補聴器装用指導の重要性

2007年7月17日 火曜日

 特定非営利活動(NPO)法人「沖縄県難聴福祉を考える会」の附属診療所「補聴相談のひろば」として補聴相談を再開して四年が経過した。相談医として、このように集中して多数の補聴器装用者に対応したのは初めてのことなので、気付いたことを記しておく。

 まず、補聴器の装用指導(補聴器に馴れて充分に使いこなすための訓練)の重要性である。一般に補聴器はつければ良いと思われているが、 一人ひとりの聴え方が異なるのでそれを測定し、それに補聴器を適合・調整して行かなければならない。このようにしても、当初は十~十五分聴いたら三十分~一時間休まないと、良く聴えるだけにのぼせたり、疲れたり、頭が痛くなったりするので、指導に従い徐々に、厭にならないように馴れ使いこなして行く必要がある。周囲の人も当初は一~二メートル以内で真正面よりハッキリ・ユックリ・話している口を見えるようにして話してあげる心遣いが重要である。このようにして、補聴器が身体の一部になるように使いこなすのに、個人差もあるが半年~一年かかる人もあり、両耳にする時にはこの時点から他側を訓練し始める。従って、当初より両耳に、しかも適合していないと、頭痛などのため、もう二度と補聴器を使いたくないと云うことになり、当県ではこのようなお年寄り非常に多い。

 また、補聴器を良く適合させ、装用指導も行ったはずなのに、補聴器を使用していないお年寄りが可成り存在する。使い方がわからなくなった、一寸したことで聴えなくなったので、又はうるさくなったので、等等。そこで、私共は適合のあとのチェックを、その人その人により異なるが、当初は一~二週間単位でこまめに行い、使いこなして行けるのを確認して指導するようにしている。補聴先進国のドイツの補聴器店には、この装用指導の訓練室が数室あり、補聴器を販売していると云うより、難聴者のコミュニケーションを良好にするために機能していると感じられた。

 また、不適合補聴器を、そのうち馴れますよと、我慢して使い続けていたために、血圧が上がって、また肩こりや頭痛などがひどく治療を受けている、中には精神科に通院していた人までいて、補聴器を適合させたら、全て改善・治癒してしまったこともあった。難聴を克服し、人とのコミュニケーション良好に、社会参加をと、積極的に人生を生き抜こうと云う気概は立派であるが、自分の身体を害してしまっては元も子もない。

 補聴器は単につければ良いと云うものではない(子や孫が難聴者抜きに買い与えるものではない)、聴えを測定するだけではなく、治療により改善し得るものが可成りあるので医学判定を受ける必要がある、補聴器適合だけでなく装用指導を受ける必要があるなど、難聴者だけでなく社会全体が認識し、難聴高齢者が増加する高齢社会を、コミュニケーション障害により社会・家族より孤立させ、ボケ・寝たきりに追いやるのではなく、高齢難聴者も活気に満ちた社会にする必要がある。


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2007年7月17日 火曜日

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