【論壇】音は聴こえるが言葉がわからない!

2019年5月28日 火曜日

 最近、難聴者の中で、“音は聴えるが、何を言われているのかわからない!!”と云う人が増えて来ている。

 これは、音を感じる細胞の機能障害により音の歪み(正常な人が“1”大きくなったと感じるのが、“2~3倍”、人によっては“5~10倍”に感じる現象―これは何倍になっているか測定可能―)が生じているからで、多くは内耳動脈の血流障害と考えられ、私共の患者さんの十数年の経過観察から、これが進むと動脈硬化が進み、言葉が益々わからなくなり、難聴が進行するのが、わかって来ている。

 言葉の理解力の状態は、この音の歪みだけでなく、言葉の検査(最良語音明瞭度検査)にて、「ア」とか「ウ」とか五十音を聴いて、どの位正確に答えられるか、正常者は当然百%だが、これが七十%、五十%、三十%と低下してくると、現在の補聴器は音を大きくはするが、言葉の理解力は殆んど改善し得ないので、特に三十~二十%以下になると、補聴器を使用しても会話が殆んど不能となる。

 このような状態になった時には、「人工内耳の埋め込み手術」にて改善可能で、聴え方が国が定めた基準に達すれば無料で、保険診療・高額療養費制度にて、所得にもよるが十数万円の自己負担で受けられるようになって来たのは朗報である。

 しかし、これ程迄にならないようにするには、内耳動脈の動脈硬化にならにように、進行しないようにする必要があり、私共の診療では、初診時に検査データーを持参してもらい、特に脂質系物質(コレステロール、中性脂肪など)などをチェック、指導をするようにしている。

 そのためか、私共の患者さんの八~九十%は、この十年以上難聴が進まず、言葉の理解力が悪化していく人はいない―補聴行政で最も進んでいるドイツでは、一年に一度の補聴器チェックが法律となっているが、恐らくドイツ人の食生活はカロリー価が高いので、動脈硬化が進み、難聴が進むからと考えられる。

 高齢者難聴は、恐らく四十才台ぐらいから始まるようで、人間ドックなどの聴力検査をみると、高音部の聴力低下が多く認められ、内耳の聴覚細胞の配列から考え、血流末端の高音領域の細胞から難聴が始まるのがわかる。

 従って、四十才台から、定期的な聴力検査を行い、指導を行えば、高齢者難聴の大部分は予防が出来るのではないかと考えている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授


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