■ ブログアーカイブ

【論壇】聴覚障害による身体障害者の補聴器支援とその更新

2017年7月14日 金曜日

 先般、那覇市在住の「聴覚障害による身体障害者」に、「身体障害者手帳の再認定について」市役所より通知があった。

 確かに、私共が「身体障害者認定申請診断書」を作成する時、「再認定」を何時行うか記載するようになっているので、補装具(補聴器)更新の“五年”を目途に記載して来たが、今迄五年後の更新時に更新手続きが行われていないと、催促の通知を受けたのを知ったのが初めてなので、身体障害者の福祉が後退しつつあることが感じられる昨今、非常にすばらしいことと、感心させられている。

 「聴覚障害による身体障害者の補聴器支給」の五年毎の更新は、補聴器耐用年限と云うより、聴力悪化を前提に決められて来ていると思われるが、近年高齢社会が進行、年齢変化による難聴並びにその進行(近年、その大部分は内耳の血管の動脈硬化による血流障害と判明)停止できるようになって来ているので、私共NPO法人では、食事のコントロールと運動励行にて、動脈硬化が進まないよう、即ち難聴が進まないように、六ヶ月毎の聴覚分析を行い、具体的な指導をして来て居り、これを守っている患者さんは聴覚が悪化しなくなるのを確認している(補聴器行政が一番進んでいるドイツでは年一度の補聴器チェックが法律で制定されているが、現代の私共の知見より、彼らの食生活から動脈硬化が進行するので、難聴が進行し、補聴器の調整が必要になってくるのは、頷ける)。

 聴覚障害による身体障害者認定は、両耳の聴力がそれぞれ七十㏈(デシベル)以上で六級、八十㏈以上で四級、九十㏈以上で三級、百㏈以上で二級、また両耳の語音明瞭度(言葉の理解力。日本では五十音を使用)が両耳共に五十%以下になると、身体障害者四級に認定され、補聴器が支給され、五年毎に更新される。

 他の障害がある時には、それぞれの等級に指数があり、これを合算して等級が決定され、障害年金が支給されることもある。
 
 当県では、この聴覚書障害による身体障害者認定率は、医療の充実の経緯により他都道府県の五十%と低いので、認定を推進すべきと思っているので、地域の実情を把握している民生委員の方々などは、地域に衆知してほしいと思う。

 前述の如く、年と共に起る難聴の大部分は、耳の血管の動脈硬化と判明して来ているので、まず難聴にならにように、なったら適切な検査を受け、対応してほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年7月14日 金曜日

【論壇】補聴器活用の重要性

2017年6月16日 金曜日

 一般に、年と共に聴えが衰えてくる。七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどが補聴器を必要とするになるので、高齢化社会が進行した現在、膨大な数になっている。

 しかし、難聴を自覚し始めても、補聴器をつけたがらない人が多い。恥ずかしいから、格好が悪いとか、人に“ミンカー”と云われたくないとか、補聴器は高いし、購入しても、うまく使えないなど評判が悪いからなど!!

 このようにして聴えないままでいると、周囲から段々相手にされなくなり、友人も減って行き、いずれは社会・家族より遊離・孤立し、閉じ込もり、寝たきり、認知症などになり、要介護状態になり易くなる(日本の認知症の八割は高齢難聴者の放置によると考えられる、従って、これを充分理解し、自分を認知症などに追い込まないようにしてほしい)。

 まず、この高齢者難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化によるものなので、予防が可能である。従って、理想的には、五十才台後半ぐらいからは、自覚はなくても、聴覚分析を受け、動脈硬化による変化が始まっていれば、それに応じた対応をしていると、私共が現在提唱している“百才を越しても補聴器不要”が可能となろう!

 補聴器の要否は、補聴器の貸し出しを受け、あった方が良いかを判定すると良い。

 補聴器があった方が良いと感じた時は、メーカーにより音質が異なるので、どの社のものも同じと云う人もないではないが、貸し出しを受け、どのメーカーのものが合うか確認する(県内には日本の代表的補聴器十二社のものを順繰りに貸し出すところもある)。

 補聴器を付けたら若い時に戻るわけではない。まず、補聴器の使い方を良く指導してもらう(選別の段階により始っているが)、特に電話は補聴器により、音の取り入れ場所が異なるので、それに合わせなければならない。

 電話やテレビの音が、補聴器だけでは不充分な場合は、集団補聴装置の磁気ループなどがあり、補聴器を磁気ループ用に切り替えると(日本の補聴器の半分にこの切り替え装置がついている)。約一万円程度の費用で整備、電話で話が出来、テレビの声を家族と同じ音量で聴えるように出来る (県内には体験者が補聴器の使い方や、磁気ループ設置などをアドバイスしてくれるところもある)。

 長寿社会、百歳は当り前、百二十才迄は可能性があるので、それまで自立して、人間としての人生を全うしてほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


【論壇】聞こえが悪くなったら、どう対応すべきか!

2017年5月25日 木曜日

 年と共に聴えが衰える人が多くなる(七十才以上で約半数、九十才以上で殆んど)。

 しかし、補聴器をつけるのは恥ずかしいし、年寄と思われたくないと忌避する。また、高価で、評判が良くないと購入しない。

 このようにして、聴えが不自由なままでいると、コミュニケーションが悪くなるので、友達がいなくなる、家族も段々相手にしてくれなくなり、一人きりになり、閉じ込もり、寝たきり、認知症など、人間として生きて行けなくなり、要介護状態となる。

 高齢化社会が進行し、このような人が急増し、御本人が気の毒であるだけでなく、その面倒を見る人が必要となり、家族・社会に大きな負担となって来ている。

 現在、高齢難聴者は、高齢化率により推計して一千五百万人~二千万人と推定され、補聴器の使用状況は全国で十~二十%、当県で五~十%と、殆んどが聴えないままでいるので、とても深刻な状況にあるが、当事者の難聴者・その家族を中心に、社会も全く関心がないので、十年後には国民の五~六人に一人は要介護状態になり得ると推計し得る。

 まず、高齢難聴にならないように!近年「高齢難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化」と判明して来ているので、食事のコントロールと適切な運動で回避されよう。

 現在、私共NPO法人の掲げている「百歳を越しても、補聴器不要!」を実現にすること、即ち、五十才台くらいから、職場検診や住民健診などのデーターを注目し、動脈硬化が進まないようにすることが重要である。

 もし、聴えがおかしいと思ったら、すぐ耳鼻科医の診断を受け、適切に対応すること(早期発見・早期対応)が重要である。これにて、人生はそのまま継続、人によっては発展させることも出来る。

 補聴器はただ付ければ良いと云うものではない。メーカーにより音質が異なるので、どのメーカーのでも良い人はそう多くない。(日本に主に流通する十二社の補聴器を用意して対応するところもある)。

 そして、一人ひとり聴え方が異なるので、これを正確に測定し、その聴えに補聴器を調整してもらうこと、そして貸し出しを受け、自宅、職場などでも確認し、聴え方に満足するまで何度でも通うことが必要である。

 まず難聴にならない。なったら適切に対応し、充実した人生を全うしてほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)

 


【論壇】補聴器をつかいこなすために知っておきたいこと

2017年5月10日 水曜日

 高齢化社会が進行、高齢難聴者が増えている。七十才以上で約半数が、九十才以上で殆どが補聴器を必要とするようになる。早いか遅いか個人差があるが、殆どの人がなる。

 そこで、補聴器と云うことになるが、補聴器はただ付ければ良いと云うものではない。

 メーカーによって音質が異なるので、どれでも変りないと云う人もあるが、その補聴器で良いのかどうかは、御本人にしかわからない。
そこで、まず聴え方を正確に測定し、それに合うよう補聴器を調整し、貸し出しを受け、そのメーカーのもので良いかどうか確認する必要がある(県内には、日本に流通する十二社の補聴器を貸し出すところもある)。

 次に、補聴器の種類により異なるが、その装着の仕方や調整の仕方、また電話の使い方(補聴器により、音を取り入れる部位が異なる)など、よく指導をしてもらう(装用指導)(県内には体験者が色々とアドバイス・指導をしてくれるところもある)。

 難聴が進んでいる時には、家族や周囲の人達がこれをよく理解し、特に当初はなるたけ真正面から、必要により口唇が見えるようにして、ハッキリ、ユックリ話してあげる必要がある。(絶対怒鳴ってはいけない!聴いてやるかとの気にさせてしまう可能性がある!)。

 補聴器を装着したら、若い時に戻るわけではない!補聴器の限界があり、一般に五メートル以上離れると、良く聴き取れない。従って講演会などでは話し手の五メートル以内にいること、大きな会場でスピーカーが何処に設置されているかを聞いて、その五メートル以内に入るようにすると良い。
 
 これを解決する“磁気ループ”と云う集団補聴装置などがあり、マイクの声を直接補聴器の中に入れられる(日本の補聴器の約半数にこの切替装置がついている)。(集団補聴には、赤外線方式やFM方式もあるが一般に実用的ではない)。

 この磁気ループはテレビや電話に一万円以内の安価な装置で活用でき、前述の体験者が設置まで協力してくれるところもある。
近年、高齢者難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化であることが判明して来ているので、難聴になってからではなく、五十才台頃より聴覚分析を受け、百才を越しても難聴にならないように指導してもらえるし、悪くなっても、悪化させないようにでき、補聴器の買い替えをしなくて済むようにできる。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年5月10日 水曜日

【論壇】集団補聴装置・磁気ループの社会整備の重要性

2017年4月7日 金曜日

 マイクの声を直接“補聴器”の中に入れる〝磁気ループ〟と云う集団補聴装置がある。

 我国では難聴者の集まりなどで使われるが、殆んど知られていない。しかし、欧米先進国では、集会場、講演会場、劇場、音楽会場などに設置されているのが常識で、難聴になってもお芝居などを楽しんだり、また、役所、銀行、病院などの窓口に設置されているので、一人で物事を処理出来るようになっていて、難聴者が自立できるようになっている。

 高齢社会が進行、高齢難聴者が急増の現在、この社会整備は非常に重要である。

 集団補聴装置には、磁気ループ以外に、赤外線方式やFM方式もあるが、それぞれ個々に高価な特殊な補聴装置が必要で、磁気ループでは、一般に使われている補聴器を磁気ループ用に切り替えれば良い(日本の補聴器の半分以上に切り替え装置がついている)ので、安価で早道である。

 国際磁気ループ会議が先進十五カ国を中心に、毎年開かれているが、補聴器の普及が悪い我国にお呼びがかからず、日本の学会も関心がないようで出席を要望しているが、未だに代表を送れない状況にある。

 この国際会議が二〇〇九年の会議で、①補聴器や人工内耳には、磁気ループ対応の“Tコイル”を装置すること、②公共施設に磁気ループ対応装置を設置することを義務化する(いくつかの先進国では、法律で決めている)、③耳鼻咽喉科医師並びにその関連者は、“磁気ループの利便性”を説明すること、④駅など交通機関の案内に磁気ループを活用すること、などを決定している。

 “磁気”というと、心臓のペースメーカーに影響するのではと心配する人が多いが、極く微量な磁気なので、影響は全くなく、安全なものである。

 この磁気ループは、テレビや電話などに設置することにより、家族と一緒にテレビを楽しんだり、核家族が多くなった現在、電話での連絡が可能となる(費用は一万円前後)。

 私共の診療所の待合室には、当法人の役員が、経験者として補聴器装用指導を行ったり、磁気ループなどの説明・指導・貸し出しをして、実際に活用出来るかを確認してもらったり、必要により設置協力を行っている。

 最近、この磁気ループをバスに設置することが可能となって来たので、観光バスに設置し、沖縄観光の推進の一助にしてはと、関係者と検討中である。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年4月7日 金曜日

【論壇】高齢難聴者の放置は認知症を招く

2017年3月8日 水曜日

 高齢化社会が進行、高齢者難聴が増えている。七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどが補聴器を必要とするようになる。早いか遅いか個人差があるが、殆んどの人に起る。

 ところが、我国には一人ひとり異なる聴え方に、補聴器を合わせる制度が確立されていないため、自分に適した補聴器が得られず、聴えないままでいる高齢者難聴が多い。

 高齢化率が二十%を越し、七十才以上が三千万人をはるかに越している我国では、全国で二千万人に近い高齢難聴者が存在し、その三~四割は聴えないままでいるので、コミュニケーション障害より、社会・家族より遊離・孤立、精神的動物の人間は生きがい・生きる意欲を失い、「閉じ込もり」「寝たきり」「認知症」など、人間として生きて行けなくなり、要介護状態になる人が増えて来ている事を実感されている方が多いと思われる。

 九州のいくつかの認知症の施設での調査を総合すると、日本の認知症の約八割は高齢者難聴の放置によるもので、アルツハイマーなど本来の認知症は二十%前後と思われる。

 近年、高齢者難聴の大部分は内耳を養っている血管の動脈硬化によることがハッキリして来た。従って、健康管理を行い、動脈硬化にならないように、進行させないように指導しているので、私共の診療所の難聴患者の八十%は、難聴が進行はなくなったし、その前触れであり、動脈硬化による内耳の血流障害の度合いを反映する耳鳴り、メマイ・フラツキがなくなる患者さんが増えてきている。
 
 このような指導は、当法人の活動として行っている講演会や補聴相談会以外にも、希望する老人クラブや自治会などで、無料の講話と全員の聴力検査を行い、一人ひとり指導をするようにして居り、すでに三百ヶ所以上で行い、その効果を上げつつある。

 前述の如く、高齢者難聴の発症・悪化は、耳を養っている血管の動脈硬化によるものが大部分なので、食事のコントロールと運動の励行が重要で、また定期的な聴力検査(聴えのレベルと内容―音は聴えても言葉がわからない。これは内耳動脈の血流障害で起り、その程度は測定可能で、言葉の検査でその理解度が判定できる)を行い、悪化させないように、一部改善も可能である。

 長寿社会、百才は当たり前、百二十才迄は可能性があるので、それを人間として活発に生き抜いて行ける社会にしなければと考える昨今である。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年3月8日 水曜日

【論壇】耳鳴りは難聴の前触れ!?

2017年1月16日 月曜日

 五~六十歳頃より、耳鳴を訴える人が多くなる。しかし、耳鳴は本人にしか聴こえないので、研究がなかなか進まない。(他人に聴こえる“他覚的耳鳴”は、原因が解ることが多いので、適切な加療が可能である)。

 小生が現役時代、小生自身の体験から、耳鳴が内耳の血流障害が改善すると軽減・消失するので、耳鳴患者約三百名にその可能性を説明して血液検査を行い、中性脂肪が高いと耳鳴が起こり易いこと、そしてそれを薬で下げると、三~四割が消失、五~六割は軽くなって気にならなくなった。

 現在、小生が相談医を務める「特定非営利活動(NPО)法人“沖縄県難聴福祉を考える会”附属診療所“補聴相談のひろば”」の患者さんには、この“高齢者難聴(耳鳴あれば全員測定)”と動脈硬化による“内耳血流障害”との関連を説明、“食事のコントロール”と“運動の励行”を勧めているが、その結果八割以上の患者さんの難聴が進まなくなり、半数近くの耳鳴が消失している(補聴器先進国ドイツでは一年に一度の補聴器チェックが法律になっている。高カロリー食の多いドイツ人では、動脈硬化が進み、難聴が進むので、補聴器調整が必要となる)。そこで、当診療所では、半年に一度の聴覚のチェックを行い「音の歪み度」の検討などから、悪化傾向にあれば、厳重注意をすることにしている(一度駄目になった細胞は回復しないので)。

 耳鳴は、聴力検査の検査音にてその高さと大きさを測定できると、内耳のどの部位の細胞の障害によるか図示できる。即ち、どの辺の血流障害で起っているか、そして約半数の患者さんの耳鳴は、その障害部位がその日により異なることもわかってきている。

 しかし、「耳鳴」に関して、日本人の感じ方、対応の仕方が、他人種と異なるのかとも考えられる。小生のドイツ時代の同僚が、「耳鳴専門病院」を開設、常に2~300人が入院していると云う(沖縄や日本の学会で数回講演)。そこで行っていることは、まず診断、特に治療すべき疾患がない時は、心療内科の医師と共に「心理療法」を行い、2~3週間で殆どが満足して(?)退院する由、ヨーロッパでは大学病院でも行うところが出てきている!

 このことを「耳鳴を何とかしてほしい」と云う日本の患者さんに話すと、特に反応なく、心療内科医を紹介してほしいもなく、日本人にとって耳鳴とは生活を左右するものではなく、個人差と同様、人種差を感じている。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2017年1月16日 月曜日

【論壇】高齢難聴者の放置は認知症に導く

2016年12月19日 月曜日

 近年、高齢化社会が進行して、高齢者の認知症の増加が世間の話題となって来ている。この高齢者認知症と高齢者難聴の放置との関連は従来から云われて来ているが、これだけ多くなってくると、国民全体が認識せざるを得ないであろう。

 年と共に、聴こえが衰える人が多くなる。七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどの人が補聴器を必要とするようになる。早いか遅いか個人差はあるが、殆んどの人がなる。

 そして、その数は膨大である。高齢化率が二十%を越し、七十才以上が三千万人を越した我国では、高齢難聴者は千五百万人以上、当県でも十五万人以上と云うことになる。

 しかし、補聴器適合制度が確立されていない我国では、必要な人の五~十人に一人(当県では十~二十人に一人)しか補聴器を活用していない。年齢が進んで聴えないままでいると、コミュニケーション障害より、家族や社会より遊離・孤立し、精神的動物の人間は生きて行く自信・意欲を失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症など要介護状態になる。

 前述の推計値からすると、高齢難聴者の三~四割、即ち、四~六百万人、当県でも四~六万人と膨大な数で、個々の家庭で対応出来ない状況になりつつある現在、地域社会が対応することとなり、その費用は何処から?従って増税で対応することになろう!
私共の「補聴器適合運動」はすでに二十年を越すが、関心を持った九州のいくつかの「認知症施設」で聴力検査を行って、八十%以上が難聴と報告を受けている。

 私共難聴者の会、特定非営利活動(NPO)法人・沖縄県難聴福祉を考える会の附属診療所「補聴相談のひろば」の患者さんの三分の一は、家族が私共の「ホームページ」などを見て、難聴の始った親御さんを連れられて来られるが、無表情で、恐らくイヤイヤ連れて来られた難聴高齢者が補聴器で音・言葉が聴えてくると、その途端表情がガラリと明るく変わり、生きている人間の顔となり、人間性を取り戻す瞬間を何度も目にすると、この問題の重要性を強く認識することになろう。

 私共が提唱して来ているように、高齢者難聴の大部分は耳を養っている血管の動脈硬化、従って予防・進行停止・改善が可能で、「百歳を越しても補聴器不要に」出来る。これを充分理解し、高齢者難聴の早期発見・早期対応を、そして四~五十才台以上よりは難聴の予防を意識して、生活してほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2016年12月19日 月曜日

【論壇】高齢難聴者放置がもたらすもの

2016年1月18日 月曜日

 私共の難聴者の会「特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会」が提唱して来た“補聴器適合運動”の中で、高齢者難聴の放置が閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がり、現状から四~六百万人と推計して来たが、この推計数と先日報道された厚生労働省研究班の認知症の推計数とがほぼ一致しているのは当然とも言える。

 高齢化率が二十%を越し、三千万人以上の高齢者の約半数が難聴で(七十才以上で約半数が、九十才以上で殆んどが補聴器を必要な程に聴えが衰える)、全国で一千四~五百人、当県で十四~五万人の高齢難聴者の中で補聴器使用者は十~二十%、当県で五~十%、即ち大部分の高齢難聴者は聴えないままで、家族・社会より遊離・孤立し、精神的動物の人間は生きる意欲、生きがいを失い、閉じ込もり、寝たきり、認知症などに繋がって行く。昨年、九州の某認知症施設より、収容認知症の“八十%以上が難聴”で、認知症との関係があるのではと問い合せがあったが、“難聴の放置が原因”と考えられた。

 補聴器の使用が少ないのは、我国に適合補聴器供給制度が確立されていないためで、一人ひとり聴え方が異なり、メーカーにより音質が異なるので、購入前にこれを確かめる必要があり、また補聴器の使い方を特に高齢者はよくトレーニング(装用指導)しておかないと使えない。(ドイツの補聴器屋さんには訓練室が数室あり、使えるようになる迄、聴覚が不十分な人には読唇の指導まで行う。)
 
 近年、この高齢者難聴の大部分は、耳を養っている血管の動脈硬化によることがハッキリして来た。従って予防が可能(私共難聴者の会のキャッチフレーズは「百歳を越しても補聴器不要にしょう!」)、ある程度悪くなってもそこで止められる(補聴器使用では、聴えが良い方が補聴器をうまく使える)、更に最近“音は聴えても、言葉がわからない(高齢者難聴の特徴の一つ)”も、内耳の血流障害が改善されると、音を受け取る細胞の機能が改善、音の歪み(音の大きくなり方が変り、正常者が「一」大きくなったと感じるのが数倍に感じられる現象)(補充現象)が改善され、言葉がわかり易くなることもわかって来た。
 
 まず難聴にならないように、なってしまったら適切な時期に適切な補聴器を獲得し、亡くなる直前まで自立、人生をエンジョイ、人間としての人生を全うしてもらいたいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2016年1月18日 月曜日

【論壇】補聴器の装用

2015年12月1日 火曜日

 
 補聴器の「装用指導」とは、適合補聴器(自分に合った音質で、一人ひとり異なる聴こえ方に対応するよう調整、更に一人ひとり異なる生活の環境音に支障をきたさないように調整された補聴器)を、どう使ったら良いかを指導することで、当問題の取り組みが最も進んでいるドイツでは、耳鼻咽喉科医の指導の下で(補聴器は医師の指示により販売店で選別を行うが、決定したら、もう一度医師のチェックが必要で、医師の承諾のサインがないと、売買が出来ないことになっている)、「補聴器適合師」(中世時代から特殊技能を要する職人に与えられる称号“マイスター”制度により、学校教育後、補聴器専門店数社で修業を積んで認証され、これがないと販売店を持てない)が、補聴器購入者が補聴器を充分使いこなせるようになる迄指導することで、販売店内に数ヶ所の訓練室が設置され、補聴器を使用しても充分言葉が理解できない時には、「読唇術」まで教えていた(現在、このような重度の難聴者には、「人工内耳埋め込み手術」を行うことが多くなって来ている)。

 私共、難聴者の会「特定非営利活動(NPO)法人・沖縄県難聴福祉を考える会」の附属診療所「補聴相談のひろば」では、まず補聴器の選別を行い、適合補聴器が決定すると、この装用指導を行うが、高齢者が殆どなので、小さな補聴器(“目立ちたくない”と、小さな補聴器を選ぶ人が多い)を、指先の状況など一人ひとり、その取り組み方はさまざまで、かなりの時間を要するが、最近は私共難聴者の会の役員・会員が、体験者としていろいろの質問に答えたり、補聴器を使いこなすためのコツを教えたり、また磁気ループ(マイクの声を直接補聴器の中に入れられる。
 
 一般には、“集団補聴”と云って、講演会場などに設置して行うが、テレビや電話に設置して生活の質を上げることが出来る)など、補聴器関連の種々の器械の説明、使い方、設置方法など、必要な時には難聴者宅に赴いて指導・設置協力を行うようになり、大好評で、難聴者が慣れない補聴器に一生懸命取り組むようになってきて、非常に良い効果を持たらして来ている。

 私共、難聴者の会が発足して二十年を越し、試行錯誤を繰り返し、難聴者の要望に対応できつつあり、これを充分活用し、高齢者難聴の放置による「閉じこもり」、「寝たきり」、「認知症」などに陥らないようにしてほしいものである。

特定非営利活動(NPO)法人沖縄県難聴福祉を考える会
附属診療所「補聴相談のひろば」
相談医・野田 寛(琉球大学名誉教授)


  • カテゴリー: 論壇
  • 投稿日:2015年12月1日 火曜日
最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー