聴覚障害者へのいたわりを -相談センター2年を通してー

2009年1月6日 火曜日

 一昨年六月に「沖縄補聴相談センター」を開設して二年が経過した。

 補聴器適合は、一回では終わらない。初回の適合はあくまでも出発点で、一人ひとりの生活音・環境音や、一人ひとりの聴こえのひずみ(にごり)具合が異なるので、数回調整しなければならない人もいる。また当初は感覚を中心にして、なれてきてから段々と理論値にしていった方が良い人もある。その後も、半年か一年に一度は聴こえと補聴器をチェックするように指導している。従って、今や相談者は再来者の方が三~四人に新来者が一人といった割合で多くなってきているが、この二年間で新来者のみで千人を超えたということは、このセンターが聴覚障害者にいかに必要とされてきているかを痛感させられている。

 さて、この二年間の当センターのいろいろな対外活動(�地域社会への出張相談ー常設または定期的相談を行うところも出てきている�老人ホームでの相談�在宅出張相談ー地域社会で常設されてきているところでは、民生委員や地域コーディネーターの協力により、多用されてきているー、また�”だれにでもわかる”「補聴器の取り扱い方法」の教育ビデオ作成-NHK厚生文化事業団「わかば基金」によるー とそのビデオの各地域老人クラブなどへの無料配布、など)を通して感ずることは、われわれ社会のこれら聴覚障害者への対応状況である。大部分の人は意識はしていないが、聴覚障害者を差別し、社会から抹殺してしまっていると思えるような現実である。家族でさえも、聴こえないのだからとか、補聴器を与えたのだからとかで、良く話し合い、わかり合うことをしていないのをよく目にする。あまりよくわからないから、ついついイライラして怒鳴ってしまうというが、もし足などが悪くてよろめいたりしたら自然に手を差しのべるように、はっきり、ゆっくりわかりやすいように話してあげてほしいものである。

 従って、聴覚障害者は自分が聴こえが悪いこと、悪くなりつつあることを、世間に悟られまいとする。悟られると人との付き合いの上でも、仕事の上でもハンディを背負わされてしまうからである。

 逆に、悟られまいと振る舞うので、世間一般の人は、聴こえの悪いこと、それによりどのような困難があるかが、他の心身障害者のようにはわからないのも事実である。従って、聴覚障害者への理解がなく、聴覚障害者の福祉が一番遅れているといわれるような状況になってしまっているのもこのためである。

 この悪循環をどこで断ち切り、どのように改善していったら良いのか。

 高齢化社会は、確実に進行している。年齢の進行とともに、聴覚障害者は確実に増えていっている。これはだれにでも起こり得ることなのである。明日はわが身かも、そしてその時、われわれ社会は、家族はどう対応してくれるのだろうか。心もとなく感じているのは、私だけだろうか。

※平成7年 6月13日(火) 琉球新報「論壇」投稿 掲載
当会「特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会」の前身である「沖縄補聴相談センター」が
平成5年6月に那覇市安里に 設立され、2周年が経過した際の投稿掲載文です。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2009年1月6日 火曜日

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