難聴高齢者にわかり易い声、わかりにくい声

2011年11月4日 金曜日

 高齢社会が進行、難聴高齢者が増えている。一言、二言で難聴か否かわかるはずなので、なるたけ真正面より、口唇が見えるようにして、ハッキリ、ユックリ話してあげると良い。
 一方、“わかり易い声”と小生のように“わかりにくい声”があり、難聴の方々より、特に電話などでは、誰かに代わってほしいとよく言われる。
振り返ってみると、小生は“士族の長男”として生れ、“男は一生に三言”と、しゃべってはいけないと戦前迄は教育されて来た。
従って、発声法など、意識したことはなかったが、戦後になって世の中が変っても、無意識のうちに“自分の発声が悪い”と認識していたのであろう、“人と話す”のを避け、人前で話すことなどが絶対に起らないよう行動していたが、教授職を拝命して難儀が始った。
 しかし、正しい発声はオペラ歌手などのように、生理的発声法の訓練を受けないと獲得できず、従って一般の人は親の声や周囲の人の声をまねただけなので、九十九%以上の人は大かれ少なかれ発声法が間違って居り、わかりにくい声になり易いし、声帯炎、声帯ポリープなどノドの疾患を起し易くなるが、発声法を矯正するだけで、声帯ポリープなどが切除しなくても消失してしまうことが多い。
 一方、難聴者にも、“音は聴えても、言葉がわからない”と云う現象が大かれ少なかれ起って居り、高齢者難聴に特徴的と云えるが、或る難聴者はこのためモノレールの“古島”のアナウンスが“イリジマ”と聴えるという。これは、内耳の血流障害による音を感じる細胞の障害による“音の歪み”によるもので、どの程度“歪んでいるか”は代表的な音について検査できるし、その全体像として“語音明瞭度検査”(五十音でどのくらい正解できるかの検査)にてその理解度が判定できる(この音の歪みは、内耳の血流を改善させると改善されることも判明している)。
 そこで、まず高齢者には「食事のコントロールと運動の励行」により難聴にならないように(出来れば四~五十才台より心掛けると良い)、そして、内耳の血流を良くすることにより言葉がわかり易く出来る。
わかり易い言葉を話すには、小児期より発声法を訓練する時間を教育の中に取り入れること、これにより高齢難聴者対応だけでなく、自己を主張しないと通じない近代国際社会を生き抜くために、話法の習得と共に非常に重要なことと実感する昨今である。

NPO法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2011年11月4日 金曜日

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