数倍に感じられる現象)(補充現象)が改善され、言葉がわかり易くなることもわかって来た。
 

 まず難聴にならないように、なってしまったら適切な時期に適切な補聴器を獲得し、亡くなる直前まで自立、人生をエンジョイ、人間としての人生を全うしてもらいたいものである。

 

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2014年12月5日 金曜日
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