聴覚障害者へ関心をもとう -思いやり・勇気づける社会をー

2009年3月18日 水曜日

 「手話」に関心が持たれるようになり、手話サークルが各地で活発な活動を展開し、役所や警察なども、聴覚障害者のために取り入れるところも増えてきた。

 また、劇画の世界にまで登場するようになった由。テレビ(まだ当県ではごくわずか)や、飛行機での非常用設備の案内」のビデオにも入ってきており、聴覚障害者のために社会が気遣うようになり、対応してきていることを、心から喜ぶものである。

 しかし、ここまできたのなら、さらにもう一歩進めて、聴覚障害者全体に気遣い、思いやり、対応する社会になってほしいと思う。

 というのは、手話対象者は聴覚障害のごく一部にすぎないからである。一般に聴覚障害者は、人口の約4%といわれる。従って当県では、4~5万人の聴覚障害者が存在すると推定される。

 この中で、手話対象者は先天性ろうを中心に、将来自分が全く聞こえなくなったときのことを考え、手話を覚えて準備している人を入れても、二千人弱、すなわち聴覚障害者の4、5%にすぎず、従って95,6%の聴覚障害者は補聴器対象者で、手話は理解できない。

 ところが、毎年の補聴器の販売実績をみると、当県でみても全国的にみても、補聴器が必要な方の5分の1か10分の1ぐらいしか使用されていない。

 しかも、その使用者が合わない補聴器を3個も4個も持って、難渋させられている現状を踏まえて、補聴器適合運動を約2年前からマスメディアの協力を得て展開してきていることは、ご存知の通りである。

 この件に関しては、当県の聴覚障害者にもだいぶ認識されてきているが、聴覚障害が高度の方や内耳障害による聞こえの歪み(にごり)がひどく、音は聞こえるが言葉が十分に理解できない人が、補聴器対象者の10~15%存在し、この人たちには「要約筆記」のボランティアの手助けが必要ということになる。

 そして、テレビや教育ビデオなどでは(飛行機の「非常用設備の案内」のビデオなども同じ)、先天性ろう者や高度難聴者(聴覚障害者の15~20%)に「字幕スーパー」が必要であることを十分認識していただくよう、関係各位にお願いしたい。

 このように、聴覚障害者の一人ひとり異なる障害の内容により、その対応が異なるわけで、聴覚障害者自身が分からないからと簡単にあきらめないで、勇気を持って自分には何が必要かをアピールしていただくことが重要である。それにわれわれ社会が、その事情を良く理解して、柔軟に対応していくようになるべきであると思う。

 そして、どのような対応でも、基本は「いたわりの気持ちで接する」ことで、はっきり、ゆっくり、分かりやすく話したり、表現してあげてほしいし、ともに社会を形成し、参加するよう勇気づけてあげてほしいものである。

 いよいよ高齢化社会に突入するに当り、聴覚障害者も社会も互いに気を配り、万民に住み良い人間社会を発展させていってもらいたいものである。
  ※平成7年 7月12日(水)沖縄タイムス「論壇」 投稿 掲載文です。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2009年3月18日 水曜日

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