【論壇】高齢難聴者の放置が認知症を招く

2015年2月10日 火曜日

 年と共に聴えが衰えてくる。七十歳以上で約半数が、九十歳以上で殆んどの人が補聴器を必要とするほどになる。

 高齢化率が二十%を越し、七十歳以上が三千万人を越した我国では、約千五百万人が、当県でも約十五万人が難聴と推計され、その八十~九十%が、当県では九十~九十五%が補聴器不評のため使用していないので、コミュニケーション障害により、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物の人間は生きがいや生きる意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症など、人間として生きて行けなくなると推察される。

 一人ひとり聴え方が異なるし、またメーカーにより音質が異なるので、これらを調整・選別して「適合補聴器」が得られれば、人生はそのまま継続、人によっては発展させられ、コミュニケーション良好で、家族・社会と良好に付き合い、正確な情報を得られるので、亡る直前まで自立、人生をエンジョイ、人間としての人生を全うすることが出来、これを理解する人が徐々に増えていることは喜ばしいが、片や前述の如く、人生を駄目にしてしまう人が未だ大多数で、このための介護費・医療費で増税など、国民生活を圧迫する状況になっているのは残念である。

 先般の厚生労働省の研究班の推計では、老人性認知症が四~五百万人の由、私共の推計でも殆んど同じと推計されているが、その大部分(八十~九十%)は「難聴の放置」によるもので、本来の認知症(アルツハイマーなど)はせいぜい十~二十%と推察され、認知症収容施設での聴力検査でも八十%以上が難聴であったと云う。

 高齢難聴者の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化による血流障害で、従って、予防が可能、進行停止も可能(同じ補聴器を使用するにも、聴こえが良い方がうまく使える)、更に音の歪み(聴覚細胞の障害により音の大きくなり方、濁り方が変り、音は聴えても言葉がわからない―高齢難聴者の特徴―、この歪み度の程度は測定可能で(正常者の何倍になっているか)、言葉の理解力の検査と併せて判定し、まずその対処を検討(補聴器は基本的には音を大きくするが、言葉をわかるようには出来ないが、その対処は可能)、併せて内耳血流障害の改善を指導する。

 まず難聴にならないように、なったら適合補聴器を獲得、亡る直前まで自立、人間としての人生を全うしてもらいたいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2015年2月10日 火曜日

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